
【特別企画】コンテスト特典:Supercell主催海外体験ツアー~クリエイターたちの特別な旅①~
皆さん、こんにちは! 😊
GYAARCon活動サポーターの孫です。
第2回GYAAR Studioインディーゲームコンテストでは、プラチナ賞・入賞のチーム向けに、gamescomへの出展・視察とSupercellのオフィスツアーという特典が提供されました。この特典は第2回から新たに設けられ、2024年8月にSupercell社の主催で実施されました。参加者たちから大変好評を得ていたこともあり、今回は特別企画としてその体験談をたっぷり聞いてきました。
この受賞特典は、他のコンテストでは見かけないユニークなもので、ただの「特典」に留まらず、ゲーム開発における刺激や学びを得られた他、心身の疲労を吹き飛ばしてくれる体験まで詰まっています。

異国の地へ旅立った開発者たちの新たな発見と、多種多様なエピソード。開発者たちへの刺激になるような内容が詰め込まれたこの旅は、名付けて『Supercell主催海外体験ツアー(以下、Supercellツアー)』。
そのツアーに参加した受賞者のうちリビルドゲームスとケンキツ団所属の3人が、思い出深い時間を振り返りながら座談会形式で語ります。全4回でお送りします!
※Supercellツアーは2024年8月22〜28日実施され、本記事のインタビューは2024年12月に行われました。
■ 座談会の参加者

※写真左から順番に紹介
浅羽 晃憲
合同会社リビルドゲームスのゲームデザイナー。第2回GYAARCon入賞作『サマーロード』を現在開発中。
保坂 元八
合同会社リビルドゲームスのプログラマー。浅羽さんと同じく、『サマーロード』の開発に取り組む。
Yoon Seeun(ユン・セウン)
ケンキツ団所属の音楽デザイナー。第2回GYAARCon入賞作『KILLA(キラ)』をチームメンバーとともに開発中。
深澤 宏仁
今回の座談会のMC役を務める。バンダイナムコスタジオ所属で「GYAARCon」のコーディネーター。
上原 麻知子
深澤さんとともにMCを担当。Supercell側コーディネーター。
※浅羽さん、保坂さん、セウンさんについてもっと知りたい方は、ぜひつい最近公開された「受賞者ドキュメンタリー」もチェックしてみてください!
【第1回】gamescomで感じた日本と世界の違い
色々学びの多かった今回のツアーですが、座談会で参加者たちが口にした中で特に印象的だったのは、「驚き」という言葉が何度も登場していたということです。彼らがどれだけ新しい発見に刺激を受けていたかがよく伝わってきました。数え切れないほどの「驚き」に満ちた濃密な旅だったのでしょう。
まずは、世界最大規模のゲームイベント「gamescom」に参加した話から聞いてみました!

■ スケールの違いに圧倒される

ーー深澤:gamescomで感じた日本と世界の違いについてお話を伺いたいと思います。gamescomと東京ゲームショウ、両方を経験された皆さんに、それぞれどのような違いを感じたか聞かせてください。
🟦浅羽:東京ゲームショウと同じように、会場には本当に多くの人が集まっていて、ユーザーの熱気も強く感じられました。日本との大きな違いとして一つ挙げたいのが、海外の展示会では海外のタイトルがメインとなっていて、日本のゲームがあまり目立っていなかった点です。Steamのランキングなどで日本のシェアについて劣勢気味だと認識はしていたんですが、想像していたよりも日本のゲームブースが目立っていなかったのは、少し驚きでした。

🟧保坂:会場は本当に大きかったですね。想像以上の広さに驚きました。東京ゲームショウもかなり広いと思いますが、その3~4倍くらいの広さがあって、どこもかしこも人だらけで、ゲームの人気っぷりにびっくりしました。
ーー深澤:今回、2日間だけでしたが、会場全体はまわれましたか?
🟦浅羽:全部まわるにはまわったんですが、それぞれのブースでじっくり遊ぶ余裕まではなかったです。本当にざっと見てまわるだけでも時間がかかりますが、ブースごとに様々な特色や驚きがあって飽きることはなかったです。
■ 熱気あふれる会場の雰囲気
🟦浅羽:日本と違ってgamescomではPCやモバイルゲームの方が目立っていた印象です。家庭用ゲーム機が主流の日本ではあまり見かけないタイトルが、大きく派手にディスプレイされているのが新鮮でした。
ーー深澤:私も現地で同じ印象を持ちました。文化的な違いもありそうですね。
🟦浅羽:そうですね。日本だけでなく、海外も視野に入れてゲームを展開するのであれば、様々なプラットフォームを検討すべきかもしれないと感じました。
ーー深澤:セウンさんから見て、韓国ゲームの存在感についてはどうでしたか?
🟪セウン:はい、韓国からは大企業が出展していたのを見かけました。スクリーンが大きくて迫力のある映像が流れていましたね。
ーー深澤:東京ゲームショウ(TGS)に出展している韓国企業と、gamescomに出展している韓国企業では、規模に違いがありましたか?
🟪セウン:おそらく来場者数の違いも影響していると思いますが、gamescomの方が韓国企業ももっと力を入れていたと思います。TGSでは日本のゲームがもっと目立っていた印象があります。ただ、出展されているゲーム自体は同じなので、全体的な雰囲気は似ていましたね。
ーー深澤:会場ではeスポーツも観戦しましたよね。

🟧保坂:実際で現地で見てみると、eスポーツが本当にスポーツとして文化の一部になっているのを強く感じました。ファンが集まり、応援する場が整っています。私も配信でeスポーツを観ることはありますが、実際に目の当たりにすると、その華やかさに驚きました。世界大会のために遠くからやってきたファンのグループが、会場で席を確保してダンスを披露したり、観客の歓声で会場が揺れるような熱気があるのも印象的でしたね。
■ 海外と日本のコンテンツが見せる違い
ーー深澤:インディーゲームエリアの展示で特に印象に残ったことはありましたか?
🟦浅羽:海外のインディーゲームの勢いを間近で感じました。ブースの展示が作品の世界観にしっかり合った演出をしていました。例えば、ゲーム内に登場するロボットを立体物として作って展示していたブースがあったんですが、ここまでやるんだと驚きました。
🟧保坂:一方、東京ゲームショウでもインディーゲームを集めたエリアがありますが、海外の出展者が多く、日本のタイトルは少ない印象があります。海外の出展作は、より商業性を意識したクオリティで目を引くタイトルが多かったですね。
🟦浅羽:ただ、こうした海外イベントに出展するには、私たちインディーゲーム開発者にとってはハードルが高いです。宿泊費や飛行機代、出展料など、多くのコストがかかりますし、現地での運営も負担が大きいです。それでも、地元以外からも多くの出展者が集まり、エネルギーにあふれている海外のクリエイター達を目の当たりにして、自分たちももっと頑張らなければと感じました。
🟧保坂:日本と海外の違いとして、日本では個人や副業で開発しているチームが多いのに対し、海外では法人で、ゲーム制作を専業としているケースが多いように見えます。そのため、資金やリソースの調整がしやすく、規模でも優位に立っています。この違いが、出展数やクオリティの差に現れているのだと思います。
ーー深澤:確かに、その違いは大きいですね。
🟦浅羽:ただ、かつてはゲーム業界といえば日本が中心だった時代がありました。その流れが変わってきている今、私たちも新しいパワーバランスの中でどう戦うかを考えなければなりません。それでも、日本のゲームには独自の文化として世界に誇れる強みがあり、そんな日本のゲームに憧れてきました自分たちもさらに努力を続けていきたいですね。
ーー深澤:ケンキツ団の皆さんは、いろいろな場所で積極的に出展されていますよね。今回のgamescomではどんなことが印象に残りましたか?
🟪セウン:私たちのチームはブースを飾るのが好きなので、今回も海外のブースを見てたくさん学ぶことがありました。特に、ゲームの世界観に合わせた展示やデザインの工夫が印象的で、「こんな見せ方もあるんだ」と新しい発見がありました。それに、こんなに多くのインディーゲームが海外にあることを知って、本当に驚きました。直接触れ合う中で新しい視点も得られて、とても刺激的な体験でした。
ーー深澤:ゲーム以外のブースは見られましたか?
🟧保坂:私は物販コーナーが印象的でした。自分たちで作った商品を売っている感じでしたね。日本のコミケに近い印象でした。それが広いフロアに2つ分くらいあって、ここだけでも1日かけて周れるくらいの規模感でしたね。
🟦浅羽:ゲームブースは海外タイトルがメインだったんですが、物販ブースに関しては日本のアニメやゲームなどのコンテンツが主力になっていましたね。ゲームと一般のキャラクターコンテンツとの間に少しずれがあるように感じましたね。日本のコンテンツが全く通用していないわけではないのかなと思います。
🟧保坂:物販エリアでは、8割から9割が日本のコンテンツだった印象です。
ーー深澤:海外での日本のコンテンツの認知度について、出発前にはどのようなイメージを持っていましたか?ある程度届いているという認識はありましたか?
🟧保坂:個人的には、もう少しアメコミや日本以外のIP(知的財産)が出ているかと思っていましたが、ここまで日本のIPが多いとは驚きました。
■ 展示を通じて感じた手応え
ーー深澤:皆さんの作品が会場で並んでいるのを見たとき、どのような感想を持ちましたか?また、会場での反応についても教えてください。


🟪セウン:今回、私たちのビルドは少し長めだったので、最後までプレイしていただくのは難しかったのですが、面白いと思っていただけたのか、QRコードを撮っていただいたときは嬉しかったですね。でも、直接声をかけるのは少し緊張してしまい、後ろからそっと見守ることが多かったです。
ーー深澤:日本や韓国、アジア以外の地域で出展するのは今回が初めてだったんですか?
🟪セウン:はい、完全に初めてでした。
ーー深澤:海外の方に受け入れられるかどうか、最初はどのように感じていましたか?
🟪セウン:英訳のクオリティが低かったので、最初は正直アジア向けにしか通用しないかもしれないと思っていました。でも、人が感じる面白さは共通するものがあると気づきました。期間中のウィッシュリスト登録者数の伸びを見ても、それが伝わったんだなと実感しました。
ーー上原:確か、現地の生放送でも「KILLA」が取り上げられていましたよね?
🟪セウン:はい。GYAARCon運営チームの方が代理で出演してくれたのですが、視聴者のコメントを読むのがとても面白かったです。
ーー深澤:今回の出展を通じて、ヨーロッパ圏の方々にも『KILLA』が刺さる手応えを感じたんですね?
🟪セウン:はい、それが一番嬉しかったですね。
ーー深澤:こういったストーリー性のあるゲームって、文化的背景が同じ地域の人にしか通じないと思われがちですが、意外と伝わる部分が多いことが新しい発見でした。今回の出展を通じて、私たちも貴重な知見を得られました。

🟦浅羽:そうですね。実際、私たちも会場でプレイヤーの反応を観察しました。同世代のプレイヤーもいれば、かなり若いプレイヤーもいて、どちらも真剣にプレイしてくれていました。画面を見ていると、ゲーム内のキャラの役割分担をしっかり理解し、装備を付け替えて戦略的にやっているのが分かりました。自分たちがやりたかったことが、ちゃんと伝わったんだなと。ただ、一方でチュートリアル部分に関しては、日本と比べて理解に苦しむプレイヤーが多かったように感じました。これは自動翻訳などによるローカライズの質も原因だと思いますが、やはり説明を文字ベースで行うアプローチでは情報が抜け落ちやすいという点が課題なのかなと思いました。今後は、なるべく文字を使わずに説明できる方法を取り入れたいと考えています。
🟧保坂:あと、日本のイベントではあまり見かけないプレイヤーの行動もありました。例えば、何をすればいいのか分からなくなったときに「F1」を押してヘルプを表示させるという行動です。PCゲームが主要な文化として根付いている地域ならではの行動なのかなと感じました。
🟦浅羽:私たちも『KILLA』と同様に直接的な反応を目の前で肌で感じる機会がありました。ブースに来てくれた外国の方々の中には、私たちのXをフォローしてくださる方もいました。普段は日本語でしかポストしていないのですが、それでも画像や雰囲気を見て興味を持っていただけるのは、とても嬉しいですね。遊んでくれた方々の反応を直に感じられる場面が多かったのが今回の収穫でした。
■ 現地の人や他国出展者との交流
ーー深澤:現地の方との交流はどうでしたか?スムーズにできましたか?
🟦浅羽:直接話す場面はあまり多くなかったですね。会話が詰まったときは、「ここをタッチ」みたいな単語をつなげてなんとかやり取りをしていました。「このゲームどう思いますか?」といった質問をするようなコミュニケーションは、少し難しかったかなと思います。
ーー深澤:言語の壁がある中でのコミュニケーションは大変ですよね。セウンさんやケンキツ団の皆さんはどのように対応していましたか?
🟪セウン:現場では様子を見ていることが多かったですね。やはり英語には自信がなくて、十分に話せないこともあり、少し残念に感じました。
ーー深澤:東京ゲームショウでは隣のブースの他国の方々と仲良くなったというお話を聞きましたよ!
🟪セウン:普段はあまり話す機会がないのですが、東京ゲームショウでは右側にドイツのゲーム、左側にアメリカのゲームが出展されていて、どちらのブースの方々もとても外向的で、気軽に話しかけてくれる方々でした。その中でアメリカのガスさんと友達になり、いろいろ話をするうちに、お互いの言語のチェックをしようという提案をいただきました。それから、お互いに言語の検収をするようになりました。開発の話を身振り手振りで伝えながら交流し、自然と仲良くなることができました。

ーー深澤:まさにグローバルなイベントに出展するメリットですよね。ワールドワイドな人々が集まるという点で、日本人だけのイベントとは全く違う魅力があるかもしれませんね。
🟦浅羽:今回のツアーを通して、日本のインディゲーム開発者がもっと英語で話せたら、ビジネスの可能性がさらに広がるなと強く感じました。
🟧保坂:自分は、少しずつアプリを使って英語の勉強をしているんですが、gamescomでは多少役に立ったかなと思います。リスニングが少しできたり、単語が出てきたりといった程度ですが、それでもプレイの感想を伝えるにはまだまだ足りないと感じました。もっと頑張りたいですね。
(第2回へ続く…)
※『第2回』では、「Supercellのオフィスツアー&試遊会体験」についてさらにお話しいただきました!