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キタルAI時代~累計30万部のベストセラーから読み解く~

§1.衝撃

 過去2回のnoteで、僕はワクワクする自身の将来像、それに対する我が国の現状課題(地方創生を通して)を著した。
今回のテーマは、『AI時代、未来で活躍するために、一体なにが必要か』である。

 今日メディアで、SNSで、街で、AIの二文字は頻繁に耳にする。囲碁の世界チャンピオンをAIが打ち破ったことは、世界に衝撃を与えた。

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世界にはウサイン・ボルトという男がいる。
視力10.0を誇るマサイ族という民族がいる。
彼らが車や望遠鏡に敵わないことは自明だ。
”ヒトはモノに勝てない。”
これは産業革命以降においては全く珍しいことではない。
ただし、ホモ・サピエンス(賢い人間)は”知能”で地球の王者となった。その得意分野である、頭脳を使い、クリエイティビティで複雑なゲームにおいてAIに負けた。
そのことが衝撃なのである。

 さて、AIについて書こうとしたとき、参考文献が必要だった。漠然としたnoteで終わらせたくないからだ。今回選んだのは、『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』という本。

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一昨年に発行され、30万部売れたベストセラー。

今noteでは、“AIとは?”といった定義付けや、歴史の部分はあえて割愛させていただく。
その上で、1冊を要約しながらオリエンタルラジオ中田さんの「YouTube大学」方式で未来を語る。

§2.AIに夢を見るな!

 まず著者の新井紀子先生について少し紹介する。筆者は文系出身の数学者で、一橋大学、イリノイ大学院数学研究科を卒業する異色のキャリアを持っている。過去に人工知能が本気で東京大学合格を目指す「東ロボくんプロジェクト」のリーダーをされており、国立情報学研究所の教授である。

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 本書では主に「東ロボくんプロジェクト」の過程と結果を通し、AIの原理的な限界を解説しながら、なにが脅威となるのか、現役のAIの専門家として、的確に説明してくれる。

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 皆さん、AI新時代をどう捉えているだろうか?脅威?それとも期待?
ターミネーターという映画は有名だ。未来では人間VS.ロボットの戦争が行われており、ロボット陣営は人間陣営のリーダーであるジョン・コナーを生んだ母親を抹殺するために、AIを搭載したロボットを送り込むというストーリーである。AI脅威論としてメディア等で例に出されることの多い作品だ。

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一方でAIが発達することで、働かなくていい社会がいよいよ来るかもしれない。そういって期待を膨らませる方、楽観派もいるはずだ。

今回の参考文献を著された新井紀子先生は両者に待ったをかける。

 本書では前後半の2パートに分かれている。
前半は僕たち読者と著者の間にある、AIに対する理解の差を埋める目的で書かれている。メディアに刷り込まれたイメージではなく、正しい認識を持ってAIの未来を語らねばならない。そういった目線合わせに、なんと本書の6割が割かれている。

前半の内容としてはザックリいうと、
「みんな、AIに夢見すぎ!」ってこと。

”シンギュラリティは来ないし、AIが人間の仕事をすべて奪ってしまうような未来は来ませんが、人間の仕事の多くがAIに代替される社会はすぐそこに迫っています。”(引用)

シンギュラリティとは、技術的特異点と訳され、2045年までにAIが人間の能力を超えて、人間社会が爆発的に変化することを表す言葉。イメージしやすいのが、ターミネーターやマトリックスの世界だ。

そもそも、新井先生の
「東ロボくんプロジェクト」の目的は

東ロボくんを東京大学に合格させることではない

プロジェクト開始から合格できないことはわかっていたのである。本当の研究目的は、AIがなにが出来て、なにが出来ないのか、の解明だ。本書の前半部分で、AIがなぜ人間を超えられないのか、このプロジェクトの経験に基づいているから説得力があるのだ。

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 プロジェクトの結果、東ロボくんは予想通り東京大学合格は果たせなかった。偏差値57、つまりMARCH合格レベルが限界だったのである。これは量や時間の問題ではないと筆者は語る。
科目別にみると、本プロジェクトの目的であるAIにできること、できないことが見えてくる。数学、暗記の世界史は東京大学合格レベルに達しているのだ。一方で国語と英語は偏差値50前後から伸ばせなかったのである。

そこでAIの限界を筆者は語る。

"AIは入力に応じて「計算」をし、答を出力しているに過ぎません。(中略)「あたかも意味を理解しているようなふり」をしているのです。”(引用)

 つまりAIは単なる計算機で、数式に置き換えられないことは理解できないのだ。なので英文をいくら覚えさせても、人間と同じ理解レベルに追いつくことは出来ないのである。よってシンギュラリティはこないと著者は結論付ける。

 ただし、AIがMARCH合格レベルに達していることは事実で、これはホワイトカラーを目指す学生の上位20%に位置する学力レベルである。産業革命で100年かけたオートメーション化が、今回は20年に圧縮されて起こる。AIに代替されない力とは?これが後半部分のコアになる。

§3.AI vs. 読解力

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 上図を見ると、仕事を奪われない仕事はコミュニケーション能力が求められる仕事か、柔軟な判断が求められる肉体労働とわかる。
そこで筆者はこう問題提起する。

"現代社会に生きる私たちの多くは、AIには肩代わりできない種類の仕事を不足なくうまくやっていけるだけの読解力や常識、あるいは柔軟性や発想力を十分に備えているでしょうか。”(引用)

 上記のなくならない仕事に、職に溢れた全員就くことは出来ない。AI時代に新しく生まれる仕事に大多数は就くしかないのだ。
その際に、新しい仕事、新しい環境において大事になるのは、その仕事を理解する読解力、理解力なのである。

 これまで文科省をはじめとする教育関係機関は、中高生が文章を読めるのは当然だと信じていた。そこで筆者はその前提を疑い、基礎的読解力を調査するためにリーディングスキルテスト(RST)を自力で開発する。世界でも前例のない、読解力にフォーカスを合わせた2.5万人規模の大規模な調査である。
問題の出典は国語の教科書からで、誤答は正しく教科書を読めていないエビデンスとなる。

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テストは6つの分野で構成されていて、その中で以下の3分野が、AIが人間に歯が立たないとされている分野である。

「推論」=文の構造を理解したうえで、生活体験や常識、様々な知識を総動員して文章の意味を理解する力
「イメージ同定」=文章と図形やグラフを比べて、内容が一致しているかどうかを認識する能力
「具体例同定」=定義を読んでそれと合致する具体例を認識する能力

本書で紹介されているRSTの問題を出題する。
「イメージ同定」の分野である。

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上記の問題では中学生の12%、高校生の28%しか正解出来ていない。当問題以外にも6分野から複数出題されたが、全体として正答率60%にも満たなかった。

つまり、3人に1人の生徒は
教科書が正しく読めていないのだ。

人間が本来AIに勝てるはずの分野で、読解力の低下から、この惨状だ。

基礎読解力と旧帝国大学の合格率は、高い相関がみられた。つまり読解力は人生を左右する要素だと筆者は述べる。
では読解力を高めるにはどんな方法があるのか?

筆者は科学的には、ないという。

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様々な検証を行った結果、子どものころよく読書していた、ゲームの利用時間、科目の好き嫌い等々、どれも全く、全く相関がみられなかったそうだ。
ただし経験則として、読解力は何歳であっても向上するというという仮説を筆者は持っていて、今後解明に向けて、研究をさらに深めると書いてある。

§4.僕の仮説

 今日において、企業はコミュニケーション能力をはじめとするAIに代替されない人材が欲しい。

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ただAIに代替されない人類の強みである読解力も教育現場において出来ておらず、教科書すら3人に1人が読めていない。著者は危機感を覚えており、現在、教育現場の最前線にいる教員や学校も危機感を共有し、RSTに協力している。

AIに代替されない力はもちろん他にも多数存在することは承知の上で、本noteにおいては“読解力”にフォーカスして僕なりに仮説を立てた。

僕の提案するソリューションは
読解力を高めるためにアウトプットすることだ。

 手前味噌になるが僕は現代文だけは得意で、模試においても常に好成績だった。中学受験から大学受験の約10年間1度も勉強した記憶がない。
 時は経ち、僕は大学受験を終え、塾講師をはじめた。その際に、国語(主に現代文)が苦手な生徒を多く受け持つことになったのだ。
最初は困った。親御さんに国語の勉強法を聞かれても知らないし、ましてやどのドリルがいいかなど全くわからないからだ。
ただ最終的に、僕は担当生徒全員の国語の点数を上げることに成功した。

ではなぜ出来たか?

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夏だ、夏休みの読書感想文を思い出したのだ。
感想文を毎年、両親に添削されていたのだ。読んで、書いて、添削されて、もう一度読む、そして感想文を完成させる。
誰一人真面目に取り組んでいない課題だ。僕の感想文は6年間、賞を逃すことはなかった。

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それを思い出してから、生徒にも毎週一冊書いてもらった。国語の宿題はそれだけ。最初は全く効果が表れなかったが、3ヶ月後全員の成績がメキメキ伸び始めた。

 無論、このソリューションに科学的根拠はなく、経験則に過ぎない。ただ今回の参考文献に書かれてあった30代から読解力を伸した人はRTSの問題作成者だった。つまり、読解力はアウトプットと非常に密接に繋がっているのではないか?これが僕の仮説である。
 
 新井先生は今後、さらに読解力に対する研究を進めるようだ。僕自身もAI領域、読解力ともに逐一新しい研究結果に目を光らせ、仮説が本当に正しいか、それを確かなものにするつもりだ。

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 最後に。次のフィールドは人材業界だ。近年、HR Tech(AI×人材)によって、人事分野に大きな変化が起きている。
“あなたの目の前にあるそのタスク、人間に任せますか?それともAIに任せますか?”
人材業界に入って、僕のアウトプットで人々のAIへの理解を深める。

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そしてアウトプットを日々の習慣とし、読解力を向上させ、僕はAIに代替されない人材になる。

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