3.11の頃の自分と、熊本地震が起こった今の自分を比べて

2011年3月11日、地震が来た当時僕はアルバイト中だった。バイト先には友達も多くいたので怖いとは感じなかったし、その時期はなぜか忙しく地震が起きた数日間ろくにテレビもつけなかったので、何が起こっているのかしっかりと理解していなかった。

一週間も経つと何が起きているかじんわりと分かってきて、ボランティア活動や募金活動が行われているのを知り、自分も何かしたほうがいいのでは? という感情も薄っすらとは湧いていたが、その時に"何か"をする余裕はなかった。

震災で被害を受けた方々と比べたような言い回しになってしまうが、そんなつもりはないことをあらかじめ言っておきたい。どちらが悲惨な状況かなんて誰にも決めれらないことだ。

震災が起きた3月、僕の親も消えたのだ

親のスネはかじれるだけかじった方が良い。親が急にいなくなった話 前編

母親がいなくなった理由は分からないが、きっと男ができたのだと思う。震災には一切関係ない、ただの育児放棄だ。育児放棄と言っても僕は20歳になっていたので、そこまでおかしなことではなかったのかもしれない。ただ、ブログにはコミカルに書いたが、なかなかに悲惨な状況だったと今では思う。

来月には家がなくなるため急いで物件を探した。公共料金や役所での手続きも初めてのことばかりで頭がパンパンになった。普通このようなことは親に相談するのだろうが、いないので相談する相手すらいない。インターネットがある時代に生まれてよかったと思う。

引っ越しは友人たちが手伝ってくれたので費用はそこまでかからなかった。ビール数本で引っ越しを手伝ってくれた友人たちには心から感謝している。

引っ越し費用がかからなくても敷金礼金仲介手数料はかかる。音楽の勉強をするため、個人レッスンに通っていた作曲家の先生と夏にニューヨークへ行く予定があった。そのために貯めていたお金があったから誰からも借金しなくて済んだ。ただ、ニューヨークへ行くことはできなくなったし、貯金はほぼゼロになった。

自分のことで頭がいっぱいだった

来月の生活費さえない状態だったので、ひたすらバイトに励んだ。八百屋でバイトをしていたので野菜や米は安く買えた。肉は数ヶ月食べなかったと思う。

親がいなくなったことで音楽を辞めるのは悔しかったので個人レッスンにも通った。もちろんお金はかかるので、音楽の勉強以外はバイトばかりの生活だ。ニュースなどろくに見ない、自分のことで精一杯だ。

音楽もバイトも辞めて就職しようかとも考えたが、就活をするには時間とお金が必要だった。バイトを続けて生活を送る方が現実的だったのだ。

震災のことは考えられなかった、募金するかどうか迷う以前の状態だった。銀行からお金が落とせませんと通知が来ているような状況で、誰かの気持ちを考えている余裕はなかった。

関東で地震が続いても怖さを感じる余裕がなかった。時間とお金がないと、周りが見えなくなり鈍感になっていく。当時を振り返るとそう感じる。

熊本地震が起きて1か月が経った

僕はすぐにクラウドファンディングで支援金を送ることができた。とっても少ない額だが、5年前にはそれすらできなかった。

今月に入ってからは熊本地震で汚れてしまった白ワインをネット上で購入した。

今はアルバイト・フリーランス・ブログでの収入で生活をしている。3.11の頃とは明らかに心に余裕がある。時間とお金があるからだ。

熊本で地震が起きたこと、CAMPFIREで熊本に支援金を送れること、傷物のワインを買えることに気づけたのは、今の僕に時間とお金があるからなのだ。躊躇なくお金を出すことができたのは、心に余裕が生まれたからなのだ。

時間とお金はなくてはならない

最近強くそう思う。時間とお金があればあるほど、状況が見え人の気持ちを考えることができる。

金こそすべてとは極端な言い方だが、間違いとは言い切れない。お金がなければ心に余裕など生まれないのだ。時間とお金が、人の心には必要なのだ。

熊本に支援金を送ることは義務じゃない、それぞれができることをすればいい。それぞれに事情があり、熊本に気持ちさえ送ることができない人もいるだろう。3.11の時の僕がそうだったから。

できれば人に優しい人間でありたい。偽善かどうか自分では分からないが、そう思うのだ。時間とお金が必要だ。

5年前よりも怖くなったことも事実

家族も時間もお金も居場所もなかった当時に比べると、今は多くの"大切なもの"を抱えている。人間関係や仕事など、大切にしたいものが増えていく。失うものが何もない人間から、守るべきものがある人間になったのだ。ある意味、弱くなったとも言える。

ここ数日、関東でも地震が起きている。5年前にヘラヘラとしていた自分はどこにもいない。怖くて怖くて仕方がない。

今を、そしてこれからを守るために、時間とお金が必要だ。

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