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なぜ今ストーリーテリングが最も必要とされているのか?

私たちの価値観や行動に大きな影響を与える方法

インドネシアのスラウェシ島にあるKarampuang caveの洞窟絵画

Gurus Film Productionの根幹の技術であるストーリーテリングについて解説します。

この記事では以下の質問に答えます。

  • ストーリーテリングとはなんなのか?

  • ストーリーテリングはどう役立つのか?

  • 実際にストーリーテリングはどう使用されているのか?

日々生み出される新しい広告やコンテンツが溢れる中、本当に伝えたいメッセージを伝えるための方法としてストーリーテリングが存在します。

まずはストーリーテリングを実感していただくために、効果的にストーリーテリングを活用したイギリスの老舗デパートJohn Lewisのコマーシャルをご確認ください。


私たちの脳は物語を紡ぐ

私たちは世界をストーリーとして理解しています。身の回りに起きる脈絡のない様々な出来事をストーリーで串刺しにして因果関係を見つけ出しています。

ここに1944年の有名な実験があります。(1)

この実験が示唆することは、ランダムに動く三つの図形を見た多くの人が、図形の動きを人間の行動として解釈したということです。

  • 小さい三角が大きい三角にいじめられている。

  • 小さい丸は大きい三角に見つからないように隠れている。

  • 小さい丸は小さい三角を助けようと様子を見ている。

5万年前、インドネシアの洞窟で誰かが誰かにストーリーを語っていた時から今まで、私たちの脳は、常に意味を求め、無意識に物語を作り上げています。では、私たちが作り出すストーリーの全てが意味のあるストーリーなのでしょうか?

平凡なストーリーテリングと、卓越したストーリーテリング

2024年現在、好むと好まざるとにかかわらず私たちは1日に約6000から1万の広告に晒されています。その中で、自分のメッセージを伝え、他者に届かせることは困難になっています。

私たちは、広告に対する信頼を失っており、邪魔なものとして認識し、広告に奪われる時間を守ろうと防御体制に入ります。Youtubeの動画広告をスキップするために待つ5秒にイライラした経験はあるでしょうか?たとえ広告が目に留まったとしても、その内容を私たちは信じるでしょうか?現代に生きる私たちには平凡なストーリーテリングに付き合う余裕はありません。

このような状況で私たちに求められるのは、単なる宣伝ではなく、人々の心を動かし、感情を揺さぶる卓越したストーリーを語ることです。

卓越したストーリーテリングは理性を超える

上手に語られた物語は、私たちの脳が日常的に行う理性的な決断とは異なる方法で処理されます。

400万円の価格がついた壊れたMacintosh

この初期のMacはオークションで400万円の値段で売却されています。大量の計算もできず、高画質な動画も見れず、メールもスムーズに送れないので、Mac自体に価値があるわけではありません。私たちが理性的であるなら量販店へ行ってより高機能で安いコンピューターを買う判断をするはずです。このMacがもたらしている価値は、機能ではありません。スティーブ・ジョブズとアップルの開発者たちがこの製品で世界を変えたという物語にありました。

本体に書かれたスティーブ・ジョブズのサイン

ストーリーは意味を作り、意味は価値を生み出します。生み出された意味は、私たちの知覚にも影響を与えます。

MITの教授ダン・アリエリーは、新しく成分を調合した「MITビール」と、市販されている「一般的なビール」を飲み比べ、どちらが美味しいか学生たちに決めてもらう実験を行いました。その調合法が、ビールにバルサミコ酢を混ぜて味を悪くするというものだったので、事前にその情報を聞いた前者のグループではMITビールを好む人が減りました。興味深いのは、試飲後に調合法を聞いたグループではMITビールを好む人が前者より増えたということでした。つまり、事前に得た意味によって人は知覚体験そのものを変化させたということです。(2)

味覚体験を決めるのは、ビールの本質的なおいしさだけではなく、事前にどのような情報を持って体験するのかによっても影響を受けるということです。合理的であるはずの私たちは、実際には感情や無意識の影響を大きく受けて意思決定をしています。

ストーリーの科学

ストーリーには人を没入させる力があります。これは「ナラティブトランスポーテーション」と呼ばれる現象です。ストーリーに没頭すると、私たちの脳は現実世界から物語の世界に移動したかのような状態になります。

グリーンとブロック(2000)の研究によると、ストーリーに没頭するほど、そのストーリーに一致した信念を持つようになることがわかりました。つまり、ストーリーは私たちの価値観や行動に大きな影響を与えます。(3)

さらに、ストーリーの主人公に共感するほど、その影響力が増すという報告があります。ハンビーとバンラエル(2021)の研究では、内発的な動機を持つキャラクターに共感するほど、観客の行動意欲が高まることが示されています。(4)

ビジネスにおけるストーリーテリング

では、このストーリーの力をインタビュー動画制作でどう活用できるでしょうか。

  1. ブランドストーリーの構築
    あなたの会社の誕生秘話や、困難を乗り越えた体験談を共有することができます。会社の存在意義、価値観、そして顧客との約束を物語として構成します。顧客はあなたの情熱や価値観に共感し、ブランドへの愛着が生まれます。

  2. 製品・サービスの魅力を伝える
    単なる機能説明ではなく、その製品やサービスがどのように人々の人生を変えたかを物語として伝えることができます。課題に直面していた顧客が、どのようにあなたの製品やサービスを見つけ、導入し、問題を解決したかを語ってもらいます。具体的な成果や、生活や仕事がどう変わったかを描くことで、潜在顧客の共感を得て、製品やサービスへの信頼を高めることができます。

  3. 地域貢献のストーリー
    会社や従業員が取り組んでいる地域貢献活動にスポットを当てます。地域の課題に気づいたきっかけ、活動を始めた経緯、直面した困難、そして活動の成果や地域の変化を語ります。会社の社会的責任や価値観を示すと同時に、従業員の人間味も伝えることができ、ブランドイメージの向上につながります。

  4. イノベーションのストーリー
    新しい製品や技術の開発過程を、開発チームへのインタビューを通じて紹介します。アイデアの誕生から、試行錯誤の過程、ブレークスルーの瞬間、そして完成に至るまでの過程を描きます。開発者の情熱や挑戦、チームワークなどを強調することで、製品の背景にある価値や企業文化を伝えることができます。単なる製品紹介以上の印象深いストーリーを作り出し、顧客の興味と共感を引き出すことができます。

ストーリーテリングの実践

ストーリーテリングのプランを練り制作は下請けに投げるのではなく、実践にこそGurus Film Productionの専門性があります。

どんなストーリーテリングがクライアントの課題を解決するのか?どんな種類のストーリーを用意するのか?視聴者の心を掴む要素をどう判断するのか?目的とするストーリーを語るために使用すべきカメラはどれか?レンズの焦点距離はどれか?カメラの動きはどうするのか?カメラの高さはどうするのか?照明の柔らかさはどうするのか?人物と背景の明るさの比率はどうするのか?色味はどうするのか?アスペクト比率はどうするのか?構図はどうするのか?人物を正面から撮影するのか?それとも真横から撮影するのか?動画の最初にどんな情報を伝えるべきか?最後にどう終わるべきか?音楽はどうするべきか?編集のテンポはどう変化させるのか?・・・

こういった意思決定を私たちはクライアントに代わって行います。クライアントへのヒアリングから課題を共有し、それを解決できる動画を提案します。

ストーリーテリングが効果的な状況

どんな状況にもストーリーテリングが効果的なのでしょうか?

はいであり、いいえでもあります。

卓越したストーリーを語るチャンスがあるのなら、それを逃すべきではないと考えています。製品・サービスの魅力を効果的に視聴者に伝えることができるチャンスであり、高いエンゲージメントを生み出し、あなたの会社の製品サービスに熱心な顧客を生み出すことができます。

一方で、クライアントはいつでもストーリーテリングから生み出される効果を重要視しているわけではありません。一刻も早く解決すべき課題があり、それを解決できるのはストーリーテリングを利用した映像でないこともあります。

ストーリーテリングの技術はグラデーションとして捉えることもできます。味気ない、一般的な情報を伝えるだけの動画から、ストーリーテリングの技術の一部を切り出して応用させます。それだけで今まで制作していた動画よりも高いパフォーマンスを出すことができます。

まとめ

ストーリーテリングは、広告やコンテンツが溢れる中で、視聴者の防御反応を緩和させ、心を動かす強力な手法です。ストーリーを通じて意味を生み出し、価値を高めることで、感情的な共感を引き出します。Gurus Film Productionでは、映像制作において、この技術を駆使して、クライアントのメッセージを効果的に伝える動画を提案・制作します。

引用
(1) Heider, F., & Simmel, M. (1944). An experimental study of apparent behavior. The American Journal of Psychology, 57, 243–259.
(2) Lee, L., Frederick, S., & Ariely, D. (2006). Try it, you'll like it: The influence of expectation, consumption, and revelation on preferences for beer. Psychological Science, 17(12), 1054-1058.
(3) Green, M. C., & Brock, T. C. (2000). The role of transportation in the persuasiveness of public narratives. Journal of Personality and Social Psychology, 79(5), 701-721.
(4) Hamby, A., & van Laer, T. (2021). Not whodunit but whydunit: Story characters' motivations influence audience interest in services. Journal of Service Research, 25(1), 3-20.


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