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グッドバイ

夏が舞い戻ったような暑さに、今年の夏を思う。
体調が悪い夏だった。恋を失った夏だった。「33歳で失恋は痛いな」と知らない人から言われた言葉に、わたしがもうそんな年齢であることに驚いた。

そうか、恋に悩める学生でも周りと比べて焦る年頃のアラサーでもないわたしは、人と付き合うということをあまり深く考えていなかった。
この歳の恋愛は「普通」だったら結婚が絡んできたり将来を考えるものなのだ。それは遅いくらいで。

泣きながら眠るいつものベッドも、暗闇に落ちそうになって引っ張り上げてもらうあの曲も、わたしが生きるためには必要だったけれど本当に必要だったのは「君」だった。「君」のはずだった。

美しくない恋を並べて、半信半疑の愛を並べて、なんとか足並みが揃えばいいと思っていた。
君と過ごした時間の短さ、君と過ごす中で感じ続けた不安の長さは健康的じゃなかったよ。
7月中旬からは風邪を引き、あっという間に恋を失い、地獄の8月が始まった。
次の日の飲み会に行ける気なんてしなかったけれど振り返ればその日があって救われた。おじさんからもらった桃の味を忘れたくない。

8月中旬、君がわたしの名前を呼んでくれたことに気が付いた。それから二週間以上経ったよ。
わたしたちはどうなっていくんだろう。結局どうにもならず、わたしはまた不健康になっていくのかな。今は2回目の風邪を引いて咳が止まらないままでなんだか情けなくて心細くて嫌になる。
私たちは本当に来週会うのだろうか。会ったらどうなるんだろうか。

友達だから、友達として会うのが一番いいね。過度な期待をしなくていいし、もうわたしがどうにかしてあげられることなんて何一つないんだから。
それでいいね。

少しずつ夕方の空が秋に近づいていて、一年が猛スピードで過ぎていく。
どんな毎日を送ったって歳はとるし、肌の水分は抜けていく。若い子たちが着るTシャツの白さが羨ましくなる。君たちはいつだって無敵だね。

わたしの一番若い夏が終わっていく。

常に泣いてます。