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貪欲のブルーシール ~愛を贈りたいから~

岩田です。はてなブログの過去記事転載です。

それは突然に訪れた

「A子さん...ダメだよいきなりそんな....」

「Y夫さん、でも...でもアタシもうとめられないよ...」

秋晴れの南国の島で、ついに二人は出会った。

怪しすぎる仲間からほのかな祝福をうけつつも二人は出会ってしまったのだ。


僕は二人を見て思う。

恋とはいつでも貪欲にいきたいものだ...と。

始まりはSNS

男女の恋愛、その始まりは些細なことから起きると昔から決まっている。

鼻くそをほじったシーンを見られた、コンビニのトイレで大きな屁をこいてしまったのを聞かれた...恋の始まりとは大方そんなところだろう。

お互いの恥ずかしい場面を見た時、愛おしいと思えるかどうかが一つの決め手になる。

A子とY夫もそんなお互いの恥ずかしシーンからひとつの恋が始まった...と、今になって僕は思う。


二人の関係はSNSから始まった。

どちらが先に仕掛けたのか...今となってはどうでもよいことかもしれない。


Y夫は昔からSNSで少々変態的な主張を行うのが得意な男だった。そんな変態的主張をするY夫に僕はジェラシーを感じていた時期がある。

「あの野郎...人気を独り占めしやがって!」

僕もいい歳こいたオッサンだというのに情けない、Y夫のSNSの変態的主張...それは僕や仲間にとっても実に輝いて見えていたことは疑いようのない事実だった。


そんなY夫が突然SNSである女性と交流を始めた...そう、A子だ。

Y夫の主張は変態的でありつつもどこか哀愁がある、また自分の中にある恥ずかしい部分をさらけ出す姿勢も人気の理由だったのだろう。

そんな脳内思想を自ら丸裸にする挑戦的なY夫にA子は惹かれていったのかもしれない。


二人が急速に距離を縮めていったのは誰の目にも明らかだった。

SNSで公開文通を始める二人

惹かれ合う二人の関係...それは一般的な恋人同士とは少し違っていた。

Y夫とA子の住いは相当に離れている。

例えば東京と沖縄ぐらい離れた距離なのだ。


そんな離れた場所に暮らす二人はSNSを利用して愛を深めていったことは分かっていた... が、問題はその手法だ。

二人はあろうことかSNSによる公開文通を始めてしまった。


どちらが先に愛の気持ちをSNSで公開文通にしてしまったか?

僕の記憶が確かならばY夫のほうだろう。


Y夫は得意とする変態的主張の中にA子への想いを込めた投稿を続けた。

しかも投稿はA子が見るとは限らない状態で彼は続けたのだ。

「なんて強い変態力と愛に対する貪欲さなんだ...」

こう感じたのは僕だけでは無かっただろう。


はじめは少し茶化していたSNS仲間の周囲もY夫の少し曲がった愛に感化されたのだろうか、いつの日かSNSではY夫とA子の愛が上手くいくように...と変化していった。

それに伴ってかA子はA子でY夫へ惹かれているような公開文通を始める...


僕はとてもワクワクしながら二人をじっとりと見守った。

恋に貪欲な者が手にした約束

二人がSNSで公開文通を始めてから少し経った頃だろうか、突然にもY夫が動いた。

「A子に会いに行く、飛行機で会いに行く」

あの時の衝撃は今でも忘れない。


Y夫はA子に確認もとらずに飛行機とホテルの予約を行い、さらにそれをSNSで公開してしまったのだ。もちろんA子がその投稿を読む確証が無いママに...

あの時の僕...いや、二人を見ていた怪しい仲間全員がこう思ったに違いない

「Y夫....あんた...アンタ熱いぜ!」

一見するとY夫はA子とヤリたいだけのように見える、本当はそうなのかも知れない。

しかもその後に続くY夫の投稿は更に変態度を高めてゆくという無謀とも思える勢い...周囲は固唾をのんで二人を見守ることしかできなかった。


後はA子の返答だ、

Y夫は全世界に向けて予定の調整や約束も行わずに勝手に飛行機とホテルの予約をした、これは言うなれば公開告白に他ならない。

ここでA子に断られてしまえばY夫にとって恥ずかしい経過だけが残ってしまうのは明白、この時ばかりはY夫がカッコよく見えてしまった人も多いだろう。

...

..

.

Y夫は何かを勝ち取った。

少々変態的とはいえ、愛に貪欲な者だけがが手にする勝利の瞬間を目にした時だった。

貪欲に絡み合うアイス

秋晴れの南国...ついに二人は出会ってしまった。

それまで何度も破たんの危機を乗り越えながらも二人は出会ったのだ。

今、二人はある有名なアイスを食べ合っている。 


「Y夫さん、あたしY夫さんのライムシャーベットが食べたい、今すぐ食べたいかも...」


「A子さん...ダメだよいきなりそんな...俺だってA子さんのフォーモストラムレーズンも食べたいよ...」


「Y夫さん...でもアタシもうY夫さんのライムシャーベット食べ始めてるよ、もう止められないよ...!」


「A子さん...コーンにライムシャーベットにフォーモスト ラムレーズンのダ...ダブルでいい...よね?二人でタイミングを合わせながら...一緒に食べよっか...」


貪欲のブルーシール完


最後まで読んで頂き、本当にありがとうございました。

この話はヒャッハー委員会が考えたお題「貪欲の秋」に沿って書きましたが、全てフィクションです。

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