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EP.1「星占いってなに?」〜星詠みの物語〜

「さて、さっそく星占いについてだけど・・・うーん、何から話そうかな。星占いの説明なんて範囲広すぎだよね」

自分で説明するって言ったのに・・・
もしかして、何も考えてなかったのだろうか?

「君・・・今、失礼なこと考えたただろ?」

い、いや、そんなことは・・・
っていうか、この人、心が読めるの?

「心なんか読まなくても表情でわかるよ、それくらい」

ミナヅキさんはエスパーなのかも知れない。

「ふふふ・・・じゃあ、まずは、歴史についてかな。中身の話はその後にでも。星占いの起源についてから、いくよ」

ミナヅキさんはそう言うと、組んでいた足を解き、身を前に乗り出してきた。

「こいつはかなり古くてね、古代バビロニアの時代、紀元前2000年ぐらいが始まりって言われてる」

紀元『前』・・・?

ミナヅキ「そう・・・2000年時代生まれからすれば、ざっと4000年ぐらい前だね!」

4000年前・・・さすがに遠すぎてイメージが湧かない。どんな時代だったんだろう。

「この時代はまだ政治と占いと神話がごっちゃになってた時代で、今よりもずっと原始的で感覚的なものだったんだ」

政治と占いと神話がごっちゃに・・・科学が発展した今ではなんだか考えられない。

「例えば火星は死を司る神様の象徴だから悪い星、だとか言われてたりして〜」

そ、そんな、ざっくりした感じなんですか?

「そうだね。数年に一度、夜空に真っ赤に光る星がやってくる。そんなの見たら皆不安に思うだろう?そこから火星は不吉や戦争、疫病というイメージと結びついたってハナシ」

つまり、今の占星術よりも幾分か直感的で分かりやすかったのだろうか。

「そういうこと。君、良いセンスしてるね」

良い・・・センス・・・?

「そんなワケで、この時はまだ星占いというよりは神話としての色が強かったのさ。だけど、これが紀元前400年になって変化することになるんだなー」

・・・すみません、紀元前400年ごろも全然ピンと来ません。

「えーっと、アレキサンダー大王がギリシャを統一し、その周辺国を支配した時代かな。ヘレニズム文明が花開いた頃でもある」

アレキサンダー大王は聞いたことある気がするけど、ヘレニズム・・・ってなんだろう。

そんな疑問をよそにミナヅキさんはどんどん話を進めていってしまう。

「ホロスコープっていう、今の西洋占星術の核となるものが確立され始めたんだ」

ホロスコープも聞いたことはありますね。

「HOROとは"時"を意味し、SCORPとは"観測者"を意味する。ま、そのまま直訳すれば『時の観測者』って意味だね」

め、めちゃくちゃ厨二臭い・・・けど、なぜだろう、とても心惹かれる。

「ホロスコープってのは、ある時間、というか、ある瞬間を切り取って、その時に、どの惑星が、どの星座の領域に位置していたのかを図にした、星図を指す言葉なんだ」

へえ・・・と言ってもまだピンと来ませんけど。

「これによって、星たちの位置で未来や予兆を観測するという方法が確立されるわけだね。ちなみに、この時代の占星術師は国や貴族たちから可愛がれてたらしいよ」

確かに、未来の予測なんてできたら、重宝されるだろうなあ。

「いつの時代も占いに心寄せる為政者はいるからね。けど、その一方で、占星術師は妖術使いだ、悪い魔女だって、迫害されていたこともある」

可愛がられたり、攻撃されたり、忙しかった時代だったわけだ。

「けど、5世紀ごろになって決定的な時代がやってくるんだ。これ以降、占星術は約700年間の衰退期に入ることになる」

なっ、700年・・・!?

「主な理由としては、キリスト教会からの弾圧だね」

急に話が生々しくなるのを感じた。

「彼らは『占星術は人の自由意思を封じ、運命は決まっているなんて言って、人の心を惑わせる』って言い始めたのさ。それに、キリスト教が占星術を攻撃する理由は他にもあった」

ミナヅキさんは、ぶすっとした顔でぶっきらぼうに話し始めた。

「当時のキリスト教はローマ帝国の国教となっていたけど、その地位は決して安泰ではなかったのさ。グノーシス主義やマニ教といった、いわゆる異教の勢力も強かったんだよ」

ぐ、ぐのー、まに・・・?
つまり、他の宗教も広まってて、自分達の存在が脅かされて立ったことですかね?

「そんなとこ。そこで、キリスト教は異教を攻撃するんだけど、その時に占星術も厳しい批判を浴びたってわけ。あの異教徒たちは占星術という方法で人を悪の道に引きずり落とそうとしている、ってな具合にね」

それは・・・もしかして・・・占星術の中身を強く否定されたわけではないのでは・・・

「そう。要するに権力闘争のとばっちりだね。異教徒を攻撃するために難癖をつけたに過ぎないよ。全くもって、腹立たしい」

ミナヅキさんの眉間のシワがどんどんと深くなっていく。
飄々とした人物かと思っていたけど、実は感情の起伏は激しいのかもしれない。

「まぁ、そんな経緯があって、それから700年ほど占星術は衰退期に入る。ただし、完全に途絶えたワケじゃなかった」

それだけ批判されていてもなくならないって、すごいですね。

「ヘレニズム文明に花開いた占星術は、その後いくつかの言語に翻訳されながら、インドやアラブまで広がっていく」

そんなところにまで・・・何だか、壮大な話になってきましたね。

「そして、時を経て、ヨーロッパでも古代ギリシャに栄えた学問を復活させようとする動きが見られ始める。俗にいうルネッサンス期の始まりだ!」

ルネッサンスってのも名前は聞いたことあるけど、具体的には知らないなあ。

「ルネッサンス期には占星術も洗練され、より具体性を増して復興を遂げていくことになる。何せ700年もの間、途絶えずに研究は続いていたからね」

知らなかった。

星占いと言えば、朝のニュースや雑誌の1Pでしか見たことがなかったけど、そんな歴史があったなんて。

「まぁ、星占いの歴史はざっとこんなもんかな。かなりハショったり、それどころかこれ以降も色々とあるんだけど、そこまで話すと大変なことになっちゃうからなぁ」

う・・・確かにこれ以上は頭がパンクしそうだ。

「ともかく、占星術が長い歴史を持つことがわかってもらえたかな。じゃあ、なんでここまで長く続くことが出来たんだろう? 占星術の何が人の心をそこまで掴むのか? 次回はそれを話そうと思うよ」

次回EP.2「星占いの魅力って?」

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