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EP.5「牡牛座ってどんな人?」〜星詠みの物語〜

「ドナドナドーナードーナー♪ 子牛を乗ーせーてー♪」

何やら聞き覚えのある寂しいメロディーを突然口ずさむミナヅキさん。

「母と引き離された子牛。彼を待ち受けていたのは底知れぬ暗闇と限りなき絶望だった・・・」

かと思えば、やたら仰々しい口上を述べ始めた。

「どこまでも続く混沌の世界、このまま耐えるしかないのか。そう諦めかけたとき、希望の光が射し込む。これは・・・いけるかも知れない・・・! 子牛は痩せ細ったその体を奮い起たせ、小さな・・・しかし大いなる1歩を踏み出した。さあて、次回もサービス、サービスゥ!」

・・・はい。見るんで、とりあえず次の解説どうぞ。

「お! 対応の仕方が分かってきたようだねえ。そう、今回は牡牛座。一言で言うと、超!超!超ーっ!マイペース!他人にペースを乱されることが大嫌い。これは、牡牛座が幼児を象徴するからなんだ」

幼児を象徴・・・

なるほど、前の牡羊座は赤ん坊だった。
だからその次に来る牡牛座は幼児。

「そういうこと。そして、幼児って、超マイペースでしょ?」

・・・なるほど

「とにかく、やたらめったら何かに手を出すし、口に入れる。それを阻もうものなら、即座にガン泣き! いやあ、全国のお父さんお母さん、いつもホントお疲れ様でーっす!」

・・・全国のお父さんお母さんを煽ってます?

「そんなことないって! えーと、あとは、五感が研ぎ澄まされているってのが牡牛座の特徴かな。だから手触りが良いものが大好き。もふもふしたものとかー。あとは、他の星座よりも食に対するこだわりがある。美味しいご飯さえ食べてればご機嫌取れる。これは覚えておくといいよ!」

なんていうか、本当に小さな子どもみたい。

「さて、そんな牡牛座の特徴は「頑固さ」だ。これが凄まじくてねえ。頑固さ、つまり今の自分に、今の状況に徹底的にこだわる。とにかく変化を起こすのは大の苦手だ」

前回もだけど、やはり悪口のようにしか聞こえない・・・

「チッチッチ、そう考えるには浅薄だよ。頑固さが悪いこととは限らない」

そうは言われても・・・頑固さというと悪いイメージしかないけどなあ。

「まぁまぁ、じきにわかるから。変化を恐れるということは、「未知」というものに恐怖を抱くということ。牡牛座はそれが特に強いんだ。例えば、ブラック企業というのがあるだろう? これに牡牛座がハマると悲惨なことになる」

どういうこと?

「今の環境はガチで辛い。だけど、知らない環境に飛び込むのはもっと怖い・・・結果、未知という恐ろしいものに飛び込むぐらいなら、いまの苦痛に縋りついた方がマシだ、そんな状況になる」

う、わあ・・・そんなことになるのか・・・信じられないけど・・・

「牡牛座にとっては、それほど変化ってのは怖いのさ。では、何故、頑固になるのか。それは、今ここにあるもの、今触れられるもの、確かにその存在を感じられるものが大事で、牡牛座はそれを守りたいからなのさ。信念だとか哲学だとかも良いけど、そのために身を削るようなことはしない」

今ここにあるもの、存在するものを大事に・・・ちょっとリアリストっぽくもあるのかな。

「お、鋭い。たしかにそうかもね。そして一度信じたら絶対に信じる。何があっても、どんなことがあっても、丸っきり全部引き受ける。それこそ、五感を、すべての感覚を駆使して信じ続けるんだ」

何があっても、信じ続ける・・・

「じゃあ、そんな牡牛座が暗い絶望じゃなく、その先に『光』を見たらどうなると思う?」

何故だか、鳥肌が立った。

「どこまでも、どこまでも、光を信じ続けるだろう。例えその途中でどんな困難や試練があっても、絶対に彼らはそれを踏み越えてくる。いけるかも知れない、そう思った牡牛座の歩みもまた凄まじい。並大抵の事では止められない。なぜなら・・・」

頑固だから。

「ほら、わかったろう? そもそものスピードが遅いから、コツコツした努力や成果が出ない時期もへっちゃらだ。牡牛座を見ていると、希望さえあれば人は生きていけるのかも知れないと思わされるよ」

・・・あぁ、そうか。だから小さい子どもなんだ。

「そういうこと。何も知らない赤ん坊の時期を越えて、牡牛座のステージでは、実際に何かに触れていくことになる。未知のものに触れるのは怖いけど、触れないと始まらない。そして触れた先で、一気に世界が広がる! 色や形を見ること、いくつもの音を聞くこと、どこからか漂う香りを嗅ぐこと、初めてナニかを手に取ること、そして愛に溢れた食事を摂ること・・・」

小さな子どもが、全身を使ってさまざまなものに触れようと動き出すイメージが浮かんだ。

「人は、悲しいかな、その遠い昔に覚えた感動を忘れ去っていく。でも、牡牛座は違う。それこそ、遺伝子レベルと言っても良いくらいに、五感に対して鋭敏なんだ。そして、それを使って見つける。正真正銘の、自分にとっての宝物を、ね」

・・・それは、確かに大切にするだろう。

どこまでも信じるだろう。
そんな大切な宝物は・・・自分にもあるのだろうか。

「誰しも心に宝物はあるものだよ。もしかしたらボクの話を全て聞いたら分かるかもね。ま、ともかく牡牛座はこんなとこかな」

頑固でマイペース、ゆったり、のんびりで、大切なモノは絶対に手放さない。

「うん、可愛らしい星座だよね。幼児が無邪気に遊んでるのを見るのと同じで、何故か微笑ましくなっちゃう」

・・・それはたしかに見守りたくなるかもしれない。

「ところがどっこい! 牡牛座は基本的に寝るの大好きだから、寝坊ですっぽかしとかよくあるし、これ好きっ! って思っても一晩寝たらキレイサッパリ忘れてるとかもザラ! いくら可愛らしい幼児とはいえ、どこまで許せることやら!」

持ち上げたかと思えば落とした・・・

「んじゃ、次は双子座、いってみよー!」

次回EP.6「双子座ってどんな人?

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