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EP.21「月が満ちる過程」

「じゃあ早速、月の満ち欠けについて話していくよ!」

今回は特にネタ振りはなしか・・・

「おや? ちょっと寂しいかい?」

いや、まあ・・・いざなくなると、はい。

「おやおや嬉しいこと言ってくれるねえ・・・ま、ちょっと時間も迫ってるみたいだからさ」

「言っただろう? 最初のほうに。『その時』が来るまで語り続けるって。その時が近いってことさ」

そ、そうなんですか・・・

「ま、といってもまだ話さないといけないことがあるから今すぐって感じではないけどね。ということで、はい集中!我々が普段使っている『1ヶ月』とは月の満ち欠けが元になっている」

あ、だから『月』という言葉を使うのか。

「うん。その昔、月は暦の基準であり、その光は生活する上で大切な光源だった。さぞ綺麗な月明かりに照らされていたことだろうね」

確かに。電気の明かりがなければ、満月の光はとても強いですもんね。

「つまり、人というのは月と密接に生きてきた。それだけでなく、潮の満ち引きは何が原因か知っておるか?」

あ・・・月の引力?

「そう、地球の海は月の引力に大きな影響を受けている。そんな星の上に生きている生物が、月の影響を受けずに済むと思う?」

いや・・・思えない.

「底考えを基にすると、つまり月の満ち欠けについて知ることは、自身のバイオリズムを知ることでもあるってことさ」

お、奥が深い・・・

「ってことで、今から月が満ちていく過程を説明していくよ。まずはスタート、新月だ」

新月は、確か全く見えない、光が届かない月だ。

「まぁ、実は見えなくもないんだけどね。その昔、新月が1ヶ月の始まりだった。その日のことを『つきたち』と呼んでいたのが訛って『ついたち』になったんだよ」

え、そうだったの!?

「人が月と共に生きることを忘れて久しいからね、知らなくてもしかたない。ともかく、新月は新しい始まり。新しく物事を始めたければ、この時期を狙いたいね」

そうだったんだ・・・あまり意識したことがなかった

「そして新月が満ちていき、やがて三日月になる」

確か、三日月は一番美しい形であると聞いたことがある。

「その通り。さて三日月は、新月で始めたことをやりつづける新鮮な時間。そしてここで止めるから三日坊主とも言われる」

そうだったんだ・・・!

「これは嘘。咄嗟に出てきた思いつきです」

・・・・・・・・・

「さて、次に月は上弦になる。いわゆる半月。もし始めた物事がここまで続いているのであれば、最も勢いの強い時期とも言える」

どんどん仕掛けていく時期?

「そうでもあるけど、少し熱を上げすぎる恐れもある。月の満ち欠けの4分の1という節目だから、整理することも重要だ」

なるほど、進むだけではないんだ。

「そして月は十三夜月、小望月と呼ばれる時期に入る。これは、一言でいうと、締め切り間近だ」

・・・てんやわんや?

「そう。物事は始めるよりも完成させる方が難しいもの。情熱や熱狂だけでなく、冷静にまとめることも必要とされる。内面の強さを問われる時期だね」

月って、各段階でそんな意味合いがあったんだ

「もう忘れ去られようとしていることではあるけどね。でも、人の身体は今も昔も変わらない。代わり映えのしない日常、なーんて悟ってカッコつけず、月と共に生きることをおすすめするよ。その方が変化もあって楽しいでしょ?」

月と共に生きる・・・なんだか、詩的な響きだ。

「ここまでくれば、次はお察しの通り、満月になるわけだけど。満月は何を意味すると思う?」

えっと、達成、とか、完結?

「そういうことになるね。ただし、完結とは少し意味が違う。というのも、月は欠けては満ち、満ちては欠けていくサイクルを繰り返すからだ」

止まることはないってこと?

「そそ。万物は流転するっていうじゃない? さて、そんな満月だけど、具体的には新月で始めたことが芽を出す、結果が出始める頃だ」

じゃあ、楽しい時期だ!

「そうだね。良い芽を蒔いてれば」

・・・あ、もしかして・・・

「悪い種を蒔いてれば、もちろん悪い芽が出てくる。問題が表面化する時期でもある」

蒔いたものしか刈り入れられないですよね・・・

「まぁそりゃそうだね。だから、自分が蒔いたものが何なのか確かめられる、ある種ドキドキな時期でもある」

なるほど。

「ちなみに、満月の時期は何事も吸収しやすいぞ。知識はもちろん、食事や栄養もね」

う・・・気をつけよう

「あら、心当たりでもおありかな? で、次は十六夜月や寝待月と呼ばれる時期だね。この時期は満月で達成したものを更に伸ばしていく時期だ」

ボーナスステージみたいな感じかな?

「そういうこと。芽が出て、実が成り、次の種を蒔く、またはその準備をする頃だ」

どういう事をやるのがおすすめ?

「そうだなあ。得られたものを、もっと広めていくって時期だな。自分だけのモノにせず皆と分かち合う。それでこそ大収穫ってもんだ」

なるほど。じゃあ、このあとに来るのが下弦の月?

「おや、よくご存じで。下弦の月は整理の時間。今までやってきたことの振り返りだ」

もう拡大する時期ではないってこと?

「うん、今まで頑張ったから少しは休もうぜって時期だね。むしろ、後ろを振り返ることだって立派な前進だ。どっかのゲームじゃ、過去を振り返ることと未来を創ることは同じだとか言ってたしね」

おすすめの過ごし方とかは?

「ゆったり、のんびり、まったり、だな」

あぁ・・・なんか落ち着きそうな時期だ。

「そして最後に二十三夜、または晦日(みそか)だね。つごもり、とも言うんだけど、何故だか知ってる?」

知らないです・・・

「月が!隠(こも)るから!つごもりって言うんだよぉ!(ドヤァ顔)」

そんなあからさまなドヤ顔されましても・・・

「・・・さて、この時期になったらもうジタバタ騒がず、ゆっくり自分と向き合う時期だ」

リラックスして過ごすみたいな?

「まぁ、基本はそう。瞑想したりするのも結構おすすめだよ。・・・ということで、月の満ち欠けについては理解してもらえたかな?」

ええ、とりあえずは。

「うんうん。それでは、そろそろ次のステージに・・・仕上げにかかっても良い時間かな」

ミナヅキさんがふっと目元に影を落とす。なんだか寂しそうに見えなくもないけど・・・

「結論からいうとね、君が自分の事を思い出すのもそろそろだってこと」

本当に!?

「うん、本当。でも、その為に、最後に聞かなくちゃいけない話があるんだ」

ど、どんな?なんの話を?そこまで言って、はたと気がついた。

ミナヅキさんの目が、これまでとは打って変わって、底知れない冷たさを持ち始めたことに。

「それは・・・」

次回、EP.22「占星術の罪」


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