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EP.4「牡羊座ってどんな人?」〜星詠みの物語〜

「さ~て、お待ちかねの~、各星座ごとの解説の時間ですよ~」

ミナヅキさんの口調はいつになく間延びしていた。

「そりゃあ君、これから十二星座を一気に片っ端から話していくわけだからさあ。突然、話がどこに飛ぶかわかんないし、気を付けてねー」

そう言うとミナヅキさんはコキコキと肩を鳴らし、上に大きく伸びをしてみせた。

どうやら、相当なエネルギーを使うらしい。
こちらも少し気を引き締めたほうがよさそうだ・・・

「ほい、じゃあ始めるよ。まずは牡羊座。生まれとしては、3月の下旬から4月の中旬ぐらい。毎年、数日ぐらいズレるから注意が必要だよ」

ふむふむ。

「ここで突然だけど、各星座は人間の人生を表している」

えっ、いきなり話が飛んだ・・・? 人生・・・?

「結論から言うと、牡羊座は生まれ落ちた赤ちゃんのイメージ。12星座には順番があってね、最初の赤ん坊が牡羊座、次に少し成長したあたりが牡牛座・・・といった風に各ライフステージを星座で例えることが出来る」

へえー。

「信憑性や誰がいつから例え始めたのかは諸説あるみたいだけど、かなり分かりやすいイメージだからこれを中心にして話していくね。さて、赤ん坊に例えられる牡羊座。連想されるキーワード・・・何か思いつく?」

・・・純真無垢?

「おー、いいよいいよぉ!そういうこと!君やっぱセンスあるねえ」

センス?とかはよくわからないけど、ホメられるとやっぱりうれしい。

「まさに言い得て妙。何も知らない。何も始めてない。だからこそ彼らは『挑戦』という言葉やその機会にとても心惹かれる。何も知らないなら、知れば良い。じゃあどうしたら知ることが出来るのか?それは行動あるのみって思考回路だ」

すごく、ストレートというか・・・衝動的な考え方だ。

「そう。つまり、単純! 単細胞! 考えなしの脳筋的思考! このご時勢非難されがちな根性論ってやつ!」

・・・ミナヅキさん、牡羊座の人から刺されないだろうか?

「何をバカな。それこそが牡羊座の強みなんだよ」

単純であることが? どうして?

「では問題です。無限大の可能性を持つにはどうすれば良いか?」

無限大の、可能性・・・
それこそが、赤ん坊ではないだろうか?

「そそそ、大体そう!」

ミナヅキさん、再びのサムズアップ。

「人は何かを知り、何か経験を積むたびに可能性が限られていく。目の前に何かしらの問題があったとして、どうやって解決するか考えるとき、人は必ず今までの過去の経験を思い返すよね?もしその時に失敗経験ばかり出てきたら、その人はどう思う?」

あぁ、失敗するな、と思うでしょうね。

「あたり。んで、そういう時こそ、その通りに失敗する。また、何かをするために使った時間などは戻ってこない。だから人は何かをやる前に上手くいきそうか、失敗しそうかということをとても気にする。世の中で働いている大人たちも、大体、自分の人生はこんなもんかな?って考えをしてる人が大半でしょう」

生きていくことは・・・可能性を絞り込んでいくこと・・・?

「お、随分と詩人じみたことを言うじゃないか。お主、やりおるなあ~」

ミナヅキさんは意地の悪そうな顔でケタケタと笑った。

が、その表情はすぐに一転した。

「でも、牡羊座はそんな暗い考えを持っていない。何も知らない。何もやったことがない。だから小賢しく成功確率を考えたりとか、上手くいく方法だとかは考えない。そもそも失敗するかも?という計算すらしない」

ミナヅキさんの瞳がきらりと瞬く。

「とにかく始めることが第一。失敗したら失敗したで、全然構わない。また次のチャレンジへ向かっていく。上手くいったら上手くいったで、めちゃくちゃに喜ぶ。しかも周りを巻き込んで喜ぶ。牡羊座の喜びっぷりは凄いよ!巻き込まれるこっちが嬉しくなってくるんだよね」

なんて、明るい存在なのだろう。
失敗することに・・・不安や恐怖はないのだろうか?

「ないね」

とても切れ味の鋭い口調だった。

「何も知らない、なんて、ヒドいことを言っているけどね。正確には血肉にしているという表現になる。成功も失敗も、見たこと聞いたこと感じたこと、それら全てを自分の体に取り込むんだよ。いつまでも頭に置いておくようなことはしない。体が勝手に動く、というような感じ。未知のモノに対して不安に思うことがあっても、飛び込むことに抵抗はないはず」

・・・どうして、そんなに強くいられるのだろう。

「それもまた、赤ん坊だからだろうね」

赤ん坊だから、強くいられる?

「そう、赤ん坊は泣くことしかできない。でも、その赤ん坊は自分の全身を使って、どこまでも鳴り響かせるように泣く。それこそ楽器のようにね。今、自分がそこにいることを全力で知らせるんだ。牡羊座のテーマは『自分の力を認めてもらう』こと。認めてもらえるならどこでもいい、それはつまり、どこにいたって認められる可能性があるということだよ」

無限大の・・・可能性。

「牡羊座の、生きていることへの肯定力っていうのは、ボクも驚かされるよ。牡羊座がいるだけで、場が明るくなるからなぁ~ホント」

牡羊座。
赤ん坊を象徴する星座。

単純かも知れない、だけど、だからこそ、どんなところでも全力で駆けぬけて行ける。

他は、他の星座はどんな人たちなのだろうか。
それで・・・

「そうだね。君も、牡羊座かもしれないし、別の星座かもしれない。とりあえず、まずは全部聞いてみることさ!ということで、次は牡牛座だね。何話そっかなー」

次は一体どんな星座なのか。
どんな魅力的な星座なのか、胸が高鳴って―――

「あ、ちなみに牡羊座は物事を始めるのは得意だけど、継続することは向いてないよ~!!」

・・・ホント、牡羊座の人から刺されないだろうか・・・

次回EP.5「牡牛座ってどんな人?」


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