見出し画像

恋愛に答えなんてないから、わからないなりに探し続ける

恋愛というものは幅が広く、奥深く、人間の永遠の課題です。それだけ難しいテーマにも関わらず、人間が生きる上では切っても切り離せないものです。

そんな恋愛を描いた映画はこの世に多々あるけれど、それをひとくくりのジャンルとしてカテゴライズするのはいささか雑かもしれません。

そこには10代の初恋、1夜限りの恋、結婚前の絶頂期、中年倦怠期の夫婦、老後の夫婦などなど、年齢や境遇などによっても千差万別の内容があるからです。

また恋愛の素晴らしさを謳うものから、恋と愛の違い、愛の残酷さ、もどかしさ、苦しさなど描かれる感情も何もかもが作品によって異なります。

さらにひとつの作品をとっても、年齢を重ねるごとに、自身が置かれる恋愛のフェーズが変わるごとに、見るたびに視点や感想や味わい方はどんどん変わってしまいます。

だから恋愛映画を紹介するというのは本当に難しいのだけれど、今現時点でのわたしが思う「恋愛を考えるのに役に立つ」作品を挙げてみますが、数年後にはガラッと変わっているかもしれません。

これからの人生において何度も見直し、その意味を噛み締めていくことになるでしょう。

①ブルーバレンタイン(2010年アメリカ:112分)

仕事が芳しくないディーンと、長年の勉強の末に資格を取り、病院で忙しく働くシンディの夫婦は、娘のフランキーと3人暮らし。2人はお互いに相手に不満を抱えていたが、それを口に出せば平和な日常が崩れてしまうことを恐れていた……。夢や希望にあふれていた過去と現在を交錯させ、2人の愛の変遷を描くラブストーリー。(参照:映画.com

恋に落ちた頃の初々しい二人と、現在の倦怠期真っ只中の二人を対照的に描きながら、夫婦や男女の関係性の美しさや難しさなどを描いた今作。ただウキウキワクワクという恋愛を描いただけの作品とは一線を画し、心が何かを叫ぶかのような苦しみやもどかしさまで含め、こんな深いラブストーリーは見たことがありません。

また監督が今作のために施した演出がすごいんです。

中年男性を演じるために自ら髪の毛を抜いてハゲ頭にしたライアン・ゴズリング。劇中の夫婦喧嘩シーンにリアリティを持たせるため、わざと本当にケンカさせて険悪な空気の中で撮影を行う監督。お互いに「相手の秘密をどうにか打ち明けさせろ」というアドリブ演技を要求し、その末に飛び降り自殺しそうになる役者。

徹底的にシビアな演出による、哀しいほどリアルな夫婦のやり取り。男は夫に、女は妻に感情移入して観てしまうのでしょうが、お互いへの理解は決して相入れることはないように思います。ただただ哀しくて寂しい。自分の人生のフェーズが変わるたびに、観た後の印象も刻々と変化するような味わい深い作品だと思います。

夫婦とはなんなのか?男女とはなんなのか?理解し合うことはありえるのか?

すべてを象徴したような、これほどまでに美しいエンドロールをわたしは他に知りません。

②ビフォア・サンライズ 恋人までの距離(1995年アメリカ:101分)

列車の中で出会ったアメリカ人青年ジェシーとフランス人女性セリーヌ。意気投合した彼らはウィーンで途中下車し、14時間だけという約束で一緒に過ごすことにするが……。リチャード・リンクレイター監督が贈る、極上のラブ・ストーリー。ウィーンの街を歩きながら2人が交わす、時に他愛なく、時に哲学的な会話の数々が光る。(参照:映画.com

電車の車内で出会った男女がただただ歩きながら他愛ないおしゃべりする、今作のあらすじは本当にそれだけです。にもかかわらず、この映画はすべてにおいて微笑ましく、美しく、恋愛のすべてが詰まっているような豊かさがあります。

また2004年には、本作より9年後の彼らの姿を描いた続編「ビフォア・サンセット」、13年にはさらに9年後を描いた「ビフォア・ミッドナイト」も製作。なんと現実にほんとうに 9年ごとに撮っているので、俳優も同じだけ歳を取っており、作中の人物同士の関係性の変化に妙にリアリティがあります。

三部作はすべてを観ることをオススメします。恋愛の美しいところばかりを描く1-2作目と、恋愛の美しくない部分まで踏み込んだ3作目まで、すべてを合わせてビフォアシリーズはようやく完成するのです。

このリチャード・リンクレイターという監督は、作中の時間と現実の時間を同化することにこだわりがあるのか、『六才のぼくが大人になるまで』という作品においても、実際に六才の主人公たちが大人になるまで撮り続けてひとつの作品にまとめるという途方もないことをしています。もう変態です。

③シング・ストリート 未来へのうた(2015年アイルランド・イギリス・アメリカ合作:106分)

大不況にあえぐ85年のアイルランド、ダブリン。14歳の少年コナーは、父親が失業したために荒れた公立校に転校させられてしまう。さらに家では両親のケンカが絶えず、家庭は崩壊の危機に陥っていた。最悪な日々を送るコナーにとって唯一の楽しみは、音楽マニアの兄と一緒に隣国ロンドンのミュージックビデオをテレビで見ること。そんなある日、街で見かけた少女ラフィナの大人びた魅力に心を奪われたコナーは、自分のバンドのPVに出演しないかとラフィナを誘ってしまう。慌ててバンドを結成したコナーは、ロンドンの音楽シーンを驚かせるPVを作るべく猛特訓を開始するが……。(参照:映画.com

一目惚れした女性に近づきたいがために、バンドを組んで音楽にのめり込んでいく少年の青春を描くお話。この映画は恋愛の要素も大きいですが、そのオリジナルの音楽自体のクオリティが信じられないほど高く、音楽映画としても存分に楽しめる稀有な作品になっています。

その時々の女性との距離感や感情、想いを歌にして届け続ける少年。次第にその想いに惹かれていく女性。美しい映像やテンポの良い音楽と相まって、最後まで爽快感あふれる映画体験ができます。

この作品はジョン・カーニー監督の半自伝的作品とされていて、舞台として実際に監督の母校が使用されているそう。出演している俳優もほとんどが無名俳優だそうで、純粋に作品の内容だけに集中できるのはとても嬉しいものです。

ジョン・カーニー監督はこれまでも『ONCE ダブリンの街角で』『はじまりのうた』など、音楽をひとつのテーマにした傑作をつくっています。今後も必ず追いかけたい監督のひとりです。

④ラブ・アクチュアリー(2003年イギリス・アメリカ合作:135分)

クリスマス間近のロンドンを舞台に、英国首相からプータローまで、老人から11歳の少年まで、さまざまな職業と年齢の男女19人が織りなす群像ラブ・ストーリー。(参照:映画.com

複数の主人公のそれぞれの物語が同時進行的に展開されていき、やがてそれぞれがクリスマスという一夜に向けて収束していく様を描く、比較的明るくてコメディチックなラブストーリーです。

恋愛という世界には年齢も肩書きもなにひとつ関係なく、すべからく人類に与えられた大切な営みであることを改めて教えてくれる、いつ何度見ても楽しい作品。

この映画を見たあとは、「空港」が世界一幸せな場所に思えるようになります。

⑤ラブ・アゲイン(2011年アメリカ:118分)

40代の生真面目な男カルは、妻エミリーが浮気をし離婚を切り出される。高校時代からつきあっていたエミリー以外の女性とデートもしたことがないカルだったが、ある夜、バーでプレイボーイのジェイコブと知り合い、ジェイコブの助言でファッションや髪型を磨いて新しい人生を歩もうとする。(参照:映画.com

いかにも冴えない中年男性が、ふとしたきっかけから超プレイボーイイケメンに弟子入りして人生をやり直そうと奮闘するコメディ・ラブストーリー。

ときに笑いあり、ときに涙あり、そして真面目に、人と人が出会い恋に落ち結婚するという奇跡について教えてくれる優しい作品です。

ライアン・ゴズリング×エマ・ストーンという『ラ・ラ・ランド』の主演最強タッグは、実はこの作品のときから生まれています。

⑥きみに読む物語(2004年アメリカ:123分)

療養施設で暮らす初老の女性は記憶を失っていたが、ひとりの男性が彼女を訪れて、ある物語を読んで聞かせる。それは1940年代のアメリカ南部の町で良家の子女と地元の貧しい青年の間に生まれた純愛の物語だった。(参照:映画.com

痴呆により記憶が曖昧になっている老女に対し、ひとりの男性がある物語を読み聞かせる。内容にはあまり触れませんが、非常に泣ける作品です。

この作品が最も、「愛」というものの美しさを描いているように思います。自分もいつまでもこんな風でありたいとさえ願うばかりです。

ちなみにここまで来てお気づきかもしれませんが、ライアン・ゴズリングが3作品で登場しています。『ブルー・バレンタイン』『ラブ・アゲイン』『きみに読む物語』。この人のなんとも言えない表情の演技は、恋愛映画という「雰囲気」が大切なジャンルにおいて重宝されているのでしょうか?

⑦エターナル・サンシャイン(2004年アメリカ:108分)

ジョエルは元恋人クレメンタインが、ラクーナ医院で特定の記憶だけを消去する施術を受けてジョエルの記憶を消したことを知り、自分も彼女の記憶を消そうと同じ施術を受ける。だが、クレメンタインを忘れたくないジョエルの深層意識は施術に反抗、自分の脳内のクレメンタインの記憶を守ろうとする。(参照:映画.com

一度終わってしまった恋愛は、みんな忘れたいものだろうか?という、恋愛が終わった後をメインに描こうとする一風変わった本作。

「特定の記憶を消すことができる技術」が確立されているというこれまた一風変わった世界設定において、過去の恋愛を人はどう扱うのかという哲学的な問いからこの話は始まります。

よく聞く言葉に「恋愛は、男は上書き保存。女は別名保存」なんてものがありますが、実際にそれが選択できるときに人間はどのするのか、本当に大切なものとは一体なんなのか?

普段はコメディ作品が多いジム・キャリーをあえてシリアスな作品の主演とすることで、その哲学的な問いを一層際立たせているように感じます。

⑧ミスター・ノーバディ(2009年フランス・ドイツ・ベルギー・カナダ合作:137分)

2092年、科学技術の進歩により不死が実現した世界で、唯一命に限りのある118歳のニモは、死を目前にして過去を回想する。最初の選択は、9歳だったニモが別れた両親のどちらについていくかで始まった……。(参照:映画.com

「あの時こうしていたら」「あの時こっちに行っていたら」誰もが思ったことのある、選択を迫られた時に仕方なく捨ててしまった別の人生。そんな人生の選択によって生じるさまざまな可能性を、複数のパラレルワールドで描くファンタジードラマ。

この作品は遠い未来の話で、不死が当たり前となった世界で最後の「寿命で死ぬことが決まっている男性」が主人公という変わった設定となっています。だけどそこはあまり重要ではなくて、その主人公が走馬灯のように回想する過去の出来事を中心に話は進んでいきます。

何が正解で、どれが間違っていたか、むしろどれが本当の人生なのか。主人公が語るいくつもの物語は次第に現実と妄想の判別がつかなくなっていきますが、この作品を通して観る人が何を感じるかに正解はないように思います。

すべてが正しく、またどれもが人生。

この作品をみんなで観て、どう感じたかを語り合う会をしてみたいものです。

さいごに|映画っておもしろい

恋愛映画はそこまで率先して観るジャンルではないので知っている作品は少ないですが、他にも好きな作品はあります。今回の8作品にピンと来た方には、是非下記作品にも手を伸ばすことをオススメします。

わたしもまだまだ映画初心者なので、オススメがあれば是非教えてください。

「アバウト・タイム 愛おしい時間について」
「ノッティングヒルの恋人」
「500日のサマー」
「さんかく」
「おと な り」

また、他にもマガジン内で下記ジャンル毎などで紹介しています。

「vol.01:どんでん返しもの編」

「vol.02:ヒューマン作品編」

「vol.04:邦画編」(後日公開)
「vol.05:ロードムービー編」(後日公開)

もし他にも紹介して欲しいジャンルがあれば、リストの中からオススメをピックアップしてみます。

この記事が参加している募集

おうち時間を工夫で楽しく

私のイチオシ

よろしければサポートいただけると嬉しいです。いただいたサポートは、大切な人のために大切に使わせていただきます。