海

連載『オスカルな女たち』

《 孤独な闘い 》・・・12

「なに?」
 特別患者に対し少々思うところ満載の操(みさお)は、なにか言いたげな表情を隠さずに、
「あぁ、なんかまた、大きな荷物が届いてたわ」
「また?」
「見舞いが来るわけでもないから、仕方ないけど…ねぇ、」
「あ~ハイハイ。じゃぁね…」
 小言が続くことを遮って立ち去る。

 談話室の先、廊下を曲がってすぐのところに〈面会謝絶〉と札のかかった少し広い病室〈家族ルーム〉がある。いつも真実(まこと)がシャワーを浴びる特別室だ。今は入院患者がいるから、院内でのシャワーはおあずけになっているが。
 ただ「ファミリー」と刻印される白紙のネームプレートを見て、2度ノックをして返事を待つ。
「どなた?」
「あたしー」
 つい語尾が伸びてしまったことに、再び舌打ちの真実。
 白紙のネームプレート様は面会謝絶の特別患者、女優の〈弥生すみれ〉こと真実のご学友である『観劇のオスカル』〈花村弥生子(やえこ)〉だ。
「どうぞ」
 まるで合言葉のようなやり取り。うんざり…とばかりに首をもたげて中に入る。

いつもお読みいただきありがとうございます とにかく今は、やり遂げることを目標にしています ご意見、ご感想などいただけましたら幸いです