頂上

連載『オスカルな女たち』

《 秘密の効用 》・・・15

(お姫様抱っこ…💛)

 赤くなってる場合ではない。だが、
「落ちますよ…」
 との、冷静な声に、
「落とさないで」
 淡々と返しながら、織瀬(おりせ)は抵抗することをやめた。

 借りてきた猫のようにおとなしく真田の肩と胸に手を添える。しばらく歩いたのち、丘の中心辺りにくると、
「どうですか?」
 そう言って真田が立ち止まった。
「すご~い…! 空しかないね」
 顔を上げて周りを見渡すと、抱きかかえられているせいか空の真ん中にいるような感覚にとらわれた。
「気に入ると思いました」
 嬉しそうに答える真田を見ると、思いのほか顔の近いことに驚く。
「あ、ぉろして…」
 急に我に返り身体が強張る。だが俯こうが、距離は変わらない。息のかかる範囲に真田の顔がある。

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