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生成AI時代におけるSEO：変わること、そして変わらないこと

田口 信元

検索体験は、近年大きな転換点を迎えています。Felo、Perplexity、ChatGPTなど、生成AIを搭載した新たな情報取得手段が台頭し、Google検索もAI概要（SGE：Search Generative Experience）の導入によって、従来の「リンク一覧をクリックして探索する」スタイルから「最初から生成された答えを得る」方向へ進みつつあります。

こうした変化は、SEOの在り方にも影響を及ぼしています。しかし、すべてが劇的に変わるわけではありません。ここでは、「生成AI時代」によってSEOがどのように変化し、どの部分が普遍的な価値を持ち続けるのかを整理します。

変わること1：表示領域とアクセス獲得のロジック

AI概要や注目スニペットによる画面占有率の拡大
これまでの検索結果は、オーガニック検索上位への表示やリスティング広告を通じてユーザーをサイトへ誘導することが定石でした。しかし、AI概要や注目スニペットがモバイル画面の75.7%、デスクトップ画面の67.1%を占めるような状況では、「ファーストビュー」でユーザーの視線やクリックを獲得する難易度が上がっています。単純に「1位表示」を目標にするだけでは不十分で、AI概要で参照される「情報源」としてのポジションをいかに確保するかが新たな課題となります。

「上位12位以内」の意味合いの変化
AI概要内で引用されるソースは、多くの場合オーガニック検索上位12位以内に入っているコンテンツが選ばれているという調査結果が出ています。このことは、従来の「1ページ目入り（=10位以内）」という指標に、新たな意味が加わりつつあることを示唆しています。上位陣に食い込む重要性は変わりませんが、その意義は「ただのクリック獲得」から「AIが参照する信頼ソースとしての地位確立」へとシフトしています。

変わること2：ユーザーとの接点の設計

ブランド露出からブランド記憶へ
生成AIが提示する回答には、ユーザーが直接クリックする導線が少ないケースも増えます。しかし、そこで引用されるブランドやコンテンツソースは、ユーザーの潜在的なブランド認知を高める重要な契機となります。SEOは従来「検索流入を増やす」ことが中心でしたが、これからは「AI回答を通じた間接的なブランド刷り込み」という新たな側面が加わります。

実例：自社のアナリティクスでも発見
実際に、弊社が運営する医療メディア「病気のQ&A」でも、流入元として「utm_source=perplexity」というトラフィックが確認されるようになりました。これは、perplexityのような生成AIベースの検索・ナレッジサービスが、弊社サイトを情報源の一つとして示していることを示唆しています。つまり、既にAIサービス経由でブランドへの関心が生まれ、アクセスに転じている実例があるのです。

utm_source=perplexity付きのリンクが表示される。

UXの再強化と構造化
よりAIが理解しやすい形で情報を整理し、E-E-A-T（Experience、Expertise、Authoritativeness、Trustworthiness）の観点から信頼性を高める必要があります。これは単なるキーワード対策ではなく、サイト全体の情報構造、専門性の明示、ユーザーエクスペリエンス向上など、多面的な改善によって「AIにとっても利用しやすい情報源」を目指す方向へ変わることを意味します。

変わらないこと1：検索自体がもつ役割

情報は常に更新され、検索バックエンドが必要
世の中には常に新しい情報が生まれ続けています。生成AIがユーザーの多様なニーズに応えるには、その最新情報をリアルタイムに取得する検索バックエンドが欠かせません。生成AI時代になったからといって、検索が消えるわけではなく、むしろ「最新情報を供給する不可欠な機能」として、裏側でその重要性を維持し続けているのです。

変わらないこと2：ユーザー価値へのフォーカス

「役立つコンテンツ」こそ不変の本質
Googleは昔から、「ユーザーにとって本当に役立つコンテンツ」を提供し続けることを強調してきました。生成AI時代になっても、この基本方針は揺るぎません。技術的な変化があろうと、「他にはない、ユーザーにとって有益な情報」を創出する姿勢が、長期的に信頼されるコンテンツやブランドを生み出します。

戦略的な基盤づくりの重要性
SEOは常に事業戦略の一環であり、決して「小手先のテクニック」だけで戦うものではありません。事業構造、プロダクト設計、ユーザー理解があってこそ、SEO施策は本質的な意味を持ちます。他社のベストプラクティスをなぞるだけでなく、自社のビジョン、強み、価値観に根ざしたコンテンツ戦略を展開する必要があります。この根底に流れる思想も、変わらぬ原則といえます。

変わらないこと3：信頼と専門性の醸成

独自性と専門性はオーガニックでもAIでも強み
生成AIが回答を統合するにあたり、単なる情報の寄せ集めではなく、専門性と独自性がより重要になっていきます。これは、従来のSEOが目指していた「オリジナルかつ信頼できるコンテンツ」の方向性と重なります。専門的な見解やオリジナルデータ、深い洞察があれば、AIからも「参照すべき情報源」として評価されやすくなるでしょう。

長期的な価値積み上げ
長期的な価値の積み上げは、生成AI時代になっても揺らぐことはありません。SEOは一朝一夕のテクニックではなく、継続的な努力によってブランド価値を高める長期戦です。これまで培ってきたSEO資産は、そのままAIによる引用が発生しやすい“信頼のベース”へと転換できます。つまり、過去の積み重ねが、これからのAI時代においても引き続き有効に働くのです。

一度自社メディアをチェックしてみましょう

ここまでの変化と不変性を踏まえ、一度自社メディアがどの程度「AIフレンドリー」になっているか、アクセス解析やログを確認することをおすすめします。

  • すでにutm_sourceが「perplexity」など生成AI由来のトラフィックが発生していないか？

  • 自社ブランドがAI概要で引用されている可能性はないか？

  • ユーザーがどのようなクエリから、どのデバイスで流入しているか？

これらを確認することで、自社コンテンツが生成AIによる参照にどの程度応えられているかを把握し、今後のコンテンツ戦略やSEO施策へとフィードバックできます。

まとめ：変化を受け入れつつ、本質を守る

生成AI時代におけるSEOは、ユーザーの検索行動や画面上の優先度が変化し、オーガニック上位表示の価値やコンテンツ参照の仕組みも進化しています。一方で、「ユーザーに有益な情報を届ける」という普遍的な価値観や、事業戦略・ユーザー理解に基づく本質的な取り組みが依然として核心を成しています。

つまり、テクノロジーの進化とともに求められる対応策は増えますが、根底にある「ユーザー中心の価値提供」という哲学は不変です。SEOは生成AI時代になっても、事業成長に貢献する強力な「How」として、その本質的な意義を失うことはありません。

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