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知らないままでも時間は過ぎる②

 ホラー映画を4Dで観たことがある。

 4Dは映像に合わせて椅子がいろんな角度に動いたり、水、風、香り、振動など、アトラ クションさながらに映像体験が楽しめる。 

 その日は直前に他の映画を見ていて飲み物を持っていたが、4D上映では揺れや振動によって溢れる可能性があると思い、慌てて一気に飲みながら席に向かうと2つ後ろの席の人は普通に飲み物とポップコーンを持って座っていた。もしかしたらそんなに気にしなくてよかったのかもしれない。 

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 上映中は、天井を見上げるシーンでは椅子がリクライニングシートのように上を向いたり、風が吹き荒れるシーンでは風が顔に吹き付けられたりと、常に映像に合わせて何かし らのアクションがあった。

 最初は(すげえ...!)と思っていたが、天井を見上げるだけでいちいち動いたり、風が吹き付けるシーンでは目が乾いて映像が見えなかったりと、気が散って映画に集中出来なくなっていたのだ。

 花がうつるシーンでは「シュー...」という音と共に花の匂いが漂ってきた。何の花を忠実に再現しているのかわからないがいい匂いではない、というかむしろ臭かった。ついつい違う事を考えてしまう。

 続いて部屋がガタガタと揺れるシーンになると連動して椅子が揺れ始めた。すると後ろの方からガサガサッという音が聞こえた。(ん?今の音は映画の方の音か?)と思い色々考えていると、ハッとなった。おそらく後ろの人が揺れた勢いでポップコーンをこぼしたのだ。 やっぱり飲食物はない方が良かったのだ。

 最後のシーンでは、主人公が病室でカーテンを閉めた状態で、ベットの上でガタガタと震えながらうずくまっていて、その周りをカーテンに写った人影がものすごい速さで駆け回り、恐怖と緊張がピークに達したところで「ドン!」という音と共に、椅子の背もたれから背中に衝撃を与えられた。映像ではおそらく貞子の恐ろしい表情が出てきていたのだが、背中に食らった衝撃に思わず怯んで下を向いてしまい、顔を上げてスクリーンを見たときにはエンドロールが始まっていた。

 この日の帰り僕は、4Dで観れる映画は先に通常の上映を観た方がいいなと思った。 

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