【開催報告】学スタKokoro&ルーの台湾&中国生活でみたジェンダー・セクシュアリティISSUES(2021/07/02)
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【開催報告】学スタKokoro&ルーの台湾&中国生活でみたジェンダー・セクシュアリティISSUES(2021/07/02)

早稲田大学GSセンター

皆さんこんにちは!学生スタッフのKokoroです。

今回は、7/2(金)に開催したオンラインイベント「学スタKokoro & ルーの台湾&中国生活でみたジェンダー・セクシュアリティISSUES」の様子を報告していきます。

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1.イベント概要

同志” この言葉を聞いて、皆さんはどんな意味を想像しますか?
日本で用いられている漢字の意味から推測すれば、「志を同じくする仲間」「同じ理想や目的を共有する人」などと言う意味を想像するかもしれません。
しかし、この“同志”(tóngzhì:トンジィ)という言葉、実は中国語圏の社会において「同性愛者」または広義の意味で性的マイノリティにあたる人々を指す言葉として用いられています。言語に内包されているポジティブな意味(仲間)をあえて使用することで、スティグマ化の解消の意図があるそうです。
この度G Sセンターに新しく迎えた中国出身の学スタルーさんと、台湾で生活経験のある私(Kokoro)で、ある日そんな話で盛り上がり、せっかくなので「あまり注目される機会の少ないアジア、その中でも今回は中国・台湾について経験を共有できる場を作ろう」とイベント化することになりました😊


同じ東アジアという視座を共有していると言えども、文化によって固有のものがあるジェンダーセクシュアリティの問題。今回のイベントでは、私たちの台湾と中国の生活におけるジェンダー・セクシュアリティに関する発見や驚いたことなどをいくつか皆さんと共有させていただきました。慣れ親しんできた文化を改めて見つめたり、その文脈においてこそ特有の文化の発展の仕方があることを考えたりする機会になっていれば幸いです!
少々長めのnoteになりますが、お付き合いいただけると嬉しいです💭

2.イベントコンテンツ

■台湾パート

① 景観に溶け込んだレインボー

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まず初めに、私が台湾大学やその周辺に足を踏み入れて印象的だったこととして、街の景観にLGBTQ +のAllyであることを表明するために用いられる「レインボー」がすっかり溶け込んでいた様子を紹介しました。台湾大学の学生の多くは自転車で登校してくるのですが、そのハンドルやリュックサックには、レインボーのリボンがくくりつけてあったり、飲食店や本屋さんにレインボーフラッグや「婚姻平等」と書かれたスティッカーが貼られてあったりするところが少なくなく、驚いたのを覚えています。アジア最大級といわれる台湾のプライドパレードで用いられている標語(上掲右下:2020年は成人之美,論語からとられたものでした)の固有性についても他国と比較しながらお話しました。

② 葉永鋕事件

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次に、ジェンダーやセクシュアリティに関する問題を自分ごと化するに至った過程について、あらゆる現地の学生に話を聞いた際に、例えばひまわり学生運動同性婚の法制化など個人によって差はあったものの、どの学生からも共通して挙げられたある事件について言及しました。2000年に、当時中学3年生であった葉永鋕が授業中にトイレで倒れ、頭を打って亡くなっているのが発見された痛ましい事件です。性表現を理由に学校でいじめにあっていた葉永鋕は、授業中の誰もいない時間にしかトイレに行けなくなっており、それまでもトイレに行こうとすると極度の緊張で失神して倒れてしまうことがあったと言います。この事件から、偏見や差別、内在化された本質主義的思考がどのように人を殺してしまえるか、ということを世間が痛感し、それ以降台湾の各界が急速にジェンダーやセクシュアリティに関する反省を始めました。特筆すべき点では、上掲の二元的な性(男/女)から外れるあり方への認識の高まりから法制度において「男女」の代わりに「性別」という言葉が用いられるようになったこと、性別平等教育法が制定されたこと、そしてこの事件を記録したものが全国の学校の教育素材として導入されたりしたことなどがあります。私がインタビューをした学生からも、学校でこの事件について学んだことや毎年行われる追悼が心に刻まれているという話を聞きました。

③ オールジェンダートイレ(性別友善廁所)

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台湾で導入が進んでいるオールジェンダートイレの特徴とその経緯についてもお話しました。台湾では、女子トイレの混雑問題をひき起こしているその空間設計や数量不足に対して台湾大学の女子学生が是正を求めた1996年の「五四女廁運動」をきっかけに、トイレに関する議論が出立し、また前述の薔薇の少年事件がその推進力となって政府主体のオールジェンダートイレ導入が普及されつつあります。台湾で設計されているオールジェンダートイレは、男子トイレ・女子トイレの隣に1つあるようなタイプのものではなく、オールジェンダートイレとして確立された中に複数の異なるタイプの個別トイレが含まれているようなものでした。上掲の画像に記した主な4つのメリット(出典:台湾大学)が期待されています。早稲田大学にも「だれでもトイレ」が導入されていますが、各場所に1つであったりまだ隔離されたものであるように感じられたりするため、男子/女子トイレの利用が心地よく感じられない人でも「車椅子を利用する人を優先すべきではないかと気になる」という声や、「利用を他者に見られることで性自認について推測されないか不安で使えていない」という声が聞かれました。トイレの問題に限らず、大学生活を送る上でジェンダーやセクシュアリティ全般に関する困りごとや「こういう選択肢があったら…」というものがあれば、些細なことでも、ぜひGSセンターにアクセスしていただけると嬉しいです!

④ 生理用品のデザイン

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生理用品というと、パステルカラーで花柄で…フェミニンな要素が強いものであるというイメージが無意識のうちにあった私は、台湾に行った初めの頃は上掲の写真のものが、頻繁に目にするものの、生理用品であることに気がつかず、そのパッケージデザインからてっきりウェットティッシュとか汗拭きシートだと思っていました。写真のものは、外にボタンがついており、ほとんどがそのまま持ち運べる小さなサイズで、2つで99元というものが多かったです。気候柄に起因してか、ナプキンの表面に清涼感のあるハッカが塗られたものや漢方が含まれたものもしばしば目にしました。機能性だけでなく、実際に使う前後の体験まで考慮されていたり、デザインの選べる選択肢に幅があったりする点が特異的だと私は感じました。また、大学のオリエンテーションにて、生理がある人は、生理休暇を月に一回取れるから必要があれば積極的に利用するようにアナウンスがあったことも印象に残っています。

⑤ 2019年に同性婚が認められてから2年が経って

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台湾はアジアで初めて同性婚が認められたことでも知られていますが、成立から2年経った今日ではどのような議論がなされているのかについて、6月13日に台湾高雄市女性權利促進會主催で行われた報告会に参加して聞いてきた話を基に、最後にお話しました。主に3点、国際結婚(現在台湾では同性婚が認められていない国の相手との結婚が認められていないこと、その人の国籍をどう規定していくか)・養子縁組(同性カップルの養子受け入れはできないのが現状、婚姻を結ぶ前に自らが生んだ子供であれば育てられるがパートナーとその子供間には親子関係が認められない=家族として育てることはできない)・人工生殖(人工生殖をどの範囲まで認めていくか)が問題となっており、現在政府主導で議論が行われていることを紹介しました。


■中国パート

① 中国のクィアコミュニティ

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ルーさんからは、はじめに中国のクィアコミュニティの特徴についての紹介がありました!ルーさんの実感としては、中国ではインターネットを拠点としてコミュニティが築かれているのが特徴にあるようです。特に、S N Sの微博weiboや映画のレビューが投稿される“豆瓣”というサイトがその主流となっています。それらのサイトには、Facebookやかつてあったmixiに代表されるような掲示板方式のグループチャット機能があり、セクシュアルマイノリティのための大きなグループが活発に動いています。主には、カミングアウトや恋愛に関する相談をし合ったり、友達作りをしたりということが目的となっているようです。

② ゲイカルチャー

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次に、ゲイ文化についての紹介がありました。その中には、ゲイ同士で互いを「姉」「妹」と呼び合う、というものや『宮廷の諍い女』に登場する女性たちに特有の言葉遣いが用いられるといったものがありました。ルーさんの考察によると、こうした風潮の背景には、中国の強い家父長制、特に兄弟のヒエラルキー規範があり、そこから抜け出そうとする意図があるのではないか、とのことでした。また、それに加えて、同性愛が流氓罪という犯罪であった歴史などについてもお話してもらいました。ルーさんが中国から聞いた中国の話にはとても新鮮なエピソードや発見が多く、その文化の、その文脈でこそ発展していく方向や性質の違いについて自覚的でありたいなと改めて感じました。


③文化間のステレオタイプについて (殖民性凝視)

最後に、昨年日本でのみ公開されたドキュメンタリー映画、中国房満満監督による『出櫃(カミングアウト)-中国LGBTの叫び-』とそれについて文化間の“植民的眼差し(凝視)”の観点から批判的に書かれた文献を引用して、文化間のステレオタイプによって生じうる問題について、考えたい点を皆さんと共有しました。ジェンダー平等ランキングって話題になるけれど、単なるエスノセントリズムに形づけられる競争に終結したものになっていないか?西洋からアジアへ、日本から他のアジア諸国へ、Male gazeならぬ植民的眼差しがないかどうか、あるとしたらそれどんなものでどんな問題があるか?そういった問いを参加者の皆さんと共有して本イベントのお開きとさせていただきました。


3.学スタ後記

当日参加してくださった皆さん、そしてここまで読んでくださった皆さん、ありがとうございます!今回のイベントでは、中国と台湾での経験を共有させていただくことを意図していましたが、そこには文化を比較することによって新たなステレオタイプや優劣のイメージづけにつながってしまうのではないかという懸念も個人的にはありました。そこで、最後に文化間の眼差しに関するパートを入れさせてもらいました。参加者の皆さんからは、「人権問題や不平等の問題に関して、あの国よりも~という国ごとの競争に利用されていないか考えねばならない 」「脱亜入欧的な考えや西洋=優れているという考えが内在化されていたことに気づけた 」「台湾や中国以外のアジアの地域のこともぜひ知っていきたい」という声をいただきました。そして、参加してくださった皆さんとの議論を通じて、私自身も改めて問題のインターセクショナリティや既存の規範について、再考する機会を得ることができ、大変勉強になりました。自分と、その延長線にある文化や規範について違うレンズを通して見つめ直したりすることにつながるような企画を今後もやっていけたらなと思っているので、ぜひまた気軽にイベントに顔を出していただけると嬉しいです!改めてありがとうございました。


Works Cited

・台湾内政部建築研究所、性別友善廁所設計手冊之研究(105年) https://ws.moi.gov.tw/Download.ashx?u=LzAwMS9VcGxvYWQvT2xkRmlsZV9BYnJpX0dvdi9yZXNlYXJjaC8yNTcxLzE0ODY2OTc4OTh4ZWE3MjAucGRm&n=MDLmgKfliKXlj4vlloTlu4HmiYDoqK3oqIjmiYvlhorkuYvnoJTnqbYt5oiQ5p6c5aCx5ZGKKOimj%2BWumuagvOW8j%2BeJiCkoMTA2MDEyM%2BS%2FrikgKDEpLnBkZg%3D%3D
・台湾教育部、性別平等教育法施行細則 https://law.moj.gov.tw/LawClass/LawAll.aspx?PCode=H0080068
・ドキュメンタリー映画『出櫃(カミングアウト)』公式サイト http://www.pan-dora.co.jp/comingout/
・走出了柜子是否就走进了阳光:从纪录电影《出柜》(2019)看出柜政治与出柜经验 Out Of The Closet And Into The Sun?: The Politics And Experiences Of Coming Out In Coming Out (2019) https://www.chinaindiefilm.org/wp-content/uploads/2021/04/CICO-No01.pdf  p244-252
Thank you sooooooo much! Love ya!!
早稲田大学GSセンター