高校生が考える、起業の「そもそも」| #ENTRE_CAMP プレイベント開催
こんにちは。
ジーズアカデミー福岡の後藤です。
ジーズアカデミーは独自のスタートアップエコシステムを形成し、2015年から社会人向けに起業家・エンジニア育成プログラムを提供してきました。
卒業生の起業実績は2024年7月時点で108社、資金調達金額は139億円を超え、直近ではTokyo Innovation Base “STUDIO” (TiB STUDIO)の支援事業者として採択されるなど、各地で起業家育成を支援しています。
2024年夏、私たちがこれまで培ってきたノウハウを高校生向けにカスタマイズし、3日間で起業アイデアを作り出すワークショップ「ENTRE CAMP(読み:アントレキャンプ)」として開催します。
開催の背景について、詳しくは下記をご覧いただければと思いますが、『身近に起業家がおらず、将来は就職することしか考えられていない』『学校の探求だけでは足りない』『他の学校でもいいから自分と同じような人と繋がりたい』そんな生徒たちに、自分の人生を自分で考え、選び、行動できるようになればいいのに・・・そんな想いを持った現役の高等学校教諭と、ジーズアカデミーがタッグを組み、実現した取り組みです。
8月のキャンプ開催に先立ち、はじめて「起業」について考える高校生・保護者・教諭のみなさんに向けて、起業の「そもそも」をシェアする起業家とのミートアップイベントを開催しました。
ご登壇いただいたのは、共育パレット株式会社代表取締役の松下ゆか理さん(@yukari_tomoiku)、EsY株式会社代表取締役の今泉ひかりさん(@tsuna_2727)、Eletus株式会社CEOの園田雅敏さん(@masatoshi9491)です。
※本記事は、2024年7月15日に開催された起業家とのミートアップイベント「起業家精神ってなんだろう?」の一部を抜粋したイベントレポートです。
人生に「起業」という選択肢を
——人生の幸せに必要なこととは?
本イベントでは、アントレキャンプの立役者であり、福岡県内の高等学校で教鞭を執る宮地先生(@EliseTaisuke)がファシリテーターを務めました。
宮地先生(以下、宮地) 改めて、なぜこのアントレキャンプを企画したかと言うと、みなさんの人生に「起業」という選択肢を入れたいと思ったからです。
絶対起業してほしい、起業家こそ良い仕事だ、ということではなく、あくまで「選択肢を広げて、その中から選べる状態をつくりたい」「起業家というロールモデルを知ってもらいたい」と思って企画しました。
なぜ起業、ひいては起業家精神が大事だと思うのか。みなさんに幸せな人生を送ってほしいからです。
人によって幸せの感じ方は違いますが、例えば、東大を始め、難関な大学に入れたら幸せは約束されているのでしょうか?有名企業や大企業に就職できれば十分な幸せを感じられるでしょうか?所属する場所や名前、肩書きによって幸せは決まらないと思います。
では何が人生にとって幸せなのか?
私は「オーナーシップ」を持っていることだと考えています。自らの人生に責任を持ち、自ら決断し、行動できる、この精神を持っている状態です。
この精神を持っている人は必ず幸せになれるだろうし、そうじゃなければ難しいだろうと思います。
なぜオーナーシップがあると幸せになれるのか?
みなさんで考えてみましょう。
——なぜ幸せに繋がるのか?
宮地 みなさんの同級生、何人いますか?
今の高校1年生は2006年生まれです。この年に国内で生まれた人は約109万人です。私と同級生にあたる1976年生まれは約183万人でした。
宮地 この数字から考えられる影響はどんなものがあるでしょうか?
みなさんの関心事から考えると、「大学に受かりやすい」というメリットはあるかもしれませんね。
スイッチを押すと電気がつく、蛇口をひねると水が出る、コンビニに行くとごはんが買える。身の回りの生活にはたくさんの人が関わって支えていますよね。
宮地 我々も年を取って引退する時が来ます。その代わりみなさんが勉強して成長して社会人になり、社会活動が維持されていきます。
我々183万人が引退して、109万人が入ってくる。かなり人が足りていませんよね?
いまの段階で人が余っている、という状況であれば良いですが、連日テレビで報道されているように、人手不足は深刻です。
ちなみに2023年度の出生数、覚えていますか?72万人です。
ここで何が言いたいかというと、間違いなくこれから社会は変わります。先ほどのインフラが維持できるかと言うと、そう簡単にはいかないと思います。
社会が変わる、職業や求められる能力も変わる。
イノベーションを起こせる人にならなくてはいけない。
宮地 ちょっと前までの僕ら教員の役割は、いかに未来を予測させて、それにふさわしい能力を身に着けさせるか、というのが教育だと思っていました。でもそれが適わない時代になってきていると思います。変化が予測できないんですね。
社会が変わると、いま存在しない職業が生まれる可能性もありますし、いまある職業がなくなるかもしれません。社会が変われば求められる能力は変わっていきます。
——大学や職業では幸せは決まらない。
宮地 お医者さんを例にとって考えてみましょう。
患者さんの言葉やデータを見聞きして、症状と訴えとデータを結び付けながら診療する論理力と、日々進歩する医学についていく膨大な記憶力が必要でしょう。だからこそ医学部は大変なんですね。
しかしこの社会、ひょっとしたら変わりませんか?
最近、AIが開発されています。このデータをAIに読ませて、患者の訴えを入力したら、人間よりも正確な診断ができると思いませんか?倫理的な問題などで実用されていないだけで、もうすでにどこかで検証されているかもしれません。もしそんな世界になったら、医師に求められる能力は変わってくると思いませんか?
患者さんに安心してもらって、自分の症状を話してもらう。これはAIには出来ないと思います。何となく自分のことを喋ってしまう、みたいな能力が必要になってくるんじゃないかと思います。
医学部を目指して頑張って勉強している同級生がいると思います。頑張って努力して医学部に受かり、6年間ものすごい勉強をして、やっと医師として「今から活躍するぞ」となったときに、コミュニケーション能力が求められたらどうでしょう?
すぐ発揮できる人もいると思いますが、コミュニケーション力は、どちらかというと学校の外、コミュニティ活動やサークル、婚活みたいな場所で場数をこなして身につくものですよね。
大学とか会社とかでは幸せは決まらない。だからオーナーシップが大事だと思います。自分の人生に責任を持って、自分で決めて、自分で行動できる力。
学校でオーナーシップの教育が十分行われているかというと、福岡で十分行われていると思えないので、こういう機会を企画しました。
そして今日、なぜ起業家とのミートアップを用意したのかというと、起業家の方々は間違いなくオーナーシップを持っているからです。自分の想いがあったり、解決したい課題に向かって実際に動いていたり。オーナーシップ無しには絶対そういう行動は取れないんですね。
起業家と、「なんでそこに課題を持っているのか」「どうしてこんな行動を取っているんだろう」ということは知ってもらうのは良い経験だと思うので、ミートアップを設定しました。
ですが、今日の話を受け身で聞くのはあまり意味がないので、主体的に参加してもらうために、ワークショップ形式で進めていきます。
「起業家に聞いてみたいこと」を付箋に書いてホワイトボードに貼っていきましょう。ここで大事なことは、良い質問をしよう、きれいな文字で書こう、などは気にせず、2分間で思いついた質問をできるだけたくさん書いていきましょう!
起業家への質問
——なぜ一般企業ではなく起業家へ?
共育パレット松下さん(以下、松下) 私は元々15年小学校教員として勤めてきたんですが、現役時代から「公教育」をなんとかしたいと思っていました。
稼げそうとか稼ぎたいという想いは全くなくて、それ以上に公教育の課題を抱えたまま安定した公務員をやっていることに罪悪感があって、このまま続けていくのは無理だなと思い、公務員を捨てて飛び出しました。
現在は、忙しい先生方の時短になるよう、“先生応援” をモットーにSNS発信や出前授業サポートをしています。
松下 教員時代から自分がほしいと思っていたサービスを自分でプログラミングを勉強して形にして、それを他の先生たちにも見せてアンケート取ってみると、97%の人が『欲しい』と回答してくれて、それで起業に挑戦してみようかなと思いました。
世の中に無いサービスだけど、欲しい先生はたくさんいるので、だったら自分で作ってみよう、無いなら作ればいいと考えて動いてきた結果、起業という道に進んでいました。
EsY今泉さん(以下、今泉) 自分自身の体調不良が2年くらい続いて、病院に通ったり薬を飲んでいた時期があり、改善していきたいと思っていました。知り合いのママ友に聞いて、みんなが必要としているものだという実感はあり、女性のライフサイクルに寄り添うものをつくりたいと思っていました。
時々、“旦那さんが稼いでいるからできるんだよね”って言われることもあるんですけど、我が家の場合はお財布はすべて半分半分で、自分の分はぜんぶ自分で出すという感じにしています。自分の人生だから、夫に気を遣って自分のやりたいことをやらないという選択はしたくないからです。
だから子育て中だけど、ちゃんと子供も育てながら自分の取れるリスクの範囲でやることで、夫に甘えない環境を作りながら創業しました。
今泉 女性の活躍を応援している企業も世の中にはあるけど、自分が会社員時代、子育てと仕事のバランスが取れない、という悩みがあったので『100円でも1000円でも自分で稼げるようになろう』と思って会社員を辞めて、自分の事業家としてのしっぽを掴みに行くためにプログラミングを学びました。
それから体調不良が悪化して療養期間があったんですが、その経験のおかげで融資も引いて、自己資金も投下してまで人生かけてやりたい事業が見つかったので、いまは充実しているし「早くこの事業を伸ばしたい」という気持ちです。
Eletus園田さん(以下、園田) 僕は2001年生まれの22歳で、中学生の頃から起業に憧れがありました。そんなこと言うと、「身内に商売している人がいるからだよね」と思われるんですがそんな人はいなくて、両親とも専門学校卒業のサラリーマンと看護師です。
中学校の時に歴史が好きだったので偉人の伝記とかを読んでいたんですけど、そこでスティーブ・ジョブズの特集をみて、面白そうだなと思っていました。
ただ起業はあくまで目的ではなく手段の一つなので、なにかやりたいことがあればいつかやろうと思っていました。それが大学時代に、「世界と比べると日本人の学習量が足りてない」という学習領域の課題を感じて、それをテクノロジーを使って解決したいと思って起業することにしました。
——稼ぎはどうですか?
園田 去年5月に会社を立ち上げて、いまは二本柱で収益を立てています。一つは高校生から大学生、社会人向けにAIやデザイン、歴史などの講座事業をやっています。
もう一つはAIを使った学習アプリの開発事業をやっていて、企業の研修や学校現場で使ってもらっています。この2つの事業でなんとか収入は安定できていて、ひとりで食べていける分にはなってきたかな、というところです。
今泉 自分がどれだけ事業にコミットして伸ばしていけるか次第で稼ぎも変わると思います。
私は物販なので初期投資がかかるものなので、自己資金と融資を合わせてモノを作って、売れた分が収益になるという感じです。家族が食べていく分は収益があるので、今後は人を雇用して事業を伸ばしていこうとしています。
松下 創業から1年ちょっとですが、立ちはだかる壁は大きいし、稼げるかと言えば稼げていません。でも「公教育をなんとかしたい」想いで毎日取り組めていることに満足はしています。
私の場合、教員向けに発信しているコンテンツで稼ごうと思えば稼げるかもしれません。でもそこで稼いでも本来解決したい課題が改善されるわけではないので、今は儲けはないけど公教育を変えるために(取り組んでいます)。
——高校生に戻れたら?
園田 大きく3つあって、まずは「めちゃくちゃ人に会う」と思います。“学生ブランド”はやっぱりあると思っていて、高校生が会いに来た、大学生が会いに来た、となるとみなさん会ってくれやすいです。
僕の場合は高校生の頃に、立命館アジア太平洋大学学長の出口 治明さん(現在は退任)に会いに行ったことがあって、それをもっと広くやっておけばよかったなと思います。
あとは、AIをはじめテクノロジーがめちゃくちゃ発達しているので「最新技術に触れておく」のはおすすめです。やっぱり若い人の方が新しいことを吸収したり使いこなしたりできると思うので、「こんな使い方できるんだ!」とか「こういう使い方すると面白いことできそう!」みたいな感じで触ってみるといいと思います。
もう一つは、「青春すること」ですかね(笑)。同じ地域に住んでいる同世代の人とコミュニティで過ごすって大人になると減っていくので、恋愛するでもいいし遊ぶでもいいし、そういうのもすごく貴重な経験だと思うので、高校生活も楽しみつつ、プラスαでそういう活動をすると良いと思いますね。
今泉 私も「人に会う」をめちゃめちゃやると思います。X(旧Twitter)でDM送ったら普通に返信が来ることがあるんですよね。それで有名な起業家の方に事業の壁打ちをやってもらったことがあるんですが、自分の思い込みで「できない」と思っているだけで、行動すれば意外とできることもあります。
もう一つは「いろんな場所に行く」と思います。そのためにお金が必要なので、1円でも100円でも稼ぐことをやります。私も高校生の頃は、自分の洋服をリメイクして販売していたりするんですけど、そういうのって今だとメルカリとかでも出来るんですよね。
そういうことを小さくてもいいから親のスネをかじれる状態だから、なんでもいいから色々挑戦してみることをやるかなと思いました。
松下 用意していたことをお二人が言ってしまったので何を話せばいいですかね(笑)。敢えて違うことを言うとしたら、「人と話す」ということと「ハテナを問い続けること」かなと思います。
私からアプローチして人に会うことが多いんですけど、最近は私のことを知った方から連絡が来て会うことも増えてきました。それでお互い時間を作って会うんですけど、「あれ、この方が話したいことって○○の事じゃなかったっけ?」と思うことがあるんです。
色んな人に自分が思っていることや考えていることを話す経験をいっぱいすればするほど、ものすごい大きなチャンスが来たときに、本当に自分の想い話せたり、ハテナを問いかけたりすることが出来ると思います。
人に会うの、めっちゃ大事!だからこそ会ったチャンスをモノにするために自分がどれだけ対話できるか、いろんな人に話せるスキル、そしていろんな情報を引き出せるハテナ、質問力を高めておくことが大事かなぁと思っています。
——本日はありがとうございました!
3日間の起業体験ワークショップ、8月開催!
数々の起業家育成支援を誇ってきたジーズアカデミーと、現役高等学校教諭がタッグを組み、新たな挑戦として始めた「ENTRE CAMP(読み:アントレキャンプ)」。
現在、参加したい高校生を募集中です。
3日間のワークショップでは、自身の原体験と向き合い「自分ごとの課題」を解決するため参加者同士がチームとなって、顧客へのヒアリングや仮説検証などを実際の起業家のメンタリングを受けながら行っていきます。
最終成果物として起業家の前で事業アイデアを発表するまでをプログラムとし、参加する学生は自分たちが地域に何ができるか、世界をどう良くできるか、地球にとって何ができるかなどを自由に発想してもらいます。
ワークショップ概要
日程:2024年8月16日(金)、17日(土)、18日(日)10:00~17:00
定員:30名
参加費用:5,500円 (税込)
参加資格:① 2024年度時点で16歳~18歳の方 ※学校不問
② 3日間全て会場でご参加可能な方
申込:こちらのフォームからエントリーください
締切:2024年7月31日(水)まで
会場:G’s ACADEMY FUKUOKA (ジーズアカデミー福岡)
〒810-0041 福岡県福岡市中央区大名 1-3-41 プリオ大名 1F
備考:ワークショップではノートPCまたはタブレットを使用します。各自でご持参ください。
問い合わせ先
運営:ジーズアカデミー福岡
担当:後藤(ごとう)
メール:fukuoka@gsacademy.jp
電話番号:092-761-5777
※教員やメディアの方からのお問い合わせも受け付けます。
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