映画 『影裏』~ラストについて~
見出し画像

映画 『影裏』~ラストについて~

狭間

今野(綾野剛),日浅(松田龍平)

個人的には両想いであってほしいという気持ちがあるが、ラストの解釈を考える中で今野の片想いに終わっているようにも見える。

○ラストの解釈

1,日浅の遠いプロポーズ
2.存在を再確認

○原作を頭に入れながら
○ちょいと違うお話 ~日浅の死について~

1,日浅の遠いプロポーズ


   約1年交流をしていった中で、今野に恋人や別段親しい友人がいないことは日浅も分かっているだろう。 そんな今野にブライダルの契約の方を勧めるのだろうか。 30代と、機会があればいつ結婚しても不思議ではないことは確実である。しかし、今野の状況を見ると葬儀プランの方を勧めてもおかしくはない。 (ただ、日浅との再会時にブライダルプランについて話していたため、ブライダルの契約を交わしたと考えることも出来る。)

この遠いプロポーズ説を押す理由は、今野が日浅にキスをした(しようとした?)日の後に、日浅が契約にきたからである。

まず、友人だと思っていた人にキスをさせられそうになった後、ほぼ同じ対応を日浅がとっている時点で、今野と日浅の間に大きな隔たりが作られていないことが分かる。

また、いつもなら玄関のチャイムを何度も鳴らして今野の家を訪ねるが、契約を頼む時は今野がドアを開けるのを待っているのだ。

そして、ドアが開くのを待っている時に吸われた煙草。チャイムを鳴らす前の緊張をほぐす一服には、数が多い。西山さん(パートの女性)の前に飛び出してきた時とは違っている。

仕事目的として訪ねたが、いつもは入り浸る日浅が、契約後あっさりと帰ってしまうのも気になる。また、契約内容にしっかり今野が目を通しているか怪しい。日浅の指示に気づかせないようにとも捉えられる。

 これらのことから、今野にブライダルプランを契約させていたのは、遠回しのプロポーズだと考えた。
   

2.存在を再確認

東日本大震災が起こり、西山さんに「課長、死んじゃったかもしれないよ」と言われ、どうにか日浅の情報が掴めないか彷徨う今野。しかし、どこに行けども、いい情報は得られない。

日浅の父、兄は、捜索届を出さないものの、日浅は生きているだろうと言っていた。

そんな存在が曖昧になってしまった日浅だったが、契約変更の書類に書かれた『日浅典博』が、今野にとって日浅が幻ではなく実際に存在している(していた)ことを示す唯一の証拠なのではないだろうか。

いなくなったと思えば、ふらっと帰ってきた日浅。自然が見せる季節の移り変わりの儚さのように、日浅は掴むことの出来ない存在であったのは確かである。

○原作を頭に入れながら

 原作中ではラストの描写やキスを迫るシーンがない。そのため、より映画の曖昧な終わり方にずっと浸っているところがある。
 原作で、日浅は「不器用なのか、一人の人間としか付き合わない」と書かれていた。これは友人間の話であるが、日浅はとある一人とずっと行動を共にしていたと思ったら、ある日から違う人のずっと一緒にいるという。
  これを頭に入れ、映画の今野と日浅の関係を見ていくと、「知り合いのいない土地で若干浮きつつある者」×「特に代わり映えのない、平凡な日々を送る者」となる。 この二人が仲良くなるのにはそう時間はかからない。 また、場合によっては恋に発展することもあるだろう。

○ちょいと違うお話 ~日浅の死について~

 これは原作×映画というか、まぁ原作からなのですが、山火事や倒木に魅力を感じる日浅が、波が来た時に逃げるかと言われれば、逃げないだろう。彼はその壮大さに目を奪われ、動くことができなかったのだろうと考えられる。


終わりがやや雑になってしまったが、映画オリジナルな部分が多かったため、この作品は余韻が残る作品で様々な解釈を生み出す映画だと感じた。
 ふらっと、何となく見た作品だが、こんなにも楽しめるとは思っていなかったため、出逢えてよかった。
 原作も読みやすいページ数なので、読んで欲しい。


この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?
気軽にクリエイターの支援と、記事のオススメができます!
狭間
映画、小説、漫画 思ったことを