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HELLO,DESIGN 日本人とデザイン 石川俊祐著

学校が休みの間に読むべき本の紹介vol.18

最近はやりの「デザイン思考」っていう言葉。”デザイン”も”思考”もわりとなじみのある言葉なんだけど、二つが合わさるとうまく説明できないものになる。

でも今の時代には「デザイン思考」がとっても大事で、GoogleでもAmazonでもその界隈では「デザイン思考」ができる奴が活躍してるってことらしい。

この本は「デザイン思考」なんてよくわからないし、雲の上で頑張ってる人たちに必要なスキルらしいから自分と関係ないなんて思っている人がむしろ読むべき本だ。そして、これから誰もが多かれ少なかれデザイナーとしての役割を果たすことができるかどうかが問われる時代が来ているとしたら、高校生や大学生は目の前の学びが「デザイン思考」を身に着けるためのものか否かによって、取り組み方が変わってくるはず。
もっと言えば、いくつになったとしても「デザイン思考」を手に入れようとしているかどうかが若さの証明であるともいえるのかもしれない。

本の帯にも書いてあるんだけど著者の石川俊祐氏が言うには、
「デザイン」はみんなのものだ。
「デザイン」は絵がうまいこと、センスがいいことではない。
「デザイン」はおもてなし。
「デザイン」は暑い日に配達に来た郵便屋さんに、氷水を差し出すこと。
なんだって。

なるほど、そうか!ってこの時点でなる人はそもそもすでに「デザイン思考」ができる人。私も含めこれだけではわからない。この地点から本書を読み進めていくとなかなか楽しく読み進めていくことができるだろう。

本書は、デザインとは何か?デザイン思考とはいかなるものか?について著者が関わってきたプロジェクトでの経験をもとに書かれている。こうした問いに対する彼の仮説や実践のためのノウハウなどがバランスよく軽快な文章で書かれており、読みやすい。特別に特別なことが書かれているわけではないからこそ、大きな気づきが得られるのではないだろうか。

ここで私が面白いと感じた内容について二つほど触れておこう。
ひとつは「アート」と「デザイン」の違いについての考察のところ。この二つの言葉は使い分けが結構曖昧だったりする。アーティストとデザイナーは確かに違う職業だけど、似たようなことをしていることもある。著者が言うようにアートとは自己表現でありアーティストの内側から湧き出る衝動やインスピレーションをさまざまなメディアに具現化したもの、デザインとは他者(社会)の課題や願望を読み解きあるべき姿をかたちにすることというこなのだ。つまり内発的か外発的かという違いがあるのだ。もちろんそれぞれが相互に影響しあう部分もあるがベースの違いはここにあるといえるだろう。
もうひとつ、これからの教育の在り方について、最終章には”日本再興は教育からはじまる”というタイトルがついている。ここで彼が提案するのは、これからの教育には「読み書きそろばん+デザイン」という概念が必要だということらしい。こんな本を書いているのだからそう主張するのは当然なわけだが、その根拠が興味深い。著者はイギリスの近年の成長に目を向ける。産業革命の生みの親ともいうべきイギリスは後発の国々の発展により斜陽の帝国と揶揄されるようになった。しかしその後も国際社会においてイギリスが先進国としてのプレゼンスを維持するにあたっては、一般的にはウォール街と並んで世界金融の中心を担うシティの果たした役割が大きいとされている。そのことを認めつつもイギリスをけん引してきたのは「クリエイティブ産業」であると著者はいうのだ。クリエイティブ産業が何なのかについては、本書に譲るとして日本や日本人にはクリエイティブ産業分野の伸びしろが大きく、それを実現するために「読み書きそろばん+デザイン」教育が重要だという。確かにそういう面があると思う。

ここで最初の文章にもどる
「デザイン」はおもてなし。

まさに日本のお家芸というべき分野ではないか。おもてなしは形式にとらわれてしまうと単に過剰なサービスを無償で行うだけになってしまう。そこにあるエッセンスを抽出して高度なサービスにすること。これこそ日本再興のためのデザインであり。国内でいえばそれをローカルな文脈でデザインできる地域こそ生き残っていくことができるのではないだろうか。

瀧本哲史氏は著書「僕は君たちに武器を配りたい」で若い人たちに投資家的な視点をもって生きろと述べた。石川俊祐氏は本書においてデザイン思考を手に入れよと述べている。

投資家的視点とデザイン思考はこれからの時代を切り拓いていく若者にとって左右の翼ともいうべき能力なのかもしれない。そういう気付きをいち早く得て日常の学びをバージョンアップさせていくことができれば、人材のコモディティ化に陥ることなく、刺激的な人生を送ることができるだろう。

これから大学に進む人たちや就職活動をしている人にもぜひとも読んでほしい一冊だ。

次回もお楽しみに~


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