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4月の自殺者が減りました、は良いニュースでしょうか?

今週の始め、標題のニュースが「ちょっと」話題になったと思います。前年同月の自殺者数と比べて、先月の自殺者数が大幅に減った…ということを伝えたニュースです

この記事に対してはネットでも

・自粛がよい影響をもたらしたのではないか?
・ストレスフルな職場や学校環境、通勤事情などがやはり自殺に影響していたんだ!!

といった意見があった一方で、普段から自殺予防や対策に関わっている方々からは、ここで安心するのはまだ早いという声や

いや、いまは戦争中や大規模な災害と状況が同じで。こういう時期は自殺者数が減るんだ、という分析まで。いろいろな声が挙がっていました

ただこの数字、わたしはちょっと読み取るのが難しいと感じており。数字だけを観ていると、もっと大きなモノを見失ってしまうのではないかと、むしろ心配になっています。わたしが今回のニュースから感じてることをまとめると、以下になります

・今年4月の自殺者数が前年度や前々年度の4月の自殺者数と比較して減少の度合いが大きいのは事実

・しかしいま現在発表されているデータは、自殺者の総数、男女数、都道府県別のものしかなく、年代や自殺の理由の説明には情報が足りない

・2015年以降に4月に自殺した方の数としては最も少ないのは事実だが、今年の2月の自殺者数も前年同月で比べると1割近く減っている

・毎年の動向として1月から5月にかけて自殺者数は上昇し。6月以降は年末にかけてなだらかに減少していく。これと同じパターンを今年も取るのかがまだまったく分からない

・5月以降どう変化していくのかがやはり一番の気掛かりである

・それでも年初からの4カ月だけで 6,260人の方が自殺・自死で亡くなられていることに関心が向けられず、4月の数字だけが注目されるのは残念

この中でも、特に気になっているのが、先月の減少の「中身」がまだよく分かっていないことです。例えば県別のデータを見れば、北海道、群馬県、兵庫県、大分県など、自殺者数が増えた県もあります(一方、都会と言われる地域を抱える県の多くは減っています※)

また、年代別でどこが減ったのかも気がかりです。日本の自殺者数の特徴は、①中高年層の自殺者数が高い②30代以下の死因として自殺がトップ、の二点です。ただいま時点のデータでは、上記の二点やそれ以外のところで変化が起きているのかがよく分かりません

上記の①の層が減っているのに、②の層では変化がない。むしろ②の層では増えている。仮にそれで総数が減ったと喜んでもわたしは意味が無いと思っています

自殺・自死した方の数は、2010年代はさまざまな自殺予防や対策の努力の甲斐もあって総数が大きく減りました。これはなにより、それに取り組まれてきた関係者の方々のご尽力によるものです。一方で、未だ2万人近い方々が毎年自殺、自死を選ばれ。特に30代以下の若者や子どもにおいて、死因のトップに「自殺」がある状況は変わっていません

また今年は5月以降の自殺者数がどう変動するかが非常に気掛かりです。いわゆる経済や生活の困窮から自殺者が増えるのは急激な社会的な変化が起きて少し遅れてからと言われています。4月の数字にはそれが表れていないのではないか?という観方をわたしもしています(それが外れてくれれば尚良いです)

このように、自殺のお話はある月の結果や数字に一喜一憂するのではなく。もっと長いスパンで。また年代や理由、その背景を観ながら、お話をしていくことが大切だと思い、この note を書きました

そしていま苦しかったり、悩み事があったり。誰かに話をしたいな…と思うことがあれば、やはりSOSを出していただくことが大事です。ちょっとのことだから。人に話すほどでもないから。誰にこんなことを相談していいのか…と思わずに、家族や友人、知人。また公的機関や相談機関も活用しながら、想いを語ることをガマンしないで欲しいと思います

実はみなさんが思う以上に様々な相談窓口が各地にはあります。以下はその中でも、全国共通で相談が出来る代表的な窓口です。この他にも、各自治体にある精神保健福祉センターや自殺相談の窓口もありますので、ぜひを活用されて下さい

〇こころの健康相談統一ダイヤル(開設時間は自治体により異なります)
 0570-064-556
〇よりそいホットライン(24時間対応)
 0120-279-338
その他、上記を含む相談先の一覧が以下の厚生労働省のサイトにて確認出来ます
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/jisatsu/soudan_tel.html

〇DV相談プラス(24時間対応)
 0120-279-889

 https://soudanplus.jp/

今年の自殺者数が極端に増えることがないことを、わたしも願っています。。

参考資料

速報値と統計データより、総数、男女別数、県別数が確認出来ます

デス・カフェ@東京主催。ヒトやペットの区別をしない、死別・喪失のサポート、グリーフケアのお話をしています