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ウェザーニューズ が挑む脱炭素の未来ー海運編ー

海運業界 2050年にカーボンニュートラルへ

2050年はすぐやってきます。世界海運業界の史上最大の挑戦が始まっています。CO2削減するために何らかの努力をした人、先行的に努力した人が先行者利益のようなかたちで自分たちにその成果をアセット化することができたら良いんです。
自分たちが削減したものを価値として、これは価値だということは何も悪いことではありません。


こう語るのは世界最大の民間気象情報会社である株式会社ウェザーニューズで航海・航空・陸上の交通気象事業主責任者の岩佐秀徳氏。

ウェザーニューズは蓄積した膨大な気象データをもとに構築した緻密な気象予測技術を活用し、温室効果ガス削減への支援を行っている企業です。 
特に創業時より提供している海運向けの航海気象サービスを中心に、船舶運航のCO2削減支援に取り組んでいます。
従来から提供している船舶ごとの速力と燃料消費量等のパフォーマンス特性を解析して、気象海象を考慮した最適航路・最適エンジン回転数の提案を実現する船舶の運航管理支援サービス「OSR」(Optimum Ship Routing)に加え、CO2排出量監視サービス「CIM」(Carbon Intensity Monitoring) によって海運の脱炭素化を支えています。

今回の「脱炭素の今」では気象技術データから脱炭素化を支援する株式会社ウェザーニューズの取り組みについて迫りました。


ーウェザーニューズでは、気象予測技術を用いて安全運航と経済運航、そして環境運航の3つのバリューをかかげていいます。ー

 岩佐:「このバリューを提供するために、僕たちのサービスは将来、船がどういう気象条件に遭遇するのかという予測技術をもとに船体と貨物、そして乗組員の安全性が担保する航路を選定し、その航路上をどのくらいの速力で航行すれば、スケジュール通りに到着できるか、運航採算の利益最大化という経済性を追求してきました。

今までは安全運航を前提とした利益追求型の運航が市場ニーズでしたが、これからは新しくCO2排出量の最小化というターゲットを加えて、最適運航を図ろうというのが環境運航となります。 」

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 岩佐:「世界中で脱炭素化への動きが顕著ですが、海運でもIMO(国際海事機関)による2050年までのカーボンニュートラル達成の宣言を受け、使用燃料を原油からLNGやアンモニア等へ切り替えていこうという動きが進んできています。
環境運航では、安全運航を実現した上で、運航計画の段階から航海中もリアルタイムで船舶のCO2排出量を可視化させ、できるだけ燃料消費量を少なくし、運航コストとCO2排出量の最適バランスをいかに最適化するか問われます。」

ー実際にお客さんの意識変化は感じられていますか?ー

岩佐:「お客様の環境に対する意識は非常に高くなっていて、実際今自分たちが運航している船隊が年間どのくらいのCO2を排出しているのかという関心は高いですね。一方で、年間に換算すれば膨大な航海数にもなるため、モニタリングのための業務やシステム開発のコストの増加が懸念されています

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僕たちのCO2排出量監視サービスでは、BIツールにリアルタイムで現在のCO2排出量が表示され、航海終了後には総合的なレポートを確認することができます。

例えば10隻船を持っているなかで、CO2排出量のベンチマークを超える船が3隻ありました。そうなるとこの3隻というのは、運航手法に課題があったのか、そもそも燃費が悪い船なのか等の課題分析を行います。その課題を掘り下げて分析していけば、より最適な運航手法をやってみようというソフトウェア対策や、エンジンの改良や環境性能の船に入れ替える等のハードウエア応策が見えてきます。
これを、1年間まとめて評価するサイクルではなくて、毎月とか、航海終了後に直ちにレビューし、改善策の検討をデータ分析から支援します。」

ーまずは現状把握する上でも見える化が大事ですねー

 岩佐:「元々ウェザーニューズは船の運航者が船主から船舶を借りて貨物輸送を行う際に締結する「用船契約」のオーディット(監査業務)をしていたんですよね。
例えば、船主が「この船は性能として13ノットで走るので1日8000ドルです」と約束したのに、実際蓋を開けてみたら11ノットしか出ていなければ、それは契約違反ですよね。だから借り手はその分の求償ができるんです。僕たちは第三者として、航海が終わると気象海象の影響を考慮した性能分析を行い、性能速力不足に伴う損失時間を査定するサービスを提供してきました。実はCO2排出量もオーディットなんですよね。
お客様自身でデータを集めて計算して、これだけC02を排出しましたというより、第三者がレポートした方が信憑性はありますよね。こうした役割もマーケットから求められていると思っています。」

先行努力をアセット化して何も悪くない


岩佐:「海運のカーボンニュートラル実現のプロセスとしてはCO2の見える化がまず現在地を知る上で必要で、その次は削減のソリューションが必要、さらに次はどれだけ減らしたのかの価値化が待っていると考えています。
お客さんが年間何百万とCO2を減らしたとすると、次はブロックチェーンの持つトークンを使ってその削減量を価値化してあげるんです。そして将来、達成できていない人は、達成した人から買えばよいわけです。
これがカーボンオフセットの仕組みですね。これを深化させていくことがカーボンニュートラルの世界に繋がると考えています。 」


岩佐:「2050年はすぐやってきます。それまでに世の中にある数万船の船が環境性能の高いアンモニア船や水素船に変われるかが、海運や造船業界に突きつけられている課題だと思っています。
その道のりの中で、CO2削減するために何らかの努力をした人、先行的に努力した人が先行者利益のようなかたちで、環境アセットを形成することができたら素晴らしいと思います。
その環境アセットは、荷主、運航と船主、努力したステークフォルダー全ての人へ公平に分配されるべきだと思っています。自分たちが削減したものを価値として、これは価値だということは何も悪いことではありません。自分たちが投資したESG投資効果であると言えるわけです。 」

僕らは脇役、お客さんの努力の変化を見せてあげたい


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 岩佐:「いつも僕が弊社のスタッフにいうのが、ウェザーニューズが最適運航をしているわけではない、排出量を削減しているのでない。
乗組員、オペレーター、船舶管理に携わるお客様が努力した結果なんだと。

でもそうした積み重ねによって、ビフォー・アフターで自分たちの努力がこのくらい実ったというのを見せてあげて、そしてその努力の価値を市場価格に換算するとどれくらいの価値なのかを確認できないとモチベーションも上がらない、なかなか頑張れないですよね。
そうした取り組みの一歩として今ウェザーニューズは海運の脱炭素化に向けて取り組んでいます。」

取材:株式会社グリッド
https://gridpredict.jp/



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