転職を売るということ〜転職の思考法〜

もうすでに随分前に出ている本ではありますが、
北野唯我さんの「転職の思考法」を読みました。

この後に出された「天才を殺す凡人」もベストセラーになっていて
ビジネス書の世界ではずっと話題を持っていっていらしゃいますね!

転職の思考法とは

転職の思考法はビジネス書としては珍しく物語形式の本です。

ちょっとしたきっかけで転職を考えだした主人公が、
転職コンサルタントと出会い、
転職(というより仕事人の)本質を知りつつ、
転職のテクニックも知り身につけていくというストーリーです。

ストーリーもしっかり構成されていて非常に読みやすく、
すいすいと読んでしまいました。

転職の思考法の中核

転職の思考法の中核は、マーケットバリューという考え方です。
仕事の本質は自分を売るという契約行為であって、
自分という商品には市場価値(マーケットバリュー)があります。

自分の市場価値というものを意識するのであれば、
自分の時間を切り売りするような働き方をして、
自分のマーケットバリューが上がらないようなことは
どれだけ危険な行為かということがわかります。

自分のマーケットバリューが上がらないまま年を重ねてしまったとき、
会社にしがみついて生きていくしかなくなってしまうのです。

だから自分のマーケットバリューが上がるように考えて仕事をしよう、
そのためには転職を一つの手段として考えようというのが、
転職の思考法の中核だと思いました。

転職を売っていない

この本が共感を生んだのは「転職」という出口に着目しているようで、
実際は違うというところでしょう。

本書のメッセージは一貫して「自分に嘘をつかない生き方をしよう」です。

営業だけどほんとは売りたくないものを売っている
広報だけどちょっぴりの真実に多くの飾りをつけて情報発信している
ほんとは嫌な上司だけど後で困るから飲み会に付き合う

言う人がいうと「社会ってのはこういうもんだ!」となるような例。
これってやっぱり自分に嘘をついてますよね。

でもそうしてしまうし、そうしないといけないと思ってしまう。
なぜそう思ってしまうかというと、別の場所で働くという選択肢を自分のものとして持っていないからなんです。

その場にしがみつく必要がなければ、
場が凍っても本当にやるべきことを提案していくことができるし、
仕事が誰かのためになるように向き合うことがより一層できるのではないか。

それが本書のメッセージです。

その解決法=出口としての転職についても多くのテクニックを紹介してくれますが、あくまで出口としての案内なんです。

社会人なら多くの人が持つであろう組織の人の辛さに焦点をあてて、
処方箋として転職をすっと差し出す。

サービスを売ると考えたときにとてもスマートな方法で、
本でこういうことができるんだなとも思いました。

公務員の現場で頑張る人に読んでもらいたい

マーケットバリューという考え方を知るべきなのは公務員かもしれません。

公務員は終身雇用を前提にしていて、実際それを期待する人が多く志望する職種です。

業界全体で「ジェネラリストの育成」を基本路線としていますし、
業務内容は高度化しつつありますが、
ほぼ転職に近いような異動を経験し続けることは珍しくありません。

専門性はないとすら言われることも多く、
実際転職市場ではかなり厳しい立場であると聞きます。

こういう状況が職場にしがみつくための努力を生んでしまっている側面は
否定できないのではないでしょうか。

実際に役所から出ていくかどうかは別です。
自治体の中を良くするしていくためにも、
自分のマーケットバリューを意識することは大事だと思います。

職場にしがみつく必要がないからこそ、
本当に必要なことが言える。

そういうことを考えていく必要があるのではないでしょうか。

そんなことを考えると自治体と民間企業でもっとフリーに、
人材が行き来できるともっとよくなるのではないかと感じます。

公務員の副業やレンタル移籍などを実現すべく様々な方がいらっしゃいます。
この本を読んで、ちょっと別の角度からそういう「選択肢を増やす試み」が見えてきて、もっともっと応援したいなと思うようになりました。

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