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いかしあうつながりは「観察」からはじまる。パーマカルチャー安房でグリーンズ冬合宿をしました!

こんにちは!グリーンズインターンのれいです。このnoteでは、今年2月に実施したグリーンズ合宿のレポートをお届けします!

毎年夏と冬に開催しているグリーンズ合宿。これまで運営メンバー中心にビジョン・ミッションを言語化したり、事業戦略を練ってきたようなのですが、今回の合宿の目的は

「パーマカルチャーとは何か?を体験を通じて理解し、共通言語を持つ」

ことでした。

グリーンズが探究している「いかしあうつながり」という考え方は、パーマカルチャーに源流があります。「いかしあうつながり」の理解を深めるためにもパーマカルチャーが体現された場で合宿をすることになりました!

僕自身、2019年12月にインターンとして関わり始めたばかりで、自分の言葉で「パーマカルチャー」を語れる自信がありませんでした。そんな状態で合宿にご一緒できることになり「パーマカルチャーをより深く体感できる…!」と、参加する前からワクワク。

今回、総勢11名で向かったのは「パーマカルチャー安房(PAWA)」

南房総に拠点のあるPAWAは「パーマカルチャー」の実践方法を肌で感じ、学ぶことができる数少ない場。そんなPAWAでの2日間を振り返りながら、読者の皆さんと一緒に「パーマカルチャー」の理解を深めていけたらと思います!

「パーマカルチャー」を体感する

PAWAを設立したのは、「パーマカルチャー」の父ビル・モリソンからパーマカルチャーデザインを学んだ本間フィル・キャッシュマンさん(フィルさん)です。

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PAWAを設立したフィルさん

フィルさんは過去、greenz.jpでも取材させてもらっています。

そもそも「パーマカルチャー」とは何か。

パーマネント(=永久な)とアグリカルチャ-(=農業)あるいはカルチャー(=文化)を組み合わせた造語です。パーマカルチャーの父と言われているビル・モリソンは「パーマカルチャー」をこのように定義しています。

「パーマカルチャーというのは、人間にとっての恒久的持続可能な環境をつくり出すデザイン体系のことである」(『パーマカルチャー 農的暮らしの永久デザイン』ビル・モリソン, P.5)

とてもかっこいい言葉ですが、なんだかわかるようでわからないような…。

「持続可能性(サスティナビリティ)」「デザイン体系」がキーワードになっているようです。

「関係性のデザイン」を観察する

朝10時に都内で集合し、そこから約2時間車を走らせ、PAWAに到着。

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到着後、フィルさんの先導でPAWAのエリア内見学が始まりました。早速、フィルさんはこんな問いをメンバーに投げかけます。

「PAWAの中にどこに、どういう『関係性のデザイン』があって『いかしあっている』のか?観察してみよう」

ここでも「デザイン」という言葉が出てきました。デザインしているのは「関係性」のようです。そして「観察」という新しいキーワードも。

フィルさんに連れられて、PAWAの設備についてひとつひとつ丁寧に説明を受けます。見た目だけでは分からないことばかりで、まさに発見と驚きの連続。

「そんなところまで、いかしあっているのか…!」とメンバーからの感嘆の声が溢れていました。

中でも一番衝撃的だったのは、「家」と「ぶどうの木」の関係性。

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家の屋根の間に幹を伸ばす覆っている「ぶどう」の木(冬なので葉が落ちていますが)

「家」と「ぶどうの木」がどのような関係性になっているのか、皆さんはわかりますか?

フィルさんは「家」と「ぶどうの木」に隠れている関係を、このように教えてくれました。

「ぶどうの木は暑い夏に葉が生い茂るので涼しい木陰をつくってくれます。一方、冬場は葉が落ちるので日光が入り屋根下は暖かくなります。

また、家の床下は風通しがよく、湿らないようにしなければならない場所です。一方、「ぶどうの木」は乾燥地でよく育つため、根っこが家の下に伸びるととても好都合なんです。

あえて透明な屋根の下に育ててるのもそういう理由で、雨の多い日本の気候から、ぶどうの木を守ってくれています。

そして、ここは海が近いから塩害がくる。でも屋根がぶどうの葉を守ってくれるんです。」

「家」と「ぶどうの木」の間にたくさんの「いかしあう関係性」が眠っている…。

さらに自分たちの盲点になっている、もう1つの関係が隠れていました。

「システムの中には「人間」という存在もいることを忘れてはいけない。人間がいることで、近くにいる鳥がぶどうの実を食べに来なくて済むんです。」

パーマカルチャーの重要なコンセプトの1つである「多機能性」を目の当たりにした瞬間でした。ひとつの要素(「家」や「ぶどうの木」「人間」)に、複数の役割(=多機能)を持たせるように、関係がデザインされていました。

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冒頭で触れた「パーマカルチャー」の定義で使われていた「デザイン」という言葉。
その言葉が指す意味合いについて、フィルさんはこのように語ります。

「複雑でいろんな関係性の中で成り立っているシステムの中で、それぞれの『要素』にどんな『機能』を持たせるのかを想像するのが『デザイン』の始まりです」

すべてがつながり、すべてが意味を持っている。ひとつのものが複数の機能を持ち、周りの要素に影響を及ぼし、及ぼされている。

「いかしあっている」状態をどうつくれるか?グリーンズのビジョンである「いかしあうつながりがあふれる幸せな社会」にも掲げられている言葉が現実になっている風景を、目の当たりにしました。

他にもたくさんの「いかしあうつながり」を見つけることができたのですが、写真と簡単な説明のみで割愛させて頂きます…。

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雨水を飲み水に浄化するタンク。屋根の上から雨水が自然とタンクに流れてきて(1枚目)重力を利用して汚れを取り除く。その汚れが管から流れ出て、タンクには綺麗な水のみが残る。(2枚目)電気を一切使わず自然の力だけで浄化している。

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水がいらないトイレ。排泄後におがくずを撒く。排泄物は長い時間をかけて微生物が分解して土になる。そのために、C/N比(炭素量と窒素量の比率)が計算されているそう。まったく匂いはしませんでした…。

PAWAの中で「パーマカルチャー」の凄さを体感した後は、メンバーみんなで夕食のピザ作りに。

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生地をつくり、おしゃべりしながら思い思いの具材を乗せ、アースオーブンで焼き、できたてを頂く。その空間の中においしさを倍増させるエッセンスが詰まっていました…。

ひと段落した後は、焚き火を囲んで語り合い。火が散る音、ほのかに感じる暖かさ。ただただ「そこにいる」ことを感じられる時間でした。

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パーマカルチャーの根底にあるのは「観察」

夜が明けて2日目。まるで昨日の学びがウォーミングアップであったかのように、「パーマカルチャー」の核心に迫っていきます。

まずはメンバーでチェックイン。今の自分の感情に耳を傾け、みんなにシェア。グリーンズが普段のミーティング前にも行っている、大切な時間です。

その後、PAWAから歩いて15分ほどの滝まで散歩。その前に、フィルさんからこんな言葉を投げかけられます。

「パーマカルチャーは、自分の中の何を研いでいるのかというと「観察力」なのね。五感を研ぎ澄ませて「今」を観察する。五感しか、今ここに起きていることを察知する道具はないんです。」

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初日にも現れた「観察」というキーワード。2日目の大きなテーマになりそうです。

散歩はあるワークを行いながらでした。そのワークはNVC(Non-Violence Communication)というコミュニケーション技術の実践でした。

「NVC(Nonviolent Communication=非暴力コミュニケーション)とは、1970年代に、アメリカの臨床心理学者マーシャル・B・ローゼンバーグ博士によって体系化され、提唱された、自分の内と外に平和をつくるプロセスです。

具体的には、観察(Observation)、感情(Feeling)、ニーズ(Need)、リクエスト(Request) の4要素に注目しながら、自身の内なる対話や、相手の言葉の奥の意図の推測、相手との対話を行います。」
(引用:http://nvc-japan.net/nvc/)

ワークといっても「相手が話していることを、ただ聞く」。たったそれだけ。ペアになってまずはひとりが最近気になっていることを5分間ひたすら話して、その内容をもうひとりが2分間でできるだけ同じ内容を話す。

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たったそれだけ…と思いきや、これが難しいんです。これが実は「観察」のトレーニングなのです。

よく起きてしまうのは、相手の話を聞いている時に「どうやって返事するか」を一生懸命考えてしまうこと。「思考」が相手の話をありのままに聞くことを邪魔している状態です。

「観察」できるようになるためには、トレーニングが必要。それほど、難しいことなんだなと実感しました。

世界を「統合されたもの」として捉える

NVCのワークをしていると、あっという間に滝に到着。

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ここで、フィルさんは新しいテーマを、僕たちに投げかけます。それは「世界を統合したものとして捉える」ということ。

「思考」は、世界を「分けて」理解するための道具なんだよね。でも、現実というのは「分かれているもの」ではなくて、全て「統合されているもの」だ、という真実があります。物理的に「違う」「分かれている」という意識は、生きていくためには大切。でも、真実を知るためには、すごい妨害になっている。

目の前の大自然を前に、滝を流れる水、岩肌、植物…。ありとあらゆるものを「1つのつながり」として捉えること。メンバーは思い思いの場所に散り、感性を研ぎ澄ましていました。

滝から帰ってくると、最後のワーク。合宿の締めくくりとして、パーマカルチャーの考えを自分たちの生活にどう取り入れていくのか、考えていきます。

まずは、4つの象限に分けて、今の自分の暮らしを「観察」します。

Elements:自分の暮らしの中に、どういう「システム」が存在しているか
(仕事・学校・家族・趣味…など)
Resources:自分の暮らしの中に、どういう「資源」があるのか
(文化的資源・金銭的資源・人間関係…など)
Limits / Leaks:何に「限界」を感じているのか
(〇〇が足りていないから△△ができない、◇◇に恐れを感じている…など)
Patterns:自分の暮らしの中に、どんな「パターン」が隠れているか
(自分の内面や外面で繰り返し起こること)

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メンバー全員で自分の暮らしを4象限に書き出しました。書き出したものを観察することで、それぞれの関係性やつながりについて新しい視点や発見を得ることができました。

すべては「観察」からはじまる

今回の合宿を通じて僕が一番強く感じたのは、日常生活でどれだけ「観察」ができていないのか、ということでした。

僕たちは普段の生活において、あまりに強い「刺激」に囲まれていることに気づかされます。スマホや騒音、人の群れ、街灯、ビル…。それらを1つひとつ感じ取ってしまっては疲れてしまうから、無意識のうちに感性をシャットアウトしているのかもしれない。

一方、自然の「刺激」は弱い。ましてや、その背後にある繋がりまで感じとるためには、相当な集中力や観察力が必要でした。初めのうちは、僕は何も感じ取れませんでした…。

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でも少しずつ少しずつ見えるものが増えていき、それと共に心地よさも感じるようになりました。

そして「観察すること大切さ」は、フィルさんのこの言葉に集約されています。

「『いま、何が起きているのか』を客観的に観察できると、『システム』と『自分』の繋がりがわかるようになります。そうなれば自然と『システム』に貢献する行動をとるようになります。」

すべては「観察」から始まる。今、目の前の現象や出来事ををありのままに捉えることで、正しい行動が自然と生み出される。

あくまで抽象的な理解で、これだけでは自分の血肉にはなっていないですが…体のど真ん中に置いておきたい学びでした。

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参加したメンバーも、それぞれが持ち帰った学びを言葉にしています。自分とはまた違った視点で振り返っているので、この合宿について、そしてパーマカルチャーについてもっと知りたい方は、是非読んでみてください!

これからもグリーンズは「パーマカルチャー」「いかしあうつながり」を探究し、社会の中にインストールしていくべく、学び活動していきます!

(文:中村 怜生・撮影:山中 康司

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