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ダメな母親はヘリコプター

ピアノ、ヴァイオリン、声楽、美術、書道…イラスト、デザインや放送などを含めると、
何をするにしても、どの分野にしろ、それぞれ一流の能力を持つ同級生が出現する。

中高一貫の学校の中学受験にまさかの不合格となり、高校3年間しか触れることはなかったが、勉強だけではなく芸術においても自由に伸び伸びと才能を育む校風には驚かされた。音楽、美術、書道、勉強、どれをとっても選ばれし者に入るはずもなく、自分は平凡だということを思い知らされた3年間でもあった。

しかし、素晴らしき才能を持つ人が集う校風は脈々と受け継がれているようで、先日開催された母校の芸術発表会にて実感する。変わらぬ伝統にため息がでるばかりだ。

娘の母校ともなったその学校で、美術の授業で版画があると言う。何かいい題材はないか?というので、昨年私が撮影した実家のラナンキュラスの写真を選んで持って行った。

版画の課題の頃にちょうど娘は体調を崩して長く学校を休んでしまった。締め切りまでに間に合わせるために、2学期のテスト前に毎日残って版画に取り組んでいた様子。

ダメな母親代表の私は、あろうことか
「テスト前に勉強せずに何しとる?美術なんかに時間かけとる場合じゃなかろう?」
と怒り飛ばす。にもかかわらず、毎日残って取り組み、遅く帰る。
「いつまでやっとる?何を一生懸命する?早く仕上げろ」
もう鬼である。

そうしたら、展示作品に選抜されたという…。

もういい加減、子供の芽を摘む鬼母は卒業しなければならない。
「前前前世」ならぬ「追追追試」に引っかかろうとも、その子の持つ別の才能を伸ばして行けたらいいのだろう。

大学受験を控えているというのに、一向に熱意と努力が感じられない長女に、微分積分どころか、一次関数で引っかかる二女。ダメな母親代表の私は、怒りをぶちまける。すると見かねた夫が私に腹を立て、家の中はすっちゃかめっちゃか。今が一番ストレスがかかる時期なのだろう。

そんなイライラの募る私に、メンタルの先生が教えてくれた。

「ヘリコプターになるな」

ずーっと監視して付き纏うなという意味である。中3くらいまで放っておきなさい。わざわざできないところをほじくることはない。できることに目を向けなさい。そうやって口を出すことで、かえって自分で考えることや伸びることができなくなる。

そう聞いて家に帰っても、やはり少し口を出してしまう。ヘリコプターは飛んでいる。早いうちにヘリポートに戻らねば。

ヘリコプターになるのは、もうヤメだ。

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