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トマ・ピケティの『21世紀の資本』とアベノミクス

たまにこう言う真面目なやつ、書いてしまうんですよね・・・。
Dog's キッチンとの差ね(笑)

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トマ・ピケティの『21世紀の資本』とアベノミクス

 経済学における重要な議題の一つとして、経済格差の問題がある。経済格差に関する事柄を主にトマ・ピケティの『21世紀の資本』に沿って学んだ。本論では、日本に住む学生として最もよく耳にし、身近に感じている「アベノミクス」を取り上げ、これの理解を深めることを目的とし、経済格差の面でこれを考える。第一にアベノミクス、経済格差に関する基本的な内包をまとめた上で、これらについて考える。

まず、アベノミクスとは、

 2012月12月26日より始まった第2次安倍内閣において、安倍首相が表明した「3本の矢」を柱とする経済政策のことである。第一の矢は、金融緩和で流通するお金の量を増やし、デフレを解消する「大胆な金融政策」。第二の矢は約10兆円規模の経済政策予算により需要を創出する「機動的な財政政策」。規制緩和により民間企業や個人が活躍で切るようにする「民間投資を喚起する成長戦略」。*1 これらは、経済回復を目的とし、デフレ脱却を達成するための政策である。以降、アベノミクスの詳細な説明は基本的には省き、必要に応じて記載する。
 アベノミクスによる恩恵は、実質GDPの年率が2015年の1月から3月期の間に2.4%成長していることや、完全失業者の数が61万人減少(2015年4月)していること、ニュースや記事による簡易的なイメージでも多少は感じられる。とはいえ、日常生活でこういったデータを見ても正直なところ、専門的な知識のない自分としては、これがどう日本を良くしているのかあまり実感できない。そこで、経済格差を論点にアベノミクスについて調べてみると、一方では『“アベノミクスは格差社会を助長する” 欧米で話題騒然の21世紀の資本論』という記事が、一方では『ピケティでアベノミクス批判する残念な人々』という記事がある。当たり前だが、立場が分かれているらしいので、以下トマ・ピケティの『21世紀の資本』の内容に触れた後に、この問題に移る。

トマ・ピケティの『21世紀の資本』の要点

は次である。まず、世界中で所得と富の分配の不平等化が進んでいる。その原因は(税引き後の)資本収益率(r)>経済成長率(g)である。経済の大きさが拡大するよりも早く資本の取り分が大きくなる。例外はふたつの世界大戦とそれに挟まれた期間だけである。この世界的所得格差を是正するためにグローバル資産課税や累進課税を促進すべきと主張する。つまり資本家・富裕層に対する重税、労働者階級への再分配が必要である。*2 更にこれを、タックスヘイブンなどによる逃れ道をなくすため、全世界で行うというものである。
 更にここで最も重要な資本収益率(r)>経済成長率(g)とは、資本主義社会において土地や株への投資による収益(不労所得)は、労働によって得られる収益(賃金)の上昇より常に大きい。つまり、多大な資本を持っている人はそこから得られるお金だけで働かずにさらなる収入を得る事できるが、労働者はいくら頑張っても絶対に追いつくことはできない。むしろ、その差は開く一方だという。例えばアメリカで上位10%の富裕層が総所得に占めるシェアは、1980年の34%から2012年には50%にまで急上昇し、労働者平均の300倍を優に超える超高額報酬を得るスーパー経営者が登場した。

  ここで、ピケティの論を元にアベノミクスを考えてみる。まずは、

アベノミクスに対し批判的な意見

から見てみる。「livedoor News」では、

“アベノミクスは富裕層・大企業への税を軽減する一方で、その穴を大衆課税である消費税増税で埋めようとしている。これは、ピケティ氏が主張する累進課税強化と真っ向対立している(脚注3より引用)”

とし、このようなアベノミクスを促進する日本について、2015年1月29日、西村康稔内閣府副大臣に対し、ピケティは次の事を述べた。

「上位10%の富裕層の所得は国民所得全体の30~40%まで上がってきており、さらに上昇傾向にある。しかも、日本はゼロに近い低成長なのに上位の所得が増えているということは、実質的に購買力を減らしている人がいるということだ。おまけに累進課税の最高税率も低い。国際的水準で見ても、日本の過去の税率と比べてみても。つまり、トップの所得シェアが増えているのに以前より低い税率しか納めていないということだ(脚注3より引用)」

更に同年1月31日東大講義において、第一に富裕層を優遇しのちにその恩恵として低所得者を支えるのではなく、『21世紀の資本』で述べた方法をとるべきだと主張した。
 次はピケティの論とは少し離れるが、アベノミクスが経済格差を助長しているとされる理由の一つを取り上げる。それは、非正規雇用の問題である。『増補新版「格差」の戦後史』(橋本健二著/河出ブックス)によると、パートの求人倍率は80年だい以降急上昇し、80年には前年比1.43倍(一般労働者0.75倍)、85年は同1.53倍(同0.64倍)、89年には同3.75倍に達する(同1.04倍)。企業がコスト削減のため非正規雇用に頼った結果、85年から90年の間に正規労働者が145万人の増加にとどまったのに対し、非正規雇用者は226万人増えて、役員を除く雇用者の20%を初めて突破した。更に97年には非正規雇用者は男性266.2万人、女性847.0万人、合計1113.2万人と1000万人を超えるまでに増加した。そして13年、アベノミクスでも労働の規制緩和の流れを加速させる動きがある。2012年と2015年を比べると、確かに就業者は106万人増加しているが、雇用形態別にみると、非正規雇用が167万人増える一方、正規雇用は36万人減少している。収入、安定性などの面で、非正規雇用と正規雇用で格差が生じている。
 

次に、アベノミクスに対し肯定的な意見

を見てみる。「THE WALL STREET JOURNAL」によると、日本は上位層の所得割合は金融危機後の底から素早く回復しているアメリカとは対照的に、上位1%層の所得(キャピタルゲインを除く)が国民所得に占める割合は08年に9.5%でピークをつけた後、12年(入手できる最新の数字)の9%まで、4年にわたり毎年少しずつ低下しているという。さらに、一橋大学の森口千晶教授は、所得不均衡を招く要因が日本と米国では大きく違うと指摘した。米国では幹部の報酬が桁外れに多いように、スーパー所得者が格差の原因となっているが、日本にそうした慣例はないという。*5

画像1

上位1%の所得層(キャピタルゲインを除く)が国民所得に占める割合【青:米国、赤:日本】 (http://jp.wsj.com/articles/SB11815783148186973545804580450744144553812)

 上記で問題にしていた非正規雇用の問題についても、『図解 ピケティの「21世紀の資本」9章 日本の「格差」を解消する処方箋 ピケティ理論で読み解くアベノミクス』によると、

「アベノミクスが始まって、円安、株高、公共事業を強化したことで雇用者数が100万人以上増えています。非正規雇用が大部分を占めるという指摘もありますが、実際には失業者100万人が働けるようになったということです。失業者の100万人と非正規雇用の100万人のどちらがいいでしょうか。収入を得られる人が100万人増えたわけですから、底辺の押上につながっているわけです(脚注6より引用)」

と解釈している。さらに、アベノミクスは名目の金利を下げて成長率をあげようとしているため、r > g を縮小しようとしていることにもなるという。

 以上のように、同じピケティの論を元にしても、アベノミクスに対し様々な意見がある。数ある記事の中には、素人目からしてみても批判ばかりで内容(根拠や理由)がないものも多くあり、言葉を選ばずに直感的な感想を言うとしたら「好き勝手言っていた」というものも少なくはなかった。とはいえ、きちんとデータをもとに論じてあるものも多く、本論ではできるだけそういったものを抜粋して引用したつもりである。
 どの引用元においても、基本的にはピケティの『21世紀の資本』に対する批判はなく、あくまでアベノミクスに対する議論であった。このような議論が存在する以上、アベノミクスが最終的に経済格差に対しどう影響するかは議論の余地が多いと感じた。しかし、この点における反アベノミクスの議論の方が論拠がしっかり書かれていたものが多かった印象を受ける上、実際に稼働している以上、アベノミクスに対し(あくまで経済格差の点において)不安が大きくなったのは隠せない。

参照:
*1 アベノミクス「3本の矢」 | 首相官邸ホームページ http://www.kantei.go.jp/jp/headline/seichosenryaku/sanbonnoya.htm
*2 ピケティが本当に伝えたかった3つの論点、http://ironna.jp/article/1137
*3 世界が注目する経済学者・ピケティが来日して“アベノミクス“をケチョンケチョンに!、2015年2月4日、LITERA(リテラ)、http://news.livedoor.com/article/detail/9748112/
*4 「アベノミクス効果」本当か?!、日本共産党、http://www.jcp.or.jp/akahata/aik16/2016-06-11/2016061103_01_1.html
*5 ピケティ理論、日本は例外? 所得格差が縮小傾向、http://jp.wsj.com/articles/SB11815783148186973545804580450744144553812
*6 図解 ピケティの「21世紀の資本」9章 日本の「格差」を解消する処方箋 ピケティ理論で読み解くアベノミクス

その他の参照:
田嶋智太郎『高学歴貧困女子が読み解くピケティ』第1章
『増補新版「格差」の戦後史』(橋本健二著/河出ブックス)
アベノミクス、なぜ若者の貧困化を加速?景気回復が格差拡大・非正規雇用を増長、http://biz-journal.jp/2014/01/post_3862_2.html
ピケティ理論からみたアベノミクス、最終目標は”再分配”の実現!、http://www.s-ichiryuu.com/archives/32939426.html
ピケティでアベノミクス批判する残念な人々、http://toyokeizai.net/articles/-/60156?page=3
ピケティ氏も困惑? 日本だけ格差縮小、と米紙指摘 景気後退などが影響か、http://newsphere.jp/economy/20150212-2/

以上

*この投稿は、2017年に私、GreenDog本人が書いたものを改正したものです。内容が少し古いかもしれませんが悪しからず。



拙作ではありますが、また書きたいと思います。 サポートしてくれたらヤる気を出すゲンキンな奴ですので、何卒。