かき鳴らしてくれ!
「好きな音楽のジャンルは?」
と聞かれたら、、少し困る。
会話のきっかけとしてそんな話をする人は多いのだろうが、私はその問いに即答できない。
まず思うのが、単に好きと言っても自分はその分野について特別詳しいわけでもないしな。。とか。
私は好きなアーティストがいればずーっとその人たちの楽曲を聞き続けるタイプで、そのアーティストがどんなジャンルに属しているかとか、音楽界の位置づけとか知らないことも多いし、、これは好きと言っていいものなのか!?と3秒くらいの間にいろんなことを考える。
(考えすぎや)
そして結局のところ
「まぁいろいろ聴きますけどね~」
みたいな『The 音楽に思いれのない人』のような返答になってしまう。
私のこの返答によって、未来の『音楽の友』になり得る人たちをたくさん逃してきたかもしれない。
今になってそう思う。
でもでも本当のところを言うと、
私は『ロック』が好きだ。
別に隠すことでもないのだけれど。
仲良くなった人に打ち明けると驚かれることが多い。
どうも私にはそんなイメージがないようで
「なんか意外…!」とか言われる。
ロックといっても幅は広い。
メディアへの露出の多いバンドもいれば、インディーズでライブ活動を主戦としているバンドもある。
そしてどんどん音楽が多様化していく中で「ロックはこれだ!」とは言いづらいところはある。
でもそんな中でも、ロックという人々の共通認識がまだ根強く残っているのだな、と上記のやりとりをしながら思ったりする。
正直なんで好きなのか。自分でも上手く説明できない。
ただ、私の勝手な解釈を話すと
ロック=『かき鳴らせ!』
という自分の中の普遍的な要素がある。
もちろんロック以外のジャンルでも、かき鳴らしている人たちは沢山いるのだろうけど、やっぱりそんな表現が似合うな、と思う。
『かき鳴らす』という動詞にはちょっとした荒っぽさや不器用な匂いが感じられて私は無性に心惹かれるのだ。
これは、自分の『かき鳴らせない』叫びを代弁してくれるような感覚になるからかもしれない。
昔からコミュニケーションが苦手だった私は、音楽がいろんな場面で手を貸してくれた。
楽器を吹いたり、歌ったり、音楽に浸っているときはいつも自分らしくいられる気がした。
なかでも、ロックと言われる世界は自分からは遠いような近いような存在で、不思議な魅力を帯びていた。
青筋立てて叫びながら歌う彼らが、当時とても輝いて見えた。
◇
先日、私の好きだったバンドがYouTubeで生配信LIVEをしていた。
好きだった。と過去形になってしまうのは、彼らの音楽と久しく会っていなかったからだ。
好きなバンドはいくつかあるけど、その中でも特に私の青春時代に擦り切れるほど聞いたバンドだった。
当時、私の周りにはこのバンドを知っている人が少なかった。
(とは言っても、バンドに詳しい人からするとめちゃくちゃ有名な人気のあるバンド。)
まず、周りの女の子たちでロックを聴いている子自体がいなかった。
いたのかもしれないけど、出逢えなかった。
自分から言わないんだからそりゃあね。。と今では思う。
だから当時は、ただひとりその世界に没入して楽しんでいた。
その人たちのライブには行ったことがなかったけど、体がその歌とビートを常に欲していた。
彼らの楽曲はほとんどが英語だったため、歌詞はきちんと理解できていない。
単語を拾って何となくこんな歌かな、というくらい。
でも旋律や歌い方を繰り返し聞けば、ぼんやりとその曲のメッセージが不思議と分かる気がした。
訳詞を見て、ああやっぱりそうか。
と感じることも多かった。
決して、強い人が歌っているのではないのだろうなと想像できた。
激しい楽曲の端々に、胸の奥をそっとなでるメロディーがあったから。
体に響くビートの中に、控えめで柔らかな優しさがあったから。
◇
いつしか大人になって、メジャーで名の知れた音楽を追うようになった。
そこでは良い音楽にたくさん出会えた。
カラオケでみんなと歌えるし、この曲良いよね。とか言いながら聴いたり歌ったりするのがとても楽しかった。
ただ一方で、自分の『かき鳴らす』音楽の居場所は少しずつ小さくなっていった。
知らず知らずのうちにそれらがこぼれ落ちていくようだった。
拾い上げようとしても、あのときのトキメキが少しずつ薄れているような気がした。
自分の『好き』より、誰かとの共有を楽しむことの方に魅力が傾きつつあった。
◇
彼らの音楽と再会した日。
ああ、やっぱり好きだな、と思った。
そして、好きだと思える自分で良かったなと思った。
昔のようにトキメキが胸に溢れた。
今のように器用に生きれていないあの日の自分に再会した感覚はあったけど、それも嫌じゃなかった。
自分の『好き』は色褪せないし、深いところで普遍的なのだと思った。
「大人になったから楽曲を作るのにちゃんと納期は守れるし、前みたいに周りに迷惑はかけなくなった。でも、そこで失われるものもあるんじゃないかな、とたまに思う。」
画面の向こうにいる彼は、そんなことを言っていた。
でもすぐ後に、
もうひと暴れできるチャンスはある。と前向きな言葉が添えられた。
何かを生み出し続ける人たちは、こんなことがほんの少し胸中をかすめるのかもしれない。
10年間の活動休止など、いろんな歴史を経た彼らと、この時代を共に過ごせることが素直に嬉しい。
自分の胸をかき鳴らしてくれる音楽を、私はこれからも追い求めるのだ。
きっと。
The only heaven I know is heaven in the sound
僕の知っている唯一の天国はサウンドの中
All I can do is close my eyes
目を閉じれればいいんだ
The only heaven I know
僕の唯一の天国
My stereoman is fine
ステレオマンは元気にやっているさ
He takes me everywhere I go
彼はどこへだって僕を連れて行ってくれる
『Stereoman/ELLEGARDEN』
読んでいただき、ありがとうございます。
ここまで読んでいただいたこと、とても嬉しく思います。