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時代小説のすゝめ 『へっつい飯』 読んでいると腹が減る

飯(メシ)を楽しめ


時代小説『へっつい飯』は、和田はつ子の時代小説シリーズ、『料理人季蔵捕物控』のうちの一つ。

このシリーズは、過去の身分を隠して一膳飯屋を営んでいる、元お侍の『季蔵(としぞう)』が、様々な事件や料理を通じて、料理人として成長していく姿が描かれる。

シリーズの特徴として、季節感や、その時々の状況や心情に合わせた、数多くの料理が登場する点が挙げられる。

そのどれもが、やたらと美味そう。
読んでるだけで、味や見た目が想像できてしまう。

さらに、調理方法や、レシピもかなり詳細に記されているので、そこもまた味の想像に拍車をかけてくる。



著者紹介

和田はつ子は日本の小説家で、主に時代小説やホラー小説を執筆。

  1. 血液型はAB型

  2. 多くのシリーズ作品を執筆しており、代表的なものには以下が挙げられる

    • 文化人類学者・日下部シリーズ

    • 法医学鑑定人・田代ゆり子シリーズ

    • 料理人季蔵捕物控シリーズ

    • お医者同心中原龍之介シリーズ

    • 鬼の大江戸ふしぎ帖シリーズ

    • 口中医桂助事件帖シリーズ

  3. 彼女の作品は、歴史的背景と料理文化を融合させた独特の世界観で多くの読者を魅了しています。

  4. 「口中医桂助事件帖」シリーズは2005年から始まり、16作目で最終巻を迎えました。
    このシリーズは、歯の重要性や江戸時代の歯科医療について詳しく描写されている。

  5. 和田はつ子の作品は、料理と人間ドラマを巧みに融合させたものが多く、読者から高い評価を得ています。

和田はつ子は、時代小説の中に料理や医療といった専門的な要素を織り交ぜることで、独自の作品世界を築いている作家だと言える。




『料理人季蔵捕物控』シリーズの特徴


シリーズ全体として、安心して読める「ソープオペラ(長編連続ドラマ)」的な作品である。

このシリーズの魅力は、元お侍の季蔵が主人公で、一膳飯屋と隠れ者稼業を営んでいるという設定にある。

シリーズは4話の短編連作形式で進行し、各エピソードに季節感あふれる料理描写が散りばめられているのが特徴。

そして、各エピソードのバラバラに思われた話しが一つの事件につながり、それを季蔵が鮮やかに解決するさまは、実に痛快だ。

料理が中心となり進行していく、シリーズ物としての引き込まれる展開や、江戸の季節感を同時進行で楽しめる点が非常に高く評価されている。


レビュー・感想


料理と物語の融合

物語の中で描かれる料理が、登場人物たちの感情や関係性を深める重要な要素となっており、特に季蔵が料理を通じて人々の心をつかむ様子が印象的。

料理がただの背景ではなく、物語の中でキャラクター同士の交流を深める役割を果たしている点が、本作の大きな魅力。

そして何よりも美味そう。
これに尽きる。

へっつい(かまど)で炊いた銀シャリ食ってみてえ。


キャラクターの魅力

主人公の季蔵は、元武士でありながら料理人として生きており、その成長していく姿に心打たれる。

彼の人間性や成長過程に共感する読者も多く、特に彼とおき玖(ヒロイン)との関係性は注目せざるを得ない。

季蔵のキャラクターの深さや、彼が経験する様々な出来事を通じて見せる人間味は、読者を惹きつけてやまない要素となっている。


ストーリー展開

短編連作形式で構成されており、各話が独立しつつも全体として一貫したテーマを持っている。

この形式が、次々と展開される事件や料理と非常にマッチしている。
キャラクターの魅力と相まって、グイグイ引き込まれていく。

連作形式でありながら、個々のエピソードがしっかりと構築されており、それぞれの物語が持つ独自の魅力が全体を通して感じられる。


感情的な深み

物語は単なる事件解決物のミステリーではなく、人々の思いやりや切なさも丁寧に描かれており、感情的な共鳴を引き起こす。

特に料理を通じて繋がる人間関係の深さが重視されている。

人と人とのつながりや、日々の生活における温かさが丁寧に描かれており、読者の心に深く響く作品となっています。




まとめ


『へっつい飯』は料理と人間ドラマを巧みに融合させた作品であり、多くの感動と、食の素晴らしさを教えてくれる。

料理の描写を通じて、江戸の庶民の生活や人々の心のつながりを感じさせるこの作品は、時代小説としてだけでなく、料理に興味のある読者にも楽しめる内容となっている。

シリーズを通して、人間の温かさや時代の風景を味わうことができる『へっつい飯』、ぜひ一読をおすすめします。


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