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先進事例を数多く生み出す千葉県・熊谷知事が語る「行政の可能性」と「官民連携の要諦」【日本GRサミット2021 レポート】

全国青年市長会と連携し、先進的な官民連携に取り組んでいる全国の若手市長の皆さまを登壇者に迎えて毎月GR勉強会を開催する 日本GR協会 は、2021年の集大成となる大規模イベント「日本GRサミット2021」を12月26日に開催しました!

サミットのテーマは「官民連携の最前線!GRアワード発表 ~トップランナーが描く地域の未来図~」ということで、県知事就任後、数々の改革やコロナ対策で群を抜く活躍をしている千葉県・熊谷 俊人知事をメインゲストにお迎えするとともに、初めての試みとして、全国の官民連携事例から社会課題解決の好例となる事業を「GRアワード」として表彰しました。

その他にも、行政の現場を理解し、民間のビジネス環境を把握しながら課題解決にあたるプレーヤーに多数登壇いただき、具体的なメソッドを学んでいただく機会になったのではないでしょうか。

このイベントレポートでは、日本GR協会・朝比奈 一郎 理事(青山社中株式会社 筆頭代表CEO)がモデレーターを務め、千葉県・熊谷 俊人 知事に登壇いただいたメインセッションの内容を詳細にお届けします。

(執筆:日本GR協会 事務局長・加藤たけし

熊谷知事を紐解く4つのポイント 〜朝比奈理事から他己紹介〜

朝比奈:簡単に自己紹介させていただきますと、日本GR協会の理事をさせていただいておりますが、「青山社中」という会社を創業して11年目になります。もともとは経産省で官僚を約14年やっていたんですけど、「このままだと日本が元気にならないだろう」ということで、さまざまな活動をさせていただいています。今回モデレーターを仰せつかっているのは、今8つの市・町で経済活性化を中心にアドバイザーをさせていただいていることと、一番大きいところとしては、熊谷さんともう十年来ぐらいですかね。

熊谷:そうですよね。長いですよね、朝比奈さんと。

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朝比奈:ありがとうございます。温泉での裸の付き合いから始まって(笑)青山社中のイベントでも喋っていただいたり、さまざまな会議でご一緒させていただいたりということもありますし、できるだけ熊谷さんの率直なトークを展開できればということで、よろしくお願いします。

最初、ご紹介するまでもないとも思いましたが、熊谷さんのご経歴を私から他己紹介的に申し上げた方が、よりノリノリで喋っていただけるかなと思い、ちょっと僭越なんですが、ご用意させていただきました。

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まず、1978年生まれということで、大変若い知事でいらっしゃる。これがもう何より、期待ですよね。日本の未来、将来をつくっていく中で、政治家はどうしても高齢の方が中心になってしまうわけですが、熊谷知事のこの若さが1つ目のポイントだと思います。

また熊谷さん、実は奈良県の天理市生まれということで、千葉生まれではないんですよね。そういう方が、真剣に千葉のことを考えて、知事をされているという。ここが2つ目のポイントだと思います。

そして、2001年に早稲田大学を卒業後、まず民間企業のNTTコミュニケーションズにお勤めなんですね。NTTって名前も付いてることから、ちょっと官のイメージもある中で、官民連携というテーマでいう非常に大きなポイントということで、3つ目に挙げさせていただきます。

他己紹介の最後に、とにかくすごいなと思うのは、選挙、見てください。出る度に最多得票ということですね。初めての際はご祝儀的に得票が結構多くて、でも次の時は「どうせ勝つでしょ」なんて話で票が減ったりするのが一般的ですが、千葉市長時代はずっと最多を更新。そしてこの前、県知事選も過去最多得票ということで、市民・県民との連携も非常にされてるなと。

この4点が、官民連携というテーマで深堀りする際に非常に興味深く、また素晴らしいと思うんですが、改めて熊谷知事、いかがでしょうか。自己紹介を含めて、熱弁を振るっていただけたらと思います。

官でなければできない領域がたくさんあり、行政の可能性に惚れ込んで仕事をしている

熊谷:ありがとうございます。たしかに私のように、地元で小中高と過ごしていない形で市長や知事をさせていただくというのは、かなり珍しいと思います。私は千葉県では浦安で幼稚園・小学校と過ごしていましたが、千葉市で小中高と過ごしていたわけではないので、千葉の市民の皆さんに、非常に勇気を持って選んでいただいたなという風に思ってます。

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NTTコミュニケーションズはまさに朝比奈さんの仰った通り、NTTは元々は官でしたので、官僚組織的な雰囲気もやっぱりありました。そういった意味でも、会社の仕事の中で官民連携に自然と携わってきたところがあるというか、政治の世界に入って、首長になってからも生かされているかなと思っています。

あとは朝比奈さんをはじめ、いろいろな民間経営者の方々とお付き合いをさせていただいてるので、そのネットワークの中からも面白い提案や気づきをたくさんもらったりして、それを市政や県政に生かしているというのが実態です。今回も朝比奈さんや日本GRサミットのご登壇者の方々の話も聞きながら、次への気づきを私自身も得ようとしています(笑)


朝比奈:ありがとうございます。改めて、官民連携の際に、官の掟とかルールみたいなものと、民の常識との乖離がやはりあると思うんですよね。改めて言語化すると、官の特色、民の特色、そしてこの乖離をどういう感じで埋めていくか。


熊谷:官と民の大きな違いとしては、多くの方がご存知の通り、スピード感、時間軸の違いというのは、やはり間違いなくありますよね。民間の皆さんが期待しているスピード感と、行政の単年度予算主義という特徴…もちろん補正予算などで、年度途中でも様々な意思決定、予算化はできるようにはなってきましたけど、原則として単年度予算主義なので。

たとえば3月や4月に話が盛り上がっても、次年度の予算で、となると、結局10月〜11月あたりの予算要求で、その次の4月からようやく事業がスタート。どうしても時間がかかってしまいます。

あとは、前例・先例がない、官民連携のような新たなチャレンジをする場合は、首長や行政の状況にもよりますが、たとえば議会が意識しなければいけないハードルの1つになるケースもあります。そういう点でも、官と民とは少し違うなと感じています。

一方で、私はよく「官は独占ビジネス、独占領域を持つ」と言っているんですけど、官でなければできない領域がたくさんあるのも事実ですよね。そうした領域はやはり、非常に魅力的です。パブリック、公のためにできる独占的な領域、もしくは空間をこれだけ多く持ってますので。そこに民間のエネルギー・知恵を入れるだけでも、かなり世界は変わってきます。民間出身者として、私自身も今も、行政の可能性に惚れ込んで仕事をしているような状況です。

ハブとしてのスタンスを意識した結果として、先駆的な官民連携事例が生まれてきた

朝比奈:熊谷さんにご出演いただいたのは約1年半ぶり(※執筆者注)、当時は市長でいらっしゃいましたが、その時にもまさに「歩く官民連携」なんてご紹介もさせていただきました。熊谷さんがいつ頃から「官民連携は大事だな」と意識されたかというか、そういう意識が強くなられたんですか?

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熊谷:まず、官民連携っていうのをそんなに強く意識してきたということはなくてですね(笑)民間も含め、いろいろなパートナーと組んでいる結果として、官民連携事例になっているというところでしょうか。

私は「集合知」っていう言葉が好きなんですけど、インターネットがどうしてこんなに社会を変えたのかというと、マッチングですよね。誰かが持っているものがアウトプットされることで、それを必要としている人が、それに出会うことで意味があるものになる。今までは本にしかなかった知恵が、他の人にとって価値のあるコンテンツになり、さらに新たな付加価値が生まれていったり、それこそメルカリのようなシェアリングエコノミーが生まれたり。そういう意味でも、マッチングをしていくっていうのはすごく大事だと思っています。

行政は独占分野、独占空間をたくさん持っている。その分野・空間に関与したいと思っている人は、これはビジネスとしてももちろんですけど、社会貢献という意味でも、実はたくさんいるんですよね。そこをマッチングすることによって、行政単独以上の力を、県民や市民、国民に返すことができるというのが、私のスタンスです。

千葉市長に私が就任した時、財政は大変厳しく、財政を再建していく中で、単に削ってしまうと単なる縮小均衡の社会になってしまうので、いかに同じものを提供しながらも、行政の負担を軽減することができるかということで、行政じゃなくてもできる、もしくは行政じゃない方がより少ないコストでうまくできるようなもの、そういうものを見つけては、民間に託していくという流れを作るように心がけました。

たとえばちばレポも、道路が壊れた時に、それを行政が全てパトロールして直すよりも、見つけた方が写真を撮っていただいて、アプリでレポートしてもらうことで、市民も巻き込んでメンテナンスしていくという考え方の中で生まれたものです。

私自身が千葉市、千葉県のハブでありたいと思ってますので、いろいろな方の思いを聞いて、これだったらコラボ案件ができるんじゃないかと思って進めていったら、先駆的な事例も結果的に生まれてきたと言えるのではないでしょうか。

後編へ続く。


以上、千葉県・熊谷 俊人 知事に登壇いただいた「日本GRサミット2021」メインセッションの前半の内容をお届けしました。

注)文字起こしをベースに、執筆者が記事内の見出しをつけました。

・現場との距離、「三者連携」のコーディネート…県知事と政令市長の権限の違いは?
・官民連携が加速する仕組みづくり、デジタルに関する持論
・ボリュームの大きい領域こそ、社会的インパクトのポテンシャル
・おわりに(編集後記)

など、イベントレポートの後編はこちら

また、当日の様子はYouTubeでも公開しているので、ぜひご覧いただければと思います。

最後になりますが、日本GR協会が企画するイベント情報はPeatixやFacebook、そしてTwitterで随時発信中です。

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Peatix:https://gr-summit.peatix.com/
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執筆者:日本GR協会 事務局長・加藤たけしプロフィール詳細

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ソーシャルメディアを中心としたデジタル・マーケティングの企業向けコンサルティングを手がける株式会社ループス・コミュニケーションズのコンサルタント(週3正社員)&文部科学省 大臣官房 広報戦略アドバイザー(非常勤国家公務員)の官×民 複業から、2021年には東京都港区役所・区長室の広報専門職へと転身。国×地方の公務員複業も実践。

大学卒業後は人材系の上場企業でWebマーケティング・編集・新規事業立ち上げを経験後、ITベンチャーを経て、デジタルマーケティングのコンサルティング会社へ。

新宿区「子ども・子育て会議」委員を務めるほか、NPOマーケティングや共働き夫婦の新しいワークスタイルに関連する講演や執筆を行っている。准認定ファンドレイザー(ACFR=Associate Certified Fundraiser)。一般社団法人 Work Design Lab 共同創業者・理事。一般社団法人 日本GR協会 事務局長。

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