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AWE Co-Founder Ori Inbarインタビュー全文

2019年5月29日から5月31日の3日間で開催された、世界最大のxRカンファレンスであるAWEの代表 Ori Inbarへインタビューしてきました!そちらの全文をNoteにまとめましたので、ぜひ一読ください!

人物紹介

Ori Inbar (Ori)

AR/VRのアーリーステージへ投資するファンドSuperVenturesのFounderであり、AWEの設立者.

Shota Saito (Shota)

Graffity Inc. Game Director 兼 AWE Nite Tokyo 代表

インタビュー全文はこちらから!

Oriが必ず投資先へのするアドバイスとは?

Shota

今回はインタビューの機会をありがとうございます。
早速ですが、Oriさんはスーパーベンチャーズで投資家として活動されていますよね。その経験を踏まえていくつか質問をさせてください。
最初に、普段投資先に必ずしているアドバイスがあれば教えてください。

Ori

多くの新しいスタートアップが忘れがちなことに、この領域には豊かな歴史があるという点があります。確かに、最近になって多くの人が耳にするようになりましたが、10年以上前から多くのスタートアップがこの領域に挑戦をしてきました。
歴史を学ぶことこそ最も重要だと考えています。過去の挑戦の何がうまくいき、何が失敗したのかを学び、車輪の再発明を防ぐことです。技術的側面、ビジネス的側面、そして最も重要なユーザーエクスペリエンス側面の全てにおいて言うことができます。
AR体験というのは全く新しい顧客体験なので、これから取り組む人が過去の挑戦について知らないまま始めると、完全に間違った道を進んでしまい、結果的に大きな機会を逃すことに繋がるでしょう。

どのようにARの過去を学べば良いのか?

Shota

最近ではARに関する多くの情報を得ることができるようになりました。しかし2010年前後のような過去の情報は見つけづらいと思います。過去の歴史を学ぶ上でオススメの方法はありますか?

Ori

確かに、どこか一箇所に全ての歴史がまとまっている訳ではありません。私自身、2008〜2011年頃にはARに関するブログを執筆していたので、一定の情報はそこで得ることができると思います。もう一つの方法としては、GoogleやYoutubeを活用して過去に何が起きたのかを学ぶのが良いでしょう。その時、去年のような直近の情報ではなく、数年前の情報をしっかり収集することが重要です。
それらを学ぶことで、数多くの正しい判断や避けるべき重要な失敗について知見を得ることができるでしょう。

Oriが投資先の失敗から学んだこととは?

Shota

過去の失敗は成功よりも再現性があると考えています。自身の投資先の過去の失敗からの学びについて、共有できる範囲で教えてください。

Ori

起業家だったりARに情熱を持つ人が陥りがちなのが、自分のアイデアと恋に落ちてしまうことです。経験を持った良いチームを作り、正しく収益をあげられるビジネスモデルを構築する。
このようなスタートアップにおける基礎を常に忘れないことが重要です。
私自身そうですが、ARに対して多大なる情熱を持っている人ほどそれを意識していないといけません。

Shota

テクノロジー的な観点に偏りすぎないようにということでしょうか。

Ori

テクノロジーだけでなく、テクノロジーとユースケースの組み合わせですね。技術的・市場的な限界を越えてたことに取り組んでしまっていました。

Oriが考えるスマートグラスの普及タイミングとは?

Shota

スマートグラスが世の中に普及するのはいつ頃だとお考えですか?また、何がブレイクスルーになるでしょうか?

Ori

2014年の当時、私は本当に数年後の未来には普及していると考えていました。スマートグラスについてのレポートを書いていたのですが、その当時に起きていたことの全てが、すぐに来るぞ!と示していましたね。しかし、実際にはそれより遥かに時間がかかっていますよね。
今年のAWEを見ると、スマートグラスの展示が爆発的に増えています。多くはエンタープライズ向けですが、nrealやNorthのようなコンシューマー向けのものもいくつか出てきています。これらは見た目も良いし便利ですが、まだメインストリームになるほどでは無いと考えています。
普及のためにはユーザーの教育・モバイルとの連携・価格・バッテリーの稼働時間などの課題を解決するのはもちろん、コンテンツが必須となります。最も重要なのは、スマートグラスを手放せなくなるような、日常生活に欠かせないコンテンツが登場することです。
そのため、その状態に到達するまでにはもう数年かかるのでは無いかと思います。
ブレイクスルーを起こすイベントについて、最も簡単な答えはアップルがスマートグラスを発売した時でしょう。彼らはマーケットに投下する正しい時期をよく知っていますし、彼らが多大な投資をしているのも周知の事実です。一部のアナリストは2021年に登場すると予想していますが、そこが一つのタイミングになるでしょう。
ただし、このトピックにおける最も重要なメッセージは、その時期を待っていてはいけないということです。技術・コンテンツ・ユーザーの教育が整うまでには多くの時間を要するからです。
我々は今日のスマートフォンの時代から取り組まなければいけないし、できることはたくさんあります。もちろん、ハンズフリーの世界を待ち望んでいるのも事実です。スマートグラスこそ、真にARをユビキタス化して日々の生活に溶け込ませるためのファクターでしょう。

スマートグラス普及までにARスタートアップが取るべき戦略とは?

Shota

先ほどの内容にも関連していますが、多くのコンシューマーARスタートアップはスマートグラスの普及まで長期戦を挑むことになるかと思います。スマートグラスの普及までにそういったスタートアップが取るべき戦略についてアドバイスをお願いします。

Ori

モバイルARの領域であれば、すでに障壁は無いといって良いでしょう。すでに10億台以上のスマートフォンがARに対応しており、大きな市場が存在しています。AR体験への適応レベルはすごい勢いで上がっており、特にeコマースやエンタメ・ゲーム領域は早いです。そのため、それらの領域であればすでにスタートアップが収益を立てることはできると考えています。
エンタープライズ向けのビジネスも、もちろんスタートアップの収益源として重要です。3〜4年前からすでに市場としては確立しており、今でも十分に選択肢に入ります。
また、それらの中間も一つの手段です。ユーザー中心を基本としながら、B2Bをターゲットにしてプロダクトを販売してエンドユーザーに届けることもできるでしょう。これは収益を確保して生き延びるには良い選択肢でしょう。

Oriが語る、Spatial Wikipediaとは何か?

Shota

AWEのオープニングでも、空間コンピューティングの例としてSpatial Wikipediaを挙げていましたが、具体的なイメージがあれば教えてください。人々の生活はどのように変わるのでしょうか?

Ori

Spatial Wikipediaは、名前がそのままかは分かりませんが、実際に起きることだと考えています。
今あるWikipediaは多くの人が参加して作られている情報の集積ですよね。Spatial Wikipediaは、Spatialであること以外は全く同じです。現実世界でどこに行ったとしても、ユーザーは日々にまつわる情報を全て取得することができるのです。そしてそれはテキストベースでないことだけは確かです。
例えばコーヒーメーカーを見たとき、テキストがポップアップして使い方を教えるようなことにはならないでしょう。ユーザーはそれをビジュアルで見たいはずです、そうした方が圧倒的に素早く情報を処理できるからです。
すでにいくつかのエンタープライズ向けソリューションで、スマートグラスを通して機械の修理方法を表示する事例が存在しています。このように、日常生活でARを活用して機械とインタラクトするようになると、我々が日常的に行なっている全ての行動から情報を収集できるようになるはずです。
そして多くの人々が同じように使い始めると、ビジュアル化されたマニュアルに近いものを作り上げることができます。これらは、AIに機械を使う人々を観察させて学習させることで、3Dビジュアル化されたものを自動的に作り上げることができるのではないでしょうか。
例えばレストランに行った時、どんな料理があるのか知りたいですよね。今でもメニューを見ることはできますが、他の人が食べているものを見たり、料理自体がビジュアル化されている方がよっぽど分かりやすいと思います。
Spatial Wikipedia自体は、既存のWikipediaのようにオープンになるかもしれないし、どこかの会shが作るかもしれません。重要なのはとても多くの人々の知識を収集し、世界がどのように動くのか、世界をどのように操作するのかを明らかにする機会があるという点です。
デザイン領域の言葉で、「アフォーダンス」というものがあります。これはドアについたハンドルの形状で押すか引くかを伝える、といったような考え方です。このアフォーダンスの考え方をデジタル情報で拡張するイメージで捉えてください。

スマートグラス時代のプライバシー問題をどのように対応するべきか?

Shota

今年のAWEではプライバシーに関する議論が盛んに行われていた印象でした。また、直近ではカリフォルニアのプライバシー法の改正が来年に決まっているなど、社会的にも関心が高まっている分野だと思います。スマートグラスは、どのようにこの問題に対処すべきでしょうか?

Ori

2つあります。まず一つ目は、今言ってくれたとおりプライバシーへの関心が高まっていること自体が良い兆しだと考えています。今ではこの領域にする全ての企業がプライバシーを重要課題だと捉えていますよね。それだけでも、過去に起きたようなことを防ぐための重要な一歩になるでしょう。それによって、プライバシーに関する懸念を解決するアプローチを製品そのものに組み込んだデザインを各社がするようになるからです。この状況は、業界全体として非常に優れた一歩を踏み出せていると考えています。
次のポイントは今年のKey Noteでも少し触れた内容ですが、ビジネスモデルについてです。GoogleやFacebookのビジネスモデルが抱えている課題として、彼らはユーザー行動をトラッキングして収益に変えている点があります。空間コンピューティングの分野は、このビジネスモデルを変える機会になります。
Spatial Wikipediaの下りでも触れましたが、スマートグラスが普及すると、人々が生活するだけで自然と世界がどのように動いているのかの情報を収集することになります。私は、人々が収集したこの知識をマネタイズすることができると考えています。自分の好みを送って広告会社から情報を押し付けられるのではなく、製品に関する知識を送ることでマネタイズできるようになるのです。このビジネスモデルが成立すれば、プライバシー問題も回避することができるでしょう。
また、Appleのアプローチは他の会社よりも数段プライバシーに配慮していると言えるでしょう。彼らはユーザーの個人情報ではなく製品とサービスを販売することに注力しているからです。

インタビューは以上になります!
Oriさん貴重なお時間いただき、ありがとうございました!

さいごに

この度は、AWEが行なっている支部活動であるAWE Niteの東京支部立ち上げに伴い、AWE Nite運営メンバーが実際に現地に飛び、AWEを視察してきました!
インタビューは、Graffityの斉藤、MESONの梶谷・小林、ENDROLLの大島で行いました!みなさんお疲れ様でした!

AWE Nite Tokyoへ興味ある方へ

AWE Nite Tokyoは、定期的にARに関するイベントを開催していきます!
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引き続きAWE Nite Tokyoをよろしくお願いします!

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