見出し画像

スクリューキャップのお話

ワイナリーでは、2020年産ワインの瓶詰めの準備を始めています。
グレイスワインでは、今から10年ほど前のことになりますが、2010年ヴィンテージより、一部のワイン栓でコルクから「スクリューキャップ(ステルヴァン)」への変更を始めました。

見た目がきれいなのは、天然コルクに他なりませんが、天然コルクには、「ブショネ」とよく表現されるコルク臭汚染の問題がつきまといます。通常3%程度の汚染とは言われていますが、実際は多い時で、10%近くのブショネが出ることもあるようです。

原因となるのは、TCAに代表されるクロロア二ゾール類です。
TCAは、木材に含まれるフェノールと塩素の反応、微生物の代謝が作用し生成されます。前駆物質をたどれば汚染源ははっきりしますが、「TCAはどこから来るのか」という問いには、さまざまな見方があるようです。

醸造家は、ワイナリー内で塩素を洗浄に使わない、衛生に気をつけるなど、コルク汚染を防ぐために意識していますが、既にコルクガシ(コルクの木)の段階でTCAが検出されている例もあります。
コルク臭が特に醜い欠陥臭とされるのには、100%は避けられないという他に、少量でも感知しやすい香りという性質があるからだと思います。

ブショネのリスクを考えると、熟成を待たずとも楽しめるワインには、スクリューキャップがちょうど良いように思っています。
グレイスワインでは、「キュヴェ三澤」や「あけの」などは、今も天然コルクを使用しておりますが、天然コルクに関しては、信頼のできるスペインのパラモン社から直接輸入をさせていただいています。

ブショネの心配が軽減されるだけではなく、密閉性の高い性質を持つスクリューキャップには、品質を保ち、ワインの酸化を防ぐという大きな利点があり、また利便性が高いことも魅力的に感じられます。
グレイスワインでは、スクリューキャップ導入に伴うワインボトルの軽量化により、輸出の際などの二酸化炭素排出量を削減することもできました。

コルク栓ではなく、スクリューキャップを採用することにより、注意しなければいけないことももちろんあります。中でも、スクリューキャップでは、より還元的な状態で熟成していくことに配慮しなければなりません。

甲州のような酸化に敏感な品種は、醸造中であっても、貯蔵中であっても、還元と酸化のバランスを考えていくことが欠かせません。
フレッシュな白ワインにとって、酸化は大敵ですが、還元状態で生成される硫黄化合物の香りもまた、欠陥臭の一つに挙げられます。この香りは、濃度によって、腐った卵、にんにく、玉ねぎなどと表現されます。
この香りの原因となるのは、硫化水素という物質ですが、酵母がストレスを感じるときや、澱(発酵の役目を終えて底に沈澱した酵母)から生成されます。
ワインが還元状態に傾くと、果汁を空気に触れさせるなどとして、応急処置を取ることが一般的ですが、それでも、硫化水素を除去できない場合、海外のワイン生産国では硫酸銅を添加することもあります。

グレイスワインで使用しているのは、ステルヴァンというタイプのスクリューキャップです。
オーストラリアやニュージーランドでは、ステルヴァンが広く採用されていますが、他の品種と甲州とでは状況が違ってくるので、彼らのノウハウを全てお手本にするわけにはいかないという現実はあるものの、甲州の繊細な香りは、たとえブショネとまではいかなかったとしても、ボトル差が生まれるなど、多少のコルク栓の影響は受けやすいことを考えると、実際、海外では特に、ステルヴァンが甲州の香りを守る強い味方になってくれていると言うことができます。

そして…ステルヴァンの正しい開け方も記載させていただきます。
「スクリューキャップ」は開けるのにわざわざ道具を用意する必要はなく、手で開けることができます。
ジュースやコーヒーなどで使われている缶やPETボトルの「スクリューキャップ」と違い、ワインボトルに使われている「スクリューキャップ」は、実は開け方にコツがあります。

正しい開け方はこちらです⇓
①キャップのミシン目より下部分をつかみ固定します


②もう一方の手でボトルの下を持ちます
③キャップを動かさずに、ボトルの下部を時計回りに回転させます



④ 「カチッ」という音がして、ミシン目が切れます


⑤ ボトルをまっすぐに持ち、一方の手でスクリューキャップをつまみます


⑥ キャップを時計と反対周りに回すと開栓できます

キャップを回すのではなく、ボトルネックのスカート部分を持ち、ボトルを回すのが正しい開け方です。
ソムリエナイフやカッター、はさみなどを使用し、無理に開けようとするとケガをする恐れがありますので、絶対に使用しないでください。

日本では、スクリューキャップ=安っぽいというイメージもあるかもしれませんが、オーストラリアに出張した際、3万円以上の赤ワインにステルヴァンが使われていました。ワインの世界もどんどん進化しています。
手軽に開けられる機能美を持ちながらも、品質が保証されるワイン栓が市場にも増えてきています。
グレイスワインでもワインの酒質にあったワイン栓を採用していきたいと思います。

この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?
気軽にクリエイターの支援と、記事のオススメができます!
ありがとうございます!乾杯🥂
19
1923年に山梨県勝沼町に創業した家族経営ワイナリー、グレイスワインの公式ノートページです。 http://www.grace-wine.com