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第4次産業革命を支える能力

 ボルドリッジ・エクセレンス・フレームワークは2年ごとにその中身が見直されています。2021–2022版ボルドリッジ・エクセレンス・フレームワークが特に着目した一つのポイントは「デジタル化と第4次産業革命」です。‎

 このため「第4次産業革命」や「DX」に関して情報を集めてますが、YouTubeのリコメンドで、最近登録された「コロナ危機が加速する第4次産業革命 活躍する人材に求められる『6つの力』」(多摩大学大学院MBA特別公開セミナー 田坂広志名誉教授)というビデオの紹介があったので、見てみました。

 ここでは、コロナ危機が何かを変えたのではなく、第4次産業革命として進んでいたものをコロナ危機が加速したとして、第4次産業革命を支える新たな技術を概観し、それによって変わる雇用環境と、それに備えるために何を身に着けるべきかを1時間余の中で紹介しています。

 以下はそのメモです。

 第4次産業革命で進められていた方向性で、コロナ危機がそれを加速したポイントは、
・空間の移動を減らしていこう
・人と人の接触を減らしていこう
という2点であり、そこで重要となるのがコンタクトレステクノロジー(非接触技術)。

 具体的には、以下の技術群。
オンライン会議、VRやAR・・・対面をなくす
ロボティクス、人工知能・・・人の代わりに働く 
ドローン、自動運転・・・人の代わりに運ぶ

 コロナ危機では、飲食業、旅行業、交通業などで失業が発生したが、第4次産業革命ではコロナ後の第二の失業が発生する。それは、次の2つのレベルに分けられる。
 第一のレベルの失業 ロボティクスやドローンなどで置き換えられるもの
 第二のレベルの失業 人工知能によって置き換えられるもの

 第二のレベルの失業では、知識労働にその範囲が及ぶ。
 特に
・論理的思考による判断
・専門知識を活用
は人口知能が得意な分野であり、論理思考と専門知識だけで仕事をしている人は淘汰される。

 例としては、MR営業、不動産の評価・審査など。士業が半分なくなると言われており、弁護士、会計士や、医師の一部の業務も人工知能に置き換わる。

 そうした時代を迎えて、我々はどのような能力を身に着けていくべきか。

 それは、人工知能では置き換わらない、3つの能力:
・ホスピタリティ
・マネジメント
・クリエイティビティ

1.身に着けるべきホスピタリティ
 ホスピタリティーといえども、言語的なコミュニケーションはAIに置き換わる。「そうはいってもそこに人がいた方がよい」という職種は、非接触の時代を迎え、考えを変えざるを得なくなった。
 身に着けるべきは、もっと高度な能力は次の2つ。
・非言語的コミュニケーション能力
 お客様の無言の声に耳を傾け、心の動きを言葉でなくても理解できる。
・顧客に対する深い共感
 非言語的コミュニケーション能力と一対で力を発揮する。
 相手の共感を引き出すではなく、我々が目の前の人に共感できる能力。

2.身に着けるべきマネジメントの力
 初級の部分、日本語で言う「管理」と訳される業務は置き換えられる。それは実際には、財務マネジメント、資材マネジメント、人材マネジメント、プロジェクトマネジメントなど、膨大なデータをもとに最適な解を算出して進める業務。
 人材マネジメントでは、人材の最適配置など。人材育成などは残る。
 身に着けるべきは、もっと高度な能力は次の2つ。
・成長のマネジメント能力
 組織のメンバーがプロフェッショナルとしてまた人としての成長を支える。
 コーチング的な能力がそれにあたるが、単にコーチングの資格を取ればよいということではなく、自分がスキル、センス、テクニック、ノウハウを持っていて、それを部下、社員に伝えられるということが大切。
 人間としての成長を支えるということについても、自分自身が人間としての成長を目指して歩んでいることがベースとなる。そのまわりに成長の場が生まれてくる。
・心理マネジメント能力
 心のマネジメント能力。うつ病のような、対人関係で悩んでいるメンバを支える能力。
 この能力の基本になるのは、カウンセリング能力であるが、その先、エゴマネジメントの能力が重要。それには、自分自身のエゴマネジメントができている、自分の心の中のエゴの動きが見えることがベースである。

3.身に着けるべきクリエイティビティ
 革新的な技術が開発できる、斬新なデザインが発案できる、ということではない。
 誰にも身に着けられる次の2つの能力。
・集合知のマネジメント能力
 みんなの知恵をうまく引き出せる能力、集団としてのクリエイティブな状態を作り出せる能力。
 その能力の基本にあるのは、メンバがわくわくするようなビジョンや目標を語れる能力であり、自分自身がわくわくしていることが根源である。
 ここでもエゴマネジメント能力が必要になる。メンバのエゴの心の動きが見えており、皆が楽しそうにしているかを判断できる。
・組織内アイデア実現能力
 組織において新たなアイデアを発案するだけでなく、周囲に魅力的に説明し上司をうまく説得し組織を円滑に動かすことによってそのアイデアを実現する能力。

 ビデオで語られることはここまで。もちろんビデオでは事例も交えて、わかりやすく語られていました。

 ここで語られたことは、ボルドリッジでは、リーダーシップの能力、特に、「先見の明のあるリーダーシップ」、「人を大切にする」「イノベーションに取り組む」という核となる価値観と概念で示された、リーダーに求められる能力と共通する点が多くあります。

 第4次産業革命後の世界では皆がリーダーシップを持つことが重要というようにも聞こえました。

★★

 筆者らGQFが翻訳した「ボルドリッジ・エクセレンス・ビルダー【日本語版】」は、米国NISTのウェブサイトからダウンロードできます。ページ下方の Non-English Versions / Japanese を参照ください。
 ボルドリッジの「核となる価値観と概念」はその概要が記されています。

Baldrige Excellence Builder
2021–2022 edition
www.nist.gov


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