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コーポレート・ガバナンス関連ニュース(2019/10/10)

「最恐投資家」を怒らせたユニゾ、エリオットが抗議書簡

【記事の注目ポイント】ユニゾホールディングスに対するエイチ・アイ・エス(HIS)による敵対的TOB(株式公開買い付け)に端を発した企業争奪線が混とんとしてきた。当初、HISへの対抗からユニゾ側は米投資ファンドのフォートレス・インベストメント・グループをホワイトナイト(白馬の騎士)として支援を要請。9月末にHISの敵対的TOBを事実上退けることに成功した後、今度は自ら支援を依頼し、賛同表明をしていたフォートレスの公開買い付けに対しても「当社への買収提案に対する対応の基本方針」に沿うものではないとして、一転賛同表明を撤回していた。こうした中、同じくユニゾ株に投資をし、現在は筆頭株主であるアメリカのアクティビストファンド「エリオット・マネジメント」がユニゾの取締役会に対して、抗議書簡を送ったことが明らかとなった。

【コメント】ユニゾの取締役会に対して、エリオット・マネジメント送った書簡では、主に以下の点について言及されている。

①ユニゾは企業価値において従業員処遇を優先する必要があるため、それに反するフォートレスの提案には賛成できないとするが、そもそもHISからの敵対的TOB提案時を含めてこの件に対する具体的な発表などはなかったではないか。事実上、フォートレスを利用し、用が済んだから追い出すための後講釈ではないのか

②ユニゾの保有する米国内の不動産を売却して得た資金でユニゾ従業員等が出資する会社がTOB後のフォートレスから株を買い取るという計画を提案したが、これまで全くそのような話はなくあまりに唐突すぎる。一体、どのような考えに基づいて、そのような計画が突如出てきたのか

書簡の最後には、「HIS及びサッポロによる公開買付けに対する貴社のこれまでの対応において現れた、開示内容の欠落及び利益相反のおそれについて重大な懸念を抱いております。」とあるように、極めて厳しい表現で、ユニゾの取締役会に対して説明責任を果たすよう求めている。

今回の件で明らかとなったのは、ユニゾの小崎社長をはじめとする現経営陣へのエリオットの不信感である。そのことが取締役会への書簡からは読み取れ、またこの書簡が社長宛ではなく取締役会宛であるという点が重要なポイントだ。つまり、取締役会の責任の元、この件をしっかりと説明せよということを突き付けているに等しく、ユニゾの今後の対応が、エリオットを含めた株主の納得が得られるものでなければ、より踏み込んだアクション(株主提案等)に発展しかねないだろう。


日産・ルノー、脱ゴーン色急ぐ 再編にらみ思惑一致

【記事の注目ポイント】日産が8日に発表した内田誠専務執行役員が社長兼最高経営責任者(CEO)に就任する新体制を発表した。当初、10月末までにとしていた新CEO決定を速めた背景には、仏ルノーとの資本見直し協議を急ぎたい思惑が両社で一致したことがあったとのこと。

【コメント】当然のことながら、ルノー・日産の資本・業務提携の見直し協議は継続しており、その背景には両社を支える両国政府の思惑がある、今回の内田新CEO誕生もその中での出来事と理解する必要があるだろう。国内の雇用増を重要政策に挙げているマクロン政権としては、ルノー主導の日産との経営統合は諦めていないだろうし、菅官房長官のお膝元である横浜に本社を構える日産に対しては、経済産業省も一歩も引けないだろう。しかし、こうして両者が綱引きを行っている裏では、自動運転化などMaasの動きが急速に加速し、既存の自動車会社のビジネスモデル自体が崩れつつあるのが現状だ。本来ならば、このような無用な争いには一刻も早く決着をつけ、本業に集中しなければならないはずだが、当面この問題は続きそうだ。


関電、原発部門の幹部一掃 内向き体質に批判

【記事の注目ポイント】関西電力は9日、福井県高浜町の元助役から経営陣が3億円相当以上の金品を受け取っていた問題の経営責任を取るとして、八木誠会長と岩根茂樹社長の辞任を発表した。経営陣の大幅刷新に加え、問題の中心である原発部門の幹部の大幅入れ替えなどを行うとのこと。

【コメント】八木会長・岩根社長に加えて現執行部門の大幅な見直しと原発部門の幹部陣の入替えを行うようだが、一方で、そうした問題の経営陣・幹部の選任を認めてきた取締役会の責任や、問題を事前に把握していたにもかかわらず、具体的な行動を起こさなかった監査役会の責任には一切触れておらず、これをもって経営責任を取ったとは到底言えないだろう。本来は、上場会社であり、電力事業という公共インフラを担う公的企業の責任は、ひとえに取締役会が担っているはずだ。関西を代表するグローバル企業のダイキンの井上会長は社外取締役に、元パナソニック社長の大坪氏も監査役に名を連ねるなど、関電には早々たる人材が社外役員として関与しているが、そうでありながら、長年このような問題が放置されてきたガバナンス体制の見直しこそが、喫緊の課題といえる。

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