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熱源

「熱源」(2019年 川越宗一・著)読了。第162回直木賞受賞作。明治初期から第二次世界大戦までの近代を描いた時代小説。主人公はアイヌのヤヨマネクフ(山辺安之助)と、ポーランド人・ブロニスワフ・ピウスツキの二人。両者とも実在の人物。樺太=サハリンを主な舞台として、日本、ロシア、ポーランドで激動の歴史を生きた人々を描く。
 
「弱きは食われる。競争のみが生存の手段である。そのような摂理こそが人を滅ぼすのです。だから私は人として、摂理と戦います」登場人物が作中で語るこの言葉が、この小説を貫く主題。大国と「文明」の力により故郷を失った民族。彼らひとりひとりの生き様に対する視線が、優しい。
 
人が生きていくうえで必要とする熱の源は何だろうか。「国家」や「民族」などという大きいものにそれはあるのだろうか?この小説の問いは、いまここで生きている自分にもリアルに突きつけられているなと思った。力作です。

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