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IMFレポート つまみぐい #2

昼に配信した「IMFレポート つまみぐい#1」ですが、さっそく#2です。#1で紹介した「World Economic Outlook (WEO)」というレポートとは別の「Global Financial Stability Report (GFSR)」という金融リポートからです。
https://www.imf.org/en/Publications/GFSR/Issues/2023/04/11/global-financial-stability-report-april-2023

米銀SVBの破綻から1カ月ほどですが、IMFはさすがの質・量でまとめてきました。興味深いグラフをピックアップしながら、今回の騒動のポイントをザッとみていきます

◆ 市場の動揺は…

株価は昼に配信した「#1」で紹介したので割愛します。一つ目のグラフは「銀行間金利のスプレッド」です。銀行間でおカネを貸し借りするときに、無リスクの金利(わかりやすくいえば国債金利)にどれくらい金利を上乗せしないといけないかです。金利が上がっているときは、それだけ銀行がおカネを借りづらくなっているということです。

見てのとおり、SVB騒動以降、さまざまな銀行間金利が上がりました。クレディスイスの経営不安も広がり、ほかの銀行におカネを貸すことへの疑心暗鬼が芽生えました。

ただ、リーマンショックなど過去の金融不安に比べれば、かなり穏やかな金利上昇でした。リーマンショック時は金利が急騰し、そもそも「高い金利を出してもおカネを調達できない」事態に陥る銀行も相次ぎ、まさに金融危機に発展しました。

今回はそのような事態に陥る可能性も完全には払しょくできないという事態でしたが、当局の素早い対応もあり、ひとまずはそのリスクは低下しています。

もうひとつ、社債のスプレッドです。これは社債の金利が国債の金利に対してどれくらい上乗せされているかを示すものです。上の銀行間金利とも似たイメージで、この金利があがると、企業はそれだけ資金調達しづらくなっていることになります。

赤い線はハイイールドと呼ばれる低格付け社債のスプレッドです。右端の方で少し上がっていますが、これがSVBやクレディスイスの騒動による金利上昇です。ただ、2020年のコロナショックと比べると、上昇幅はやはり小さめです。とはいえ、リスクオンだった2021年に比べると、2倍ほどのスプレッドとなっており、企業にとってはおカネを借りづらくはなっています。

パウエルFRB議長は3月のFOMCで「過去2週間の金融システムの出来事は信用状況の引き締めをもたらし、経済に影響を及ぼす可能性が高い」と指摘しました。これはまさに上記のグラフのイメージです。仮にFRBが利上げを見送ろうとも、信用市場が悪化し、銀行や企業が借りる金利が上がってしまえば、利上げしたときのように景気や物価に逆風となります。

このように一口に金利といっても、様々な金利が重層的に絡んでいます。少しややこしいですが、こうした仕組みも少しずつ解説を増やしていければと思います。

◆ SVBは特殊

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