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自身の専門外(専門不足)領域のマネジメント

マネージャー(特にバックオフィス等の専門領域のマネージャー)は、自身がその領域に長く携わっているとかでない限り、専門外(専門不足)の領域のマネジメントもしなきゃですよね。これは自身の管理領域が広くなればなるほど出てくる事象で、極端な話、そこそこ大きな企業の社長になれば、自身が専門とする以外の部分の方が圧倒的に広くなります。

そこってどうやってマネジメントするんだろう(後半)、そもそもなんでマネジメントしなきゃなんだっけ?(前半)というのが今回のお話

ーーー読み飛ばして良い自分語り:僕自身、前職(信託銀行の法務部)でマネージャーをしていた際はその領域全体について詳しい自身があったのですが、現職=LINEグループではマネージャーになった段階で企業セキュリティ分野(権限管理・委託先管理・SaaSのセキュリティ面の判断等)を初めて取扱い、複数のチームをまとめるシニアマネージャーになってさらにその領域が広がる(技術系のセキュリティのチームもマネジメント範囲に入る)ということで、一番苦労している部分です。ーーー

まだ完全には答えが出ていないのですが、とはいえまとめることに意義があるかな、あとはアップデートしていこう!という気持ちになり、今回書きました。

専門不足領域のマネジメントの必要性

なんで専門外もマネジメントしなきゃなんだっけ?まあマネージャーだからだよね、という禅問答はさておき。

実際には、①経営陣への報告と事案の適切な判断、②マネジメントのための基礎情報の適切な把握、③適切な人材評価、④人材流出・欠員時のバックアップというのが考えられる目的かな、と思います。

①経営陣への報告と事案の適切な判断

マネージャーはチームメンバーの活動をまとめ、上司や経営陣に的確な報告をしなければなりません。専門外の領域だと、事案の理解や優先順位を誤り、的確な報告ができないという懸念が生じるので、専門外についてもちゃんと理解しなきゃね、という課題が生じます。

この課題については、経営陣に近づけば近づくほど、管理領域が広がるので、信頼できる人に任せることも可能(いわゆる信任の原則だったか)です。ただ、悪い言い方をすれば本当にその人が信頼に足るか、という問題はあるのでなかなか難しいですよね。

②マネジメントのための基礎情報の適切な把握(自身に対する評価低下から生じるマネジメント決壊問題の回避)

これは組織にとっては付随的なものだけど、たとえば自分のマネージャーが専門性が低い場合を想定するとわかりやすいですよね。あれ、こいつ言ってること分かってる?言いたいこと伝わってる?みたな。

もちろん内容や管理範囲によっては仕方ないな、と思ってもらえるかもしれませんが、怖いのは、こいつ理解してないな、と思われて必要な、重要な情報が来なくなるとか、自分を飛ばされて経営陣に報告されたりすること。まあ能力不足が原因なら自分の責任なのですが、自身のマネジメント範囲について適切な判断をするための基礎情報が欠けることになり、その時点でマネジメントが決壊します。

③適切な人材評価

マネージャーはチームのメンバーを、時として管理するチームのマネージャーを評価しなければなりません。

で、この評価、数値で評価しやすい場合は良いのですが、特に専門職系になればなるほど、数値化しづらいですよね。たとえば処理件数やプロジェクト件数という件数は出ても難易度は反映しづらいし。なので、専門外であっても専門性の理解が重要になります。

特に危険なのは、専門組織でコミュニケーションだけを評価軸にすること。コミュニケーション自体は重要ですが、専門性は低いのにコミュニケーションがうまい人を、専門性が高いのにコミュニケーションが少しうまくない人より評価するというのは、長期的なマネジメントの観点からは非常に危険ですし、陥りやすい罠です(特に経営陣に近づくほど)。

そういった罠に陥らないためにも、専門外の領域であっても十分な理解をする必要があります。

④人材流出・欠員時のバックアップ

これは組織の状態にもよりますが、たとえば転職や病気等により、人材が離脱することは当然想定しなければなりません。同じ業務範囲の人が複数いたり、他部署からの異動等によりサポートが期待できるなら良いのですが、それにしても工数的・能力的な限界はあります(たとえばジュニアレベルで専門性がまだ低い、内外の交渉力等の限界がある等)。よって、マネージャーとしては、専門外の領域についてもバックアップは常に意識する必要があります(規模が小さすぎるとそれも難しいかもですが)。

で、そのバックアップで最も確実なのが、自分でカバーする、ということ。自分ができることに限界はあるかもしれませんが、一時的であればそれでも十分な効果が期待できます。だからこそ、専門外だからといって任せるのではなく、自身で最低限のバックアップができる必要はあるよね。

専門不足領域のマネジメントの方法

専門外の領域をマネジメントするならその領域の専門性を上げよう!というのが一番効果的。ただ、それができない場合も多いから、その場合はできる限り頑張りつつも人に頼るか…というのが現時点の考え。でも思うんだけど、専門性を上げることを完全に放棄するのはどの立場でもダメだと思うんだよね。

専門性を上げる場合、どのレベルまで上げるのか、ということとと、どう上げるのか、というのを意識する必要があると思い明日。

(1)自身が専門性を上げる→どのレベルで?

専門外=専門性が低いなら上げれば良いじゃん!という至極わかりやすい話。

ただ、上げるといってもどこまで上げればよいのか、というのは適切に判断しなきゃだよね。具体的にはこの2つがわかりやすい基準かな。

①理解して語れるレベル経営への報告を考えると最低限そこは必要。これは専門性の方向性・程度によっては結構簡単だけど、難しい分野の場合はこれだけでも難しい

②プレイヤーや指導までできるレベル:これは、その必要があるのか、という観点で検討が必要。もちろんこのレベルまであるのが望ましいけどなかなか難易度は高いよね、だって、みんな長年かけて専門性築き上げてるんだもん。そもそもこの問題はマネジメント領域が広いが故に起きる問題だし、自分にはマネジメントという仕事もあるから、そんな簡単じゃない。でも自分がプレイングマネージャーの場合はやりやすいし、必要性も高い。特に人材流出時のバックアップの機能が重要な場合=他部署からの補充もできない、外部委託もできない場合はこれも求められるというイメージ。

どっちのレベルかは各々判断するとして、専門性を上げるためにはどうすればよいのか、というのが次の話。

(2)専門性って、どう上げるの?

とりあえず頑張るしかないよね、でも頑張るにしても正しい方向に頑張らなきゃ…え?どっちが正しい方向なの?と。今の所思いついているのは①徹底的なトレース、②メンバーに配慮しつつ行うコミュニケーション③プレイヤーとしての取り組み

①その領域の業務内容を徹底的にトレースする

当たり前だけど、マネージャーならメンバー・プレイヤーの日々の活動を知ることができる”はず”なので、それを徹底的にトレースするのが一番の方法

でもそこで問題なのが、日々の活動を知ることができるはず、と言う部分。オープンコミュニケーションだったり、メール・チャットに入っているなら良いけど、意外とそうじゃないことも多いよね、それは良くないよね(自戒を込めて)

なので、トレースだけでなく、トレースできる資源の確保も意識する必要があります。まあ業種とかコミュニケーションチャネルにもよるけど、そこまで改善できるのが一番良い。

トレース資源どうしても乏しい場合は仕方ないけど②を重視するよりは(追加負荷が少ない範囲での)資源の拡大に勤しむべきだよね、それが自分以外の人のリソース確保にもつながるよね。

そこでわかんない言葉は社内のツールでもGoogleでも使って検索して、それでもわかんなかったら②の方法に行けば良い。

②メンバーとのコミュニケーションで聞く(ただしメンバーの時間を割いている点に注意)

そうです、マネージャーにとってはこれが一番楽で早いし効果的です。上司ー部下という関係を使ってヒアリングや適切な理解という名の下に話を聞く。でもこれは功罪が大きいからできる限り避けたい。だってさ、言われたら断れないじゃん、別にパワハラでもないし。

もちろんね、①に書いたとおり、ある程度調べてからなら良いんだけど。一番最悪なのは、(専門分野における)一般用語とか、社内用語でもかなり丁寧に說明があるのに、その說明を敢えてメンバーにさせること。それなら良い感じのWebサイトでも読んでろよ、ググれよ、という。

一方で、目的に挙げた”マネジメントのための基礎情報の適切な把握"という観点からは、こいつわかってねーな、と思われないために”自分が理解していること”は端的に示さなきゃいけないのが難しいよね。

もちろんメンバーによっては綺麗にサマライズして說明するという能力がある人もいるので、状況に応じて千差万別ですが、この方法は自分の都合基準ではなく、メンバー基準で考えることが重要です。

③プレイヤーとして業務を実施(迷惑にならないようにしつつ)

自分の立場や時間的に、プレイングマネージャーができる場合や、できる領域については、これが一番です。

よく言うじゃないですか、「やってみせて、言って聞かせて、やらせてみて、 ほめてやらねば人は動かじ。」って。言って聞かせての部分が②、やらせてみて、の部分が③です。ほめてもらうのはマネージャーは諦めましょう。

ただ、これも難しいのは、自分がしゃしゃり出た結果、メンバーの人が指摘をしづらくなるという問題ですね。ここはコミュニケーションの問題ですが、なんかマネージャーがしゃしゃり出て痛いこと言ってるのにそれを誰も指摘できない、という事態は避けたいですよね。

(3)自身の専門性を上げることが難しい場合

管理領域が広い場合や、その部門でプレイヤーになることが組織的、能力的にそもそも難しい場合、自身の専門性を上げるといっても限界があるし、難しいことがありますよね。その時にどうすればよいのか、という話です。

とはいえ、やっぱり、専門性を上げるための(2)①・②は可能な限りやるのは大切だと思うんですよね。じゃあ何が違うのかというと、自分が割ける時間・工数との関係で②が中心となっても仕方ないかも、と今のところ思ってます。ここは自分の知見的にはまだ不足してる部分かもなので、もうちょっと考えていきます。

あとは、信頼できるメンバー、マネージャーからの自発的な說明を求めるという方法。これは経営側に近づくほど期待はできるけど、注意が必要な方法。たとえば文化によって受け入れづらいし、(報告を受ける)マネージャー自身の欠点を補完”させて”いるという側面もある。とはいえ、自分の時間やできることに限界があるということを踏まえると、まずはメンバーから主張してもらうという意義はあると思います(メンバー側のコミュニケーションスタイルをしっかり把握しないと専門組織でコミュニケーションだけを評価軸にする=実は専門性が低いのにそれを理解できないせいで信頼できると誤って思ってしまうという問題が起きるので要注意だけど…)

まとめ(現時点のまとめ、他にも方法があれば知りたい…)

ということで、ちょっと長くなりましたが、必要性と方法論の説明でした。

必要性としては、①経営陣への報告と事案の適切な判断、②マネジメントのための基礎情報の適切な把握、③適切な人材評価、④人材流出・欠員時のバックアップでしたね。

そして、方法論は、まだまだ悩ましいですが、どのレベルで専門性を上げればよいのか考えつつ、専門性を上げるためには①徹底的なトレース、②メンバーに配慮しつつ行うコミュニケーション③プレイヤーとしての取り組み、専門性が上げられない場合は①・②は可能な限りやりつつ状況に応じて②を中心に、という感じでしょうか。

なるべくそこの専門性をつけるのが良いけど環境による、色々方法はあるけど、メンバーのリソースを使う場合はその功罪の意識が必要、あと、自分のリソースの限界についても意識する必要はある、というのが全体的な観点だと思います。

補足:そう言えばこのnoteは、マネージャー・メンバー双方の経験がある立場で、現在マネージャーであることを踏まえてちょっとマネージャーに対してキツめに書いてますが、実際に僕が持っていたことがある不満を表したものではないです。どちらかというと、こう言う不満がでたら良くないな、という危機感ベースで想像力を膨らませて書いたものですので、(僕の上司になったことがある方々におかれましては)悪しからずご承知おきください。


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