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「高校生の頃の話。」

  まだ僕が高校生だった頃に起きた事。

         🌀

 当時、僕の部屋は階段を上がって直ぐの所にあった。
 階段を上がり切った踊り場には出窓があり、そして何故か壁には大きな鏡が設置してあった。
 二階にはトイレは無く、夜中にトイレへ行こうものならば、帰り足には鏡の中の自分と御対面しなければならない。

 それが本当に嫌なのだ。

 鏡の中に何か見たのか?!と、問われれば、

「何も見ていない。」

 そう。
「見・て・は・いない」のだった。


         🌀


 それはとても蒸し暑い夏の夜の事だった。

 怖がりマンな僕は、幾ら暑くても部屋のドアを開け放って寝たりはしない。
・・・のだが、その日に限って少し・・・
そう、ほんの15センチ程、戸を開けて寝たのだ。

 〝鏡のある階段側は嫌な感じがする”

 よって左側を開けた。
 
 あまりの寝苦しさに暫く眠れなかったのだが、風が少し吹き込んで来てくれ、漸くウトウトし始めた。


         🌀


「リーーン。リーーン。」
 部屋の外からは虫の声。

「カタカタカタ」
室内では扇風機が首を振る音が聞こえる。

 「グッ。」

突然、右足首を掴まれ引っ張られる。

 「う?がーーーーーーーーーーっ?!!」

  
 叫んだ。

 叫びながら時計を見た。時刻は1時30分過ぎ。


 階下からは大声に驚いた家族が「大丈夫か?」と声を掛けてくる。

 部屋の入り口である戸に目をやる。 

誰も居ない。

 閉めてあった筈の鏡側の戸が全開だ。
なんでだ? 何でだ?? なんでなんだ?!

 階下からは心配した家族が「どうした?」と、声を掛けてくれている。

 

 その日を境に、毎年夏になると何回も足首を掴まれ、引っ張られる様になった。


         🌀


 今は鏡も無く、部屋も移ったせいか掴まれる事もなくなった。

 要因などは幾らでも〝こじつける”事は出来る。

 しかし結局は真相など知る由もなし。

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夏の思い出

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