禰豆子

ぼくが禰豆子になった日〜扁桃炎患者の覚書〜

なんで12月っていつもこんなに忙しんですかね?そう思いませんか皆さん!

とはいっても僕の場合はその一年、お世話になった人たちに会うために、過密スケジュールは承知の上でどんどん忘年会の予定を入れていく。気づけばぎゅうぎゅう詰めカレンダーの出来上がり。
しかし仕事は普通にある→ありがとうの気持ちを込めてみんなと会いたい→でもスケジュールはいっぱい→もう少し詰められるんじゃないか?→お?!時間空けられたやん!(つめつめ)

これが12月のインフィニティウォーです!
忘年会大戦争です!
しかし僕は後悔は一切ありません!
これでいーーーーーーいんです!!!
(皆さんは心の中に川平慈英を飼っていますか?)

実際ありがたいことにそーゆー場での出会いからお仕事に繋がることもあるので「ただ飲み歩いているわけではないですよ!」と仕事感も出しながら嫁にアピールしつつ(ここが一番重要、ただ飲んでいるじゃないんだよ〜感)楽しく忙しく毎年年末を過ごしております。さてさてそんな令和怒涛の年末を無事に乗り切った僕でしたが、敵はいつだって油断した時にそっと忍び寄ってきて後ろからブスりと刺してきます。

【年末年始は病魔に襲われる!】

12月28日にすべてのスケジュールを終えた僕はここからは家族とウィンターバージョンやぁ!!!と張り切っていました。12月の一ヶ月間、家庭を顧みずに忘年会に明け暮れた償いをいまここでするのです!(ってかここで挽回しないと嫁がマジでキレる)
世界はこのようにしてバランスで成り立っているのです。息子たちと甥っ子を公園に連れていって公園で張り切って50回くらい缶蹴りをやりました。甥っ子がちょっと風邪気味だったようだけど、サイゼリヤに行きたい!とリクエストがあったので、いざサイゼリアへ。甥っ子のスープを3口もらう。なんで人からちょっとだけ貰うスープってこんなに美味しいのだろうか。しかもサイゼリヤは特に最初の3口が美味しいメニューが揃っていてマジで3口だけ食べる【サンクチュアリの会】っていうサイゼリアのオフ会をやりたいと思っている。(風邪気味の人は参加不可というルールはここに決めておきたい)

ちなみに甥っ子は夜にダウン。僕もちょっとだるいので早めに寝ることにした。

12月30日は1日寝込む。熱が39.7℃まで上がったので嫁がインフルエンザじゃないかと疑う。喉もどんどん痛くなって違和感があったので、スマホのライトで喉の奥の方を照らしながら見てみると右側だけかなり腫れている。しかもなんか白いヨーグルトの小さい塊みたいのが喉の奥壁にめっちゃついてる!これ絶対になんかいけないことが起こっている!と確信。
明日は病院に行くと決意した。

12月31日6時起床。
大晦日の朝6時に起きる人なんて高熱でうなされて寝付けなかった病人が「絶対に病院の受付開始で整理券1番ゲットしてやるぜ!」って時くらいだと思うな。ようするに僕のことです(うなされて全然寝れんかった)寝起きに熱を測ると37.1℃だったので自力で車を運転して行くことにした。大晦日にもこうやって病院で働いている人達がいるから僕たちは安心して生活が出来るんだね。圧倒的な感謝。道中そんな事に思いを馳せながら病院に到着。受付開始時間の7:30には完全にスタンバイ完了。無事に整理券番号1番をゲット。あとは9時の診察開始時間を待つのみ。問診票と体温計が渡されたので再び検温すると39.7℃。めっちゃ上がるやん。一時間で2℃上がるって体内が完全に温暖化してるやん。

超高熱だったので、まずはインフルエンザを疑われる。待合室で例の長い綿棒を鼻から突っ込まれる。大人なのでなんとか耐えるけど、子供なら泣くよこの綿棒。

結果は陰性。インフルエンザではない。
「じゃあちょっと診てみましょうか〜」と医者が喉を見るなり「これ、結構ヤバいですね、、、扁桃腺逝っちゃってますね、、、」と近くの総合病院に紹介状を書いてくれることに。扁桃腺が逝っちゃっているらしい。

すぐに総合病院の緊急外来へ紹介状を握り締めて移動。その時で相当熱は高めだったけど、気合いを入れ直して車で移動。こういうときはプロレスラーの棚橋弘至が別れ話の拗れで女性に背中をナイフで二度刺された時に、自力で原付バイクを運転して病院に行ったエピソードを思い出すに限る。背中を二度刺された棚橋よりはまだ僕の方が軽症なはずだ。

そんな事を思いながら総合病院に辿り着きました。
待合室の後ろの席には低血糖で搬送されてきた結構な高齢のおばあちゃんと娘さん(とはいっても結構なお歳)が座って話していました。

「うどんを食べないから低血糖になったのよ〜」
「ごめんねぇ〜あ〜でも今はエビフライを食べたい」
「急に食欲湧いてきたの?おばあちゃん」
「はぁ〜ごめんねぇ〜倒れちゃって」

「うどんを食べないから低血糖になったのよ」
「ごめんねぇ〜あ〜でも今はエビフライを食べたい」
「急に食欲湧いてきたの?おばあちゃん」
「はぁ〜ごめんねぇ〜倒れちゃって」

「うどんを食べないから低血糖になったのよ」
「ごめんねぇ〜あ〜でも今はエビフライを食べたい」
「急に食欲湧いてきたの?おばあちゃん」
「はぁ〜ごめんねぇ〜倒れちゃって」

「うどんを食べないから低血糖になったのよ」
「ごめんねぇ〜あ〜でも今はエビフライを食べたい」
「急に食欲湧いてきたの?おばあちゃん」
「はぁ〜ごめんねぇ〜倒れちゃって」

この話をエンドレスで1時間くらいしていて高熱のせいなのか?夢か現実なのか境界線があやふやになりながらその二人の会話をずっと聞いていた。もしかしたら夢だったのかもしれない...

年末の病院は患者さんで溢れていて、ようやく僕の番がやってきた。喉を見るなり先生が「これは入院した方がいいですね」と一言。「大晦日なので家で過ごしたいのですが...」と伝えると「呼吸困難になりますがいいですか?」と言う。この先生は女性のお医者さんだったのですがマジで声に抑揚が全くない、ロストイントネーションな喋り方をするので「呼吸困難になりますがいいですか?」がマジで怖く聞こえる。『これマジで呼吸困難になるやつや』と察した僕は指示に従い素直に入院することにしました。

【急性扁桃炎】

これが僕につけられた診断名でした。
普段僕らは菌と一緒に過ごしているわけですが、疲れなどで免疫力が低下すると普段はどうって事のない菌にやられちゃうのです。そこの戦場が扁桃腺だったわけです。ってか扁桃腺が弱い人とか疲れるとしょっちゅう腫れたりするらしいです。ちなみにそういう人は扁桃腺を取っちゃうみたいです。とってもオッケーなら、何ゆえ神は人間に扁桃腺を与えたもうたのか、、理由を神に聞きたい。

ちなみに扁桃炎の一番ツライ事は喉が痛すぎて唾さえも飲み込めなくなる事です。喉を通過するあらゆるものが喉の炎症部分にヒットするので水がマジで飲めなくなります。

写真だとグロテスクが過ぎるのでイラストです。
喉の両サイドが扁桃腺です。ちなみに扁桃ってアーモンドって意味です。よく見るとボコボコしててアーモンドっぽいですよね(まめち)ここがめちゃくちゃ腫れて、あと細菌などと戦ったあととして膿の塊ですある膿栓ができます。これがヨーグルトの正体です。これ無理やり取ると痛いので触らない方がいいです(取ろうとした←)

んで「呼吸困難」になるのは扁桃腺が腫れすぎて気道を塞ぐ可能性があるのです。実際に僕も喉の奥の穴がマジで塞がれちゃって話しをするのも大変になりました。ちなみに呼吸困難になると死にます。まぁまぁ呼吸困難になる事もあるらしく脅しではなかったみたいです。

そして大晦日に僕の入院生活は始まりました。

https://twitter.com/meer_kato/status/1211905726630612994?s=21

喉の痛さで水も飲めない僕は点滴を1日に1.5ℓ入れました。脱水も何気に怖いんですよね。

で、マジで一番怖いので「唾」です。そう唾液です。本当に飲み込むとマジでマジでマジで超絶痛いんです。最初はその痛みを堪えて我慢して唾を飲み込んでました。意を決して飲み込むって感じです。飲み込む瞬間は霜降り明星のせいやみたいな顔をして飲み込んでました。

もう途中からは唾を飲むのがつらすぎてティッシュを丸めて口に突っ込んでました。

【禰豆子状態】です。

マジで唸っていました。看護師の妹に聞いたんですがこれは扁桃炎あるあるらしくて、ティッシュを口に詰め込んでいる患者さんって結構いるらしいです。僕もまさか大晦日にティッシュを口に突っ込んで唸りながら年越しのカウントダウンを事になろうとは思ってもいませんでした。ティッシュを咥えながら新年を迎える僕の元に嫁と息子がお見舞いに来てくれた。マスクを完全装着した息子達がティッシュを咥えた僕を見つめている。

「パパ、だいじょうぶ?」

多分全然大丈夫そうに見えていなかったと思う。
喉が腫れすぎて声もうまく出せない。会話もままならない状態で嫁に「ほら、パパにお別れの挨拶しなさい」と言われる。それ死にゆく人への言葉やん。と思いながらも声が出せない。息子達は言葉数少なに病室を去って行きました。

嫁が「とびきり柔らかい生地のパジャマを買って来たよ!」と差し入れてくれたそのパジャマはマジで柔らかく、暖かかった。弱った体にパジャマの柔らかさが身に染みる。喉は相変わらず痛いが快適度は上がった。入院患者には是非良いパジャマを着て欲しい。

扁桃炎は飲食が出来なくなるので水分は点滴でいれる。あと呼吸がちゃんと出来ているか血中酸素濃度を頻繁に測られるそして看護師さんには「息苦しくはないですか?」と一日に何度も聞かれる。一番怖いのは窒息なので気にかけてくれているのだろう。自分の呼吸に関してこんなに気を使われた事は未だかつてない。

一日中、水分と栄養と、抗生剤を点滴で打ち続ける生活。夜中も点滴を入れ続けるので交換の度に目を覚ます。しかも周りも耳鼻咽喉科の患者さんが入院しているのでみんな鼻や喉が詰まっているせいかイビキがすごい。特に僕の隣の患者さんはめちゃくちゃでかいイビキで「スプーーートニク スプーーートニク スプーーートニク スプーーートニク」と一晩中爆音を立てているので眠れない。これが病院あるある「4人部屋イビキ問題」です。多分どこの部屋に移動してもおんなじなんだろうなと思うし、そもそも僕も喉が塞がりかけた状態なのでイビキ予備軍だから人の事は言えないんですよね。。。

そのスプートニクおじさんは「部屋の周りの音が気になって寝れない」との看護師さんに小声で相談してて違う部屋に移動していきました。

いや、イビキかいてめっちゃ寝てましたやん!!って思いましたが、多分おじさんも寝苦しかったんだと思います。スプートニクおじさんの隣には禰豆子おじさんが寝ていて、、、これがリアル病棟ですよ!

そんな生活を3日も続けるとようやく喉の腫れが治まってきました。ぬるい味噌汁くらいは食べれるようになったので出された病院食は味噌汁だけ完食していました。僕は今までぬるい味噌汁だけは何がなんでも許せないって気持ちだったのですが、ぬるい味噌汁の存在価値を今回見出しました。喉が腫れた人の唯一の食事、それがぬるい味噌汁です。世の中に無駄なものは何もないと言いますが、ぬるい味噌汁が世の中に存在する理由を僕は知りました。ありがとうぬるい味噌汁、、、お前に命を救われた。


4日目。完全に回復の兆し。この辺りから病院生活が楽しくなってくる。入院患者は朝の診察が終わったらあとは基本ベッドで点滴を打ちながら自由な時間を過ごす。僕はiPadを嫁に持ってきてもらったので、ジャンプ+で漫画を読み、Netflixで映画を観て、めちゃくちゃ快適な生活を送っていた。元気になれば病院ほど自由な所はない。だらだらしていても誰にも文句は言われない。元気になる事だけが僕に課されたミッション。

5日目。唾を自由に飲めるようになる。唾を飲める感謝を皆さんは味わった事があるでしょうか?「つば」それは普段何気なく飲むもの。痛みが伴う事なんてまずない。しかし僕はそのありがたみを知った。唾を飲み込めるのは当たり前ではないのだ。僕は今現在喉が完治した状態なのだが、唾を飲み込むたびに感謝の祈りを捧げている。

これが僕の入院日記である。
急性扁桃炎になった患者さんは「この苦しみはいつまで続くのか...」と絶望感に打ちひしがれていると思うが僕はこう答える。

「三日の我慢です」

明けない夜はない。腫れの引かない喉もない。

どうかぬるい味噌汁が飲めるまで、ティッシュを口に突っ込んで耐えて欲しい。ご自愛くださいませ。

#扁桃炎 #急性扁桃炎 #闘病記 #入院日記

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