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【身近に迫る詐欺】フラット35の不正融資事件で何が起きているか

”プロ”である不動産業者の指導のままに、”投資”マンションを買って運用していたところ、突然、銀行からお金を全額返せといわれた。しかし返すお金はぜんぜん足りない。
そして、自己破産へ。

こんなことが実際起こったらどうしますか?

今回は、身近に迫る不動産詐欺の注意点についてみなさんにお伝えしたく、
「フラット35不正融資事件」を例に説明したい。

フラット35の不正融資事件とは?

平成の終わりに、「かぼちゃの馬車事件」や、「TATERUの事件」などで不動産投資業界にはとても冷たい視線が送られていた。
令和に入ったばかりのGW明けから世間を賑わせたのは、またしても不動産投資にまつわる事件だった。
それが「フラット35を利用した不正融資事件」だ。

事件の概要はこうだ

1.不動産業者の紹介で中古マンションの紹介を受ける買主
2.買主はフラット35を利用してこのマンションを購入した
以上

あれ?普通の取引じゃないか?

と思う人も多いだろう。

でもこのシンプルな構造の中にからくりを忍ばせているのだ。
少し厚みを持って説明する。

フラット35図


ある「悪徳」不動産業者が不動産投資セミナーを開催する。
そこに集まる何も知らない買主候補.。

業者の説明では、自分たちの言うとおりにしてくれれば、
頭金もなく、良い条件で投資用の中古マンションを購入できるという。

「今日参加したみなさんはラッキーです」

とばかりに。

不動産投資に多少なりとも興味をもっていた買主は、
これはいい話を聞いたと、前のめりになる。

前のめりになる人ほど市場の価格より高いマンションをつかまされることになる。

このあたりで業者からおかしな提案がされはじめる。

「金融機関にはお客様自身が住む前提で申告してほしい」
「頭金や仲介手数料も含めて融資してもらう方法がある」
「ただし、金融機関に提出するために取引金額3000万円ではなくて、3500万円の金額を記載した契約書を別途作らせてほしい。」

買主はさすがに不審がる。

そこでトドメの一言。

「私も含めてみんなやってる方法ですよ。」

と。


購入後、買主(および不動産業者)はこのマンションの賃貸募集をして、投資物件化して運用をはじめる。

こうして、買主は若干不安ながらも知らぬ間に不正な融資に手を染めて、
破綻への道を進んでしまうことになる。

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(イメージ)出典:夏原武「クロサギ」

なんでこんなまどろっこしいことをしてリスクをおかすのか。

それぞれインセンティブが働くからだ。

■不動産業者
・マンションの仲介手数料収入
・高値で売却した売却益
・買主に向けてサブリース契約などをしている場合は、サブリース手数料
■買主
・フラット35の低い金利で投資物件を買える
・フラット35のゆるやかな審査で投資物件を買える
・偽の契約書によって、融資金額とマンションの実際の価格との間の差額が手に入る


派生するバージョンもありそうだが、
大体こんな感じ。

そして、これは不正な手続きを踏んだ融資であるため、
機構は「融資したお金を全額返せ!」ということができる。

さあ大変だ。

一括返済するお金は買主はもっているわけはない。

「あ、そうだ、マンションを売却すればよいか!」

しかし、多くの場合、借りたお金よりマンションの評価額が低いのだ。

理由はこうだ

・そもそも高値で買わされている
・さらに、居住用のマンションは人に貸している状態だと、安くなってしまう
・急いで売らなくてはならないから、ちゃんとした売却活動ができない


すると数百万円を手元から払わなければならない羽目に。
残債割れというやつ。

そんなお金はないからフリーローンを高金利で借りることになる。
いっきに露頭に迷う羽目になってしまう。

何が問題?


これらは全て不動産業者がアレンジしている。
そしてこの手口は多くの不動産業者の中では当たり前のように浸透していたという。

複数社の業者が同じような手口でいろいろな買主に話を持ちかけていた事がわかっている。
精通者に聞くと、宅建免許番号が”若い”業者が多かったらしい。

業績をあげることに必死で買主の未来など一切考えない。

(一般の方が優良な不動産業者を見分けるのは困難だが、宅建免許番号が古い方が、歴史はあるというのは一つの参考になるので覚えておいて欲しい)

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あくまで噂だが、金融機関もこういった手口があることを知りながら見過ごしていたという説もある。

なぜか?

最終的に、融資が焦げ付いた時に責任を取るのは機構だけだから。
自分たちは、融資にかかる手数料収入が入るというインセンティブがあるため、
不動産業者の悪行や買主の不正を見てみぬふりをしていたという噂もある。
そう、あのかぼちゃの馬車事件やTATERU事件のときと同じように。

もしそうだとすると、金融機関も不動案業者と同じくらい悪く感じる。

よってたかって情報弱者である買主から搾取している。
ユーザーファーストの考えとは逆光する「ユーザー”リスク”ファースト」なモデル。

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(イメージ)出典:TBSドラマ「半沢直樹」

そもそもフラットってなに?

超シンプルに言うと以下の特徴を持っているローン商品だ。

・金利が全期間固定(35年も固定ができる)
・金利がかなり割安(1%を切るものも)
・審査がゆるやか(個人事業主や、勤続1年未満も対象になることも)

詳しく知りたい人このHPを見てほしい
住宅金融支援機構「フラット35のご紹介」

国が多くの人に住宅の購入の機会を与えようとする主旨だから当然だ。

なので、昨年の利用者は以下のように約7.8万件の申請があった。

フラット件数

出典:住宅金融支援機構

けっこう件数は多い。
2018年末で総融資件数は数十万件となる。

関係者に言わせると、この問題は発覚したのは最近だけど、
スキーム自体は数年来使われてきたものらしい。

すると、今回までに発覚した154件以外にも、当然多くの事案が眠っていそうだ。


ある有識者の独自調査で競売物件サイトを見ると、不正融資にまつわるものも多数目立っているようだ。

どエンドくん

出典:どエンド君さんのtwitterより


ちなみに以下はフラット35の利用者層の世帯だ。

フラット35利用者

出典:住宅金融支援機構

本件に直接結び付けられないにしても、30代などで気づかないうちにこのような不正に手を出してしまい、破綻をしてしまうこともあるのだから悲しい。

事件発覚後の状況

現在、機構が全件調査を進めている。
また、こういったことがあり、金融機関やアルヒ社やセゾン社などのフラット35の取り扱い業者も手続きを厳格化している

・業者に対し、接客のマニュアルを出させている
・フラット35の申し込み契約書の他に、投資用に利用しないことの念書を書かせている
・アルヒ社など、 不正利用検知システムを導入をする予定もある
https://www.aruhi-group.co.jp/news/info/20190830

まとめ

念のため書くと、フラット35そのものが悪いわけではない。
仕組みの抜け道があったことや、それを放置してしまう構造が問題だったのだ。
アルヒ社やクレディセゾン社などフラット35の取り扱い各社では、よりデータや仕組みも活用し、低金利のスーパーフラットと呼ばれるような商品もでてきており、買主は選択の幅が広がってきている。

こういった流れに水を刺さないように、関係者同士が牽制できるような仕組みが必要だ。
テクノロジー的には、取引情報のブロックチェーン化など有望な分野も登場してきている。

それでも抜け道はでてくるのが、世の中だ。
消費者の方は、自分だけの儲け話なんて滅多にないことを強く認識して、
怪しい誘惑は第三者にも相談するようにしてほしい。

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不動産業界の透明化・活性化のための仕組みづくりを模索中。フィルライフ(リブセンス・スターツ合弁会社)取締役。これまでDeloitteグループの不動産部門立ち上げ等実績。 / MBA・宅建士・賃貸不動産経営管理士/不動産相談窓口:mikata.top

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不動産業界の透明化・活性化のための仕組みづくりを模索中。フィルライフ(リブセンス・スターツ合弁会社)取締役。これまでDeloitteグループの不動産部門立ち上げ等実績。/ @k_toshimitsu / MBA・宅建士・賃貸不動産経営管理士/不動産相談窓口:mikata.top
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