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睡眠薬を飲み過ぎている可能性が高い患者さんの事例の進展と考えられること


話の進展あり


皆さんいかがお過ごしでしょうか。

前編、中編、後編、と三部作でお届けした
『睡眠薬を飲み過ぎている可能性が
 高い患者さんの事例』

この事例は現在進行形の症例です。

つい最近また進展があったので、
(続き)と称して書いていこうと思います。

決して他に事例がないわけではないのですが、
ひとまず、お付き合いいただければと存じます。


◼️またもや少し早めの受診に


1ヶ月間は処方日数通りの受診


この患者さんが、つい最近受診されまして、
私が服薬指導をしました。

本当に見違えるように、
動きは機敏になり、発話がスムーズになり、
本当に驚いています。

ただ1点、
1ヶ月間は処方日数通りに受診されていたものの、
今回は3〜4日程早く受診されたのですね。

この連休中に薬が無くなる状態であったので、
あえて早めに受診されたのかなぁと思って、
患者さんの話を聴くことにしました。

「こんにちは、今日は少し早めにいらっしゃった
 ようですが、連休もあるし、
 早めにいらした感じですか?」

「薬が無くなってしまったんだよ、
 この強い薬だけど、やっぱり15mgだと少くて、
 2つ飲まないと効かないんだよ」

詳しくは過去の記事も参照いただければ、
と存じますが簡単に書くと、
・スボレキサント錠15mgを服用していると認識
・実際に服用しているのはメコバラミン錠500μg
・一緒に服用しているエチゾラム錠は1日1錠

という状態と確認できました。

プラセボとして服用しているメコバラミン錠を、
1日1錠では効果がないと認識しており、
1回2錠服用しているようでした。

ちなみに、メコバラミンは水溶性ビタミンである、
ビタミンB12であり過剰服用による影響はない、
と言っても過言ではありません。

一緒に服用しているエチゾラム錠を、
1日1回1錠で服用していることは、
良い傾向と判断しました。

今後、メコバラミンを増量する方向で、
(患者さんとしてはスボレキサント錠を増量と認識)
処方医の先生と話をしていきたいと思います。


◼️患者の認識を確認する


数字に縛られる


薬局あるあるで、
薬剤師の方なら頷いていただけると思うのですが、
患者さんの中には薬の数字を気にされる方がいます。

今回の事例の患者さんも、まさにそうでした。

どういうことか?
この事例に出てきた薬を例にして説明します。

エチゾラム錠0.5mgとスボレキサント錠15mgが
あるとしたら、0.5mg < 15mgとなり、
スボレキサント錠の方が効き目が強い、
と認識される患者さんがいるということです。

成分が異なると、効果発現や副作用回避の観点で、
成分毎に用量が設定されている関係で、
それぞれ1錠あたりの分量が異なることになります。

さらに薬によっては、
様々な病気に対して使用されるものもあり、
その病気毎に用法や用量が決まっています。

エチゾラムとスボレキサントの添付文書から、
用法・用量の部分を引用します。

まずはエチゾラム錠

神経症、うつ病の場合
 エチゾラムとして1日3mgを3回に分けて
 経口投与する。
心身症、頚椎症、腰痛症、筋収縮性頭痛の場合
 エチゾラムとして1日1.5mgを
 3回に分けて経口投与する。
睡眠障害に用いる場合
 エチゾラムとして1日1~3mgを
 就寝前に1回経口投与する。
なお、いずれの場合も年齢、症状により適宜増減するが、高齢者には、エチゾラムとして1日1.5mgまでとする。
(参照:エチゾラム錠添付文書)

続いてスボレキサント錠

スボレキサントとして1日1回20mgを、高齢者には1日1回15mgを就寝直前に経口投与する。
(参照:スボレキサント錠添付文書)

こうした患者さんの認識や解釈を確認しながら、
患者さんと対話していく必要があります。

患者さんの理解力や、思い込みの強さや、
認識の背景にある出来事など確認しながら、
説明して理解してもらうのか、あるいは、
別の方法を考えるのか、薬剤師として判断します。

今回の事例の患者さんに対しては、
高齢であり理解力が低下している背景もありますが、
患者さんの過去の経験が数字の認識に大きく影響を
与えているようだったのど、
数字の意味を理解してもらうのではなく、
増量する対応をしました。


◼️患者の希望は何なのか


少し話は変わって


今後、この患者さんと対話する中で、
『何を望んでいるのか?』といった、
希望や期待といった感情を確認していきたいです。

今までは、おそらく睡眠薬の過剰服用で、
会話もうまくいかない状態だったのもあり、
患者さん自身が何をのぞんでいるか、
把握できていない気がしたからです。

『もっと眠りたい』という背景に何があるのか?

そんな観点で対話していければ、そう考えています。

もちろん、その過程で患者さんの本音を確認できない
ということもあるでしょう。

たとえそうだとしても、
患者さんの言葉を聴いていきたいと思います。

なぜ、いきなりそんな話をしたのか?
というと先日友人とオンライン飲みをした際に、
色々と考えさせられたからです。

その友人は、ケアマネジャーをしているのですが、
飲み会の会話の中で、
患者さんの希望を確認できていないのではないか?
と自分自身反省させられたからです。

反省させられたと言っても、
友人からそう指摘されたわけではありません笑

何を目標とするべきか?
その目標は患者の意思によるものか?
医療従事者や介護従事者目線の目標ではないか?

そんなことを考えさせられました。

例えば、よくある目標として、
『自宅で最後まで過ごしたい』というのがあります。

『自宅で最後まで』という表現の裏に何があるのか?

・近所の友人がお茶しにくる空間としての自宅なのか
・亡き家族との思い出がある空間としての自宅なのか

この2つには、大きな違いがあります。
それは代替可能かどうかです。

近所の友人との関係性であれば、
例えば自宅ではなく別の場所でも、
その関係性を維持できるかもしれない。

言葉にすると簡単そうに見えますが、
もちろんケースバイケースだと思います。

つまり何が言いたいかというと、
『自宅で最後まで過ごしたい』という抽象概念を、
もっと具体的なレベルまで考えられているか?
という視点が大切だということです。

そして具体的な部分から抽象化してみる。
具体と抽象の往復運動ができているのか?
そんなことを考えさせられました。

なかなか難しいことではありますが、
実践していきたいと思います。

こんなポンコツな私ですが、もしよろしければサポートいただけると至極感激でございます😊 今後、さまざまなコンテンツを発信していきたいと思っておりますので、何卒よろしくお願いいたします🥺