見出し画像

矛盾の波を掻き分けて溺れて沈んだ私の指は生きた証を深海に刻む

溺れそう。

目的地へ着くために
大きな船に乗っていて
すごい速さで進むんだけど

波のしぶきははるか眼下

風の音は聴こえるけれど
魚の音は聴こえない

「速かろう。濡れることもなければ凍えることもない。賃金はちと高くつくがこの船に乗れば安泰だ。」

艦長の言葉に納得したのは
果たしてどの私だったか

溺れそう。

溺れるわけなどないのに
雨に濡れさえしない室内が嫌になって
甲板に飛び出す

滑る足
濡れる髪
切れる呼吸
拍動する心臓

どれもがとても心地よくて
程よく私を苦しめたが
それでも私には足場があった

その時
雨に当たるのは自己満足だと知った。

___________________________________

大好きな漫画や本で、新作が出る度に

いそいそとぎこちなくイヤホンを取り出して

絡まってるのに悪態をつきながら

でも心はワクワクとして

缶コーヒーとパンを買って

その作品を味わうときみたいに

「『この人の』創るものをみたい。
      世界観に触れたい。」

ただ、そんな風に思ってもらえる人になりたい。

集団の中で
どれだけもがいて頑張って
社会に求められるものを作っても
求められるものを演じても

どこか空虚で
それは社会の中に必死に居場所を作ろうとする
臆病な私で

それはなにも変えてくれやしないと思った。

このままで

このままだ

そんな私を「昼」は慰め、「夜」は強く罵った。

成功とか、地位とか、安定とか

そんなどこか本能的なものより

「私の生きた証」を

誰かに楽しみにしてもらえるような

そんな人になりたい。

そう思った。

少しでもいい。

きっと誰かの人生に明かりを灯せるような

そんな表現者になりたい。

そんな言葉を紡ぎたい。

そして甲板を蹴った。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?