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デザインとアートの境界線ってあるの?という問いと、UXデザインと呼ばれるものについての考察

※前提として、美術系の大学卒でもない、視覚デザインを学んだわけでもない、社会学部卒の筆者による考察であることをご留意ください。

アートとは、デザインとは

これらの言葉の、普遍的・明確・端的な定義は聞いたことがありません。
デザインにも広義のデザイン、狭義のデザイン、などという言い方がなされたり、組織デザイン、関係性デザインといったり、アートといったり美術といったり、使い手によって場面によって様々な意味が付加されます。

デザインの歴史的には、現代アートの始まりと言われるデュシャンが1917年に制作した「泉」、ウォーホルのポップアートから「視覚芸術」→「思考芸術」の流れができ、そのあたりから境界線として「問い=アート、解決=デザイン」が、より意識され始めた、とする経緯があるとききました。

ジョン・マエダの有名な言葉があります。

Design is a solution to a problem. Art is a question to a problem.
—John Maeda

アートは疑問(question)を提起し、その疑問には必ずしも答えはないのがアート、明確な答え(solution)を担うのが「デザイン」といっています。

でもなんかよくわかったような、わからないような、そんな気がしませんか。

そういうことをぐるぐると考えているうちに、アートとデザインは、そもそも分けて定義できるものじゃないんじゃないか?と思いはじめました。分けて定義せず、状態変異のあるグラデーションと考えたら、よけいな定義論争しなくていいんじゃないか?って思いました。その考えの軌跡をnoteにまとめてみました。

なお、ここでは包括的な定義をぶち上げるつもりはなく、新たな視点で分類してみたら、個人的にスッキリした、というご報告です。

私なりの分類

※ここではわかりやすくするために、視覚領域に主にフォーカスしてます。

アート
 ・感情を起こさせる方向に作用するもの
 ・必ずしも行動が期待されない
デザイン
 ・感情のあるなしは関係ない
 ・行動を起こさせる方向に作用する

配合の違いがあるだけで、アートとデザインは不可分

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ビジュアル・サウンド・空間など、
世の中のすべてはアートでありデザインであり、その組み合わせといえる、かなと考えました。

「わたしはアルパであり、オメガであり,わたしのほかに神はいない」
エホバ(イザヤ 44章6節)

アートとしての評価、デザインとしての評価

それぞれの評価されるポイントはここだと考えます。

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配合の例

配合の例を考えてみます。

①Art側の配合の強いもの

いわゆる漢字で「美術」と呼ばれたりしてる領域をイメージしています。
ここは、感情をできる限りの広い幅で、大きな震度で起せたかが、優れていることの指標となります。

ここでの表現に、なんらかの行動させる意図が入った場合には、「美術」といえなくなり、下で言う③に近づくのだと思います。
現代美術やメディアアート、コンセプチュアルアートの一部で先鋭化している、「メッセージ性」や「排斥性」のようなものをより強く・明確に行動を意図させる場合は、③にあたると思います

一方、メッセージ性皆無の、行動想起性皆無の、たんなる「装飾」としての存在もあります。
ややこしいのですが、それを「デザイン」と呼ぶ時・人・場合もあります。ここではそれはアートと分類したいです。

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※追記:これ、視点・文化によっても変わるものなのかも。人にとっては美しいと愛でる「花」のビジュアルはアートでも、ミツバチにとっては生産行動を促すデザイン。

②Design側の配合の強いもの

いわゆる「デザイン」と呼ばれるものの領域です。
ここでは、行動をいかに正確に起こせたかが、優れていることの指標となるのだと思います。
行動を起こさせる力として、心理学、自然科学が使わます。

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③Art→Design

(「美術」ではなくカタカナの)「アート」とも、「デザイン」とも呼ばれるかもしれない領域です。
なんらかの感情を揺さぶった結果、受け手側の行動が励起されるもの、あるいはより明確に行動を意図しているものです。

何らかの行動のアウトプットを求めて、表現活動をはじめていることが、①との違いとなります。それは「優劣」や「区別」や「勝敗」や「善悪」をより意識させることとなります。

表現のしかたによって、行動は良い方向にも悪い方向にも行きます。
 ・良い方向 → 地球をきれいにしよう!(チャリティ)
 ・悪い方向 → 地球を汚す奴らをどうにかしよう!(プロパガンダ)
ここも、行動を起こせたかが指標となります。 

行動を起こさせる力として、認知心理学、行動経済学が多く使わます。
ナチスドイツはこの力を強力に使ったと理解しています。
(参考 https://ameblo.jp/daisuke-fujisawa/entry-12217137993.html )

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④Design→Art

「デザイン」とすら呼ばれないかもしれない領域です。
行動が感情に作用しさらに行動を起こさせる、自己強化型の報酬系、フィードバックループがこれです。

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デザイナーは何を仕事としているか

所謂「職業デザイナー」は、②または③をの領域をスペシャリティとして行動していると思います。しかし人びとは表現者として①までをも期待します。それは、高校〜大学までを含めた芸術系に閉じたラーニングパス上で、①と②の領域が混線しているからだと思います。
現在はこの芸術系のルート以外からも、アート・デザインの領域に足を踏み入れることも多くなってきています。④は行動を起こさせるデザイナーの得意領域であるにも関わらず、マーケター、技術者や科学者がそれを担うことがあると思います。

UIって?UXって?どこのことだろう?

いわゆるUIデザインや、UXデザイン(?)が、どれにあたるか考えてみます。

UI

UIとは人が行動するときの道具であり、UIデザインとは道具のデザイン、なのでここであろうと考えられます。

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UX

UXとは人が体験することと、体験を通じて人が受ける感情であり、一人ひとりちがう、正解がひとつでないものだと思うので、ここのことであろうと思います。

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UXデザイン(?)

UXデザインという言葉をつかうときに、
『ミクロなインタラクションのデザインにおいて「気持ちいい」とか「びっくり」を励起させること』を指す人、場合、時があると思いますが、それはミクロすぎる認識なので置いておきます。

UXが上の図のようなことだとすると、「UX」と「デザイン」を組合せた単語化は適切ではない、とも考えられます。UXとは経験とそれに基づく感情であり、多様性があります。ヒトの感情はデザインできない、できると思うことは烏滸がましいと個人的には思います。
できるのは場の設定だけではないでしょうか。

なので、個人的にはUXをデザインする、という言い方はせず、「世界観」と言い換えることが多かったように思います。UXをデザインする(?)というのは、デザインという言葉をつかいつつ、アートなのだと思います。

そして、感情を生み出す「場作り」として全体的な視点をもちつつ、人の感情のアウトプット先として作用・反映させる「別のなにか」をつくることがあります。

それを「コミュニケーションデザイン」と呼ぶのだと思います。

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ゲーミフィケーション

ゲーミフィケーションと報酬フィードバックループは④で説明できると思います。

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プロダクトリリースサイクルとの関係

われわれの「デザイン」活動におけるサイクルは、ダブルダイヤモンドの図に表現されることが多いですが、ここまでの考え方でいけば、以下のように思考法を使い分けることになるなと感じました。

アートで、より多くの感情・状況を引き出し受け止める(発散)※観察法
サイエンスで、感情・状況を分類、理解する(収束)※演繹法・帰納法
デザインで、理解したもの行動に移させる何かを生み出す(発散)※発想法
アーキテクティングで、生み出したものを構造化しする(収束)

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別のnoteでも書いたように、サイエンスからデザインを説明できるようになることが必要だと感じました。InVisionによるDesign Maturity Model (デザイン組織の成熟の段階を示す)のLevel4、デザインサイエンティストの存在がこれから、より重要になってくるのではないでしょうか。

まとめ

・世界はアートでありデザインである
・アートとデザインは配合
・配合の種類で出来上がるものがちがう
・UXは感情。感情をデザインしようとするのはアート的試み
・UXデザインっていう言葉はできるだけ使わないほうがよさそう
・プロダクトリリースサイクルでは、アート、サイエンス、デザイン、アーキテクチャすべての脳を使う
・デザインサイエンティストが重要

分類してみたらスッキリしたのですが、ぜひ皆さんの意見をお伺いさせてください。


参考にしたnote など


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