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SDGsマーケティング施策事例研究 Vol. 2 adidas Japan K.K. 「サステナブルな「スタンスミス」ローンチ記念 アートを活用したプロモーション施策」

このnoteのポイント
・定番シューズをサステナブル商品として生まれ変わらせることで、サステナビリティへのコミットメントを伝えたアディダスの施策をおさらい

・エシカルマインドを持っているクリエイターらとコラボし、店内装飾、パッケージ、特典、SNSまでサステナビリティを意識した施策を展開し、全世界共通のプロモーションで描かれた世界観とメッセージを具現化した

・ただし、ネット上の反応はスニーカー好きユーザーを中心に否定的な見方もあり、今後のさらなるコミュニケーションが期待される

皆さま、こんにちは。
Good Tideチームメンバーのショウです。

今回は、人気スポーツブランド・アディダス(adidas)の定番シューズ「スタンスミス(STAN SMITH)」を取り上げます。
この冬、スタンスミスがレザーからリサイクル素材に仕様を変更し、全世界で「#STANSMITHFOREVER」のプロモーションが展開されました。
日本ではサステナビリティに関するメッセージがどのように発信されたのか、実際に行われたプロモーション施策を振り返りつつご紹介します。


ぜひ最後まで読んでみてください!

1. 施策の概要

アディダスは、以前よりプラスチック廃棄物削減に積極的に取り組んでおり、PRIMEBLUE(プライムブルー)、PRIMEGREEN(プライムグリーン)、FUTURECRAFTLOOP(フューチャークラフトループ)という3つの素材を使用したサステナブル製品を展開しています。

PRIMEGREENとは
未使用のプラスチックである「バージンポリエステル」を使用せず、リサイクル素材を採用した製品。
今回生まれ変わったスタンスミスは一部、PRIMEGREEN商品として100%リサイクル素材を利用しています。
PRIMEBLUEとは
離島や海岸、海沿いの地域で海に流入する前に回収したプラスチック廃棄物をアップサイクルして生まれた、Parley Ocean Plasticを含むリサイクル素材。
地球にもトレーニングにも良いスポーツウェアであるPrimeblue製品の素材には、リサイクル素材が40%以上使用されています。
FUTURECRAFT.LOOPとは
循環型のリサイクル・再生システムに取り組む製品。
魚網や海洋廃棄物をリサイクルし、丈夫なパフォーマンスシューズをデータを用いて作り出す研究プロジェクトなどがあり、プロジェクトの一環として、一本一本の糸を個別に選別し、データマッピングを用いた短距離用フットウェアのFUTURECRAFT.STRUNGが開発されています。

また、2020年12月には今後スタンスミスをすべてリサイクル素材「PRIMEGREEN(プライムグリーン)」を使用したサステナブルな製品へ生まれ変わらせる、と宣言しました。
それに伴い、アディダスのサステナビリティへの取り組みを認知してもらうべく、日本ではオンライン・オフライン双方で施策が展開されました。

まずオフラインの施策として、エシカルマインドを持っているさまざまなクリエイターとのコラボ施策を実施しました。
クリエイターと作り上げたアート作品を店内装飾として展示したほか、パッケージ、特典までサステナビリティを意識してつくられたキャンペーンになっています。

また、オンライン施策としてはインフルエンサーや小売店に「#STANSMITHFOREVER」 「#ENDPLASTICWASTE」を添えてSNSへ投稿してもらっています。
アディダスのサステナビリティへの取り組みを、一般ユーザーまで訴求し、認知を広げる狙いが見えます。


2. 施策の仕組み

アディダスが行ったオフライン・オンライン施策はいずれも「魅せる」内容が中心で、スタンスミスがサステナブルな製品へと生まれ変わったことを広く認知させるPRの要素が高いものとなっています。

1. 店内ディスプレイには、アーティストのマスダヒロシ氏が施したシューズペイントの作品(クイズ回答者の中から、抽選で作品をプレゼント)、およびフラワークリエイターの篠崎恵美氏による「ロスフラワー」を用いたアートワーク(キャンペーン後はドライフラワーとして販売)を展示した。

2. メディアプロモーション用に木製シューズボックスを制作し、箱に「STAN SMITH, FOREVER」とインフルエンサーの名前を彫ってプレゼント。 影響力のあるシューズマニアやインフルエンサー、スポーツ選手や小売店が「#STANSMITHFOREVER」と「#ENDPLASTICWASTE」を添えて新しいスタンスミスをSNSで紹介し、アディダスのサステナブルな世界観を広く伝えた。

3. サステナブルな素材を利用したスタンスミスを含む商品購入者へ、マスダヒロシ氏によるオリジナルエコバッグをプレゼント。


3. ブランドのサステナビリティ目標から考える、実施目的とターゲット

そもそも、アディダスはなぜ定番製品であるスタンスミスのサステナブル化に取り組んだのでしょうか。

アディダスはプラスチックと二酸化炭素排出量削減へ取り組むため、2024年までに製品にリサイクルポリエステルを100%使用する、「END PLASTIC WASTE」という目標を掲げています。
定番のスタンスミスを、リサイクル素材で作られたサステナブル商品として展開するのは、目標へのコミットメントを示す固い意志表示の1つです。

また、アディダスがサステナビリティに本気で取り組む姿勢を、シューズマニア、アディダス・スタンスミスファンのみならず、アディダスが継続してアプローチを狙うサスティナビリティに関心の高いZ世代やミレニアル世代に広く認知してもらう意図が見えます。

4. 施策のポイント

最後に、目的とターゲットを踏まえた上で、今回の施策のコミュニケーションのポイントについて考察していきます。

長年愛されている、ブランドの顔とも言うスタンスミスを今後サステナブルな商品として展開することを示したことで、エシカルへの高いコミットメントを内外に提示できた。

・デジタルへの展開とともに、オフラインで行うメリットとして発売初期にわざわざ店舗で限定商品を購入するスニーカーマニアやブランドのコアファンにおけるサステナブルなイメージ強化を狙った。

・ロスフラワーを用いることでサステナブルなメッセージが強化されるだけでなく、自然との共生がデジタル上のビジュアルよりリアルに感じられる効果もあり得る。

・コアターゲットのスニーカーやブランドファンからZ世代/ミレニアル世代まで、オンラインとオフラインで各ターゲットに合わせて異なる施策が展開されているものの、「STAN SMITH, FOREVER」という同じ世界観の中で企画されることで統一感も維持できている。

ポイントをまとめてみると、アディダスのサステナビリティへの取り組みが施策の隅々まで体現されており、今後生活者にエシカルなブランドとして認知、連想して欲しいというブランドの熱量とコミットメントが伝わってきます。

しかし、残念ながらアディダスのこの取り組みに対しては一部の生活者からネガティブな反応もありました。
以下は、弊社のソーシャルリスニングツール「Boom Resaerch(ブームリサーチ)」で調べたツィートの一例です。
レザーからリサイクル素材へと変わることで、ファッションアイテムとしての質の低下を心配する声のほか、(合皮よりレザーの方が長持ちすることから)従来のレザー素材の方が結果的にサステナビリティへ貢献するだろうといった指摘など、今回の新たな試みに関して疑問視する生活者がいることも分かります。

(※ 「スタンスミス」「サステナビリティ」の両方を含むオーガニックツイートより選定: 2020年9月1日~ 2021年1月29日(ブームリサーチ調べ) )

今回ご紹介した施策は、サステナビリティやエシカルカルチャーに関して意識や関心が高い人には受け入れられやすく、好感度も上がる取り組みになりましたが、ファッション性を重要視する人にとっては、マイナスなイメージを持たれるキッカケになってしまったともいえます。

サステナビリティやエシカルと、ファッション性のバランスをどのように取っていくのか。
今回の反応を踏まえ、アディダスではファンに今後も支持してもらえるような商品開発と施策を改めて考える必要性があるのかもしれません。

参考
AMP News 2020/1/29 「アディダス、プラスチック廃棄物の削減計画 持続可能な製品へ」
https://ampmedia.jp/2020/01/29/adidas-2/(2021/1/26)

Fashion Snap 2020/12/14 「「アディダス オリジナルス」がスタンスミスを刷新、すべてリサイクル素材に」
https://www.fashionsnap.com/article/2020-12-14/adidas-stansmith-sustainable/(2021/1/18)

PR TIMES 2020/12/14 「STAN SMITH, FOREVER いま、定番が生まれ変わる。スタンスミスは、サステナブルへ。」
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000735.000003301.html(2021/1/12

ELLE Japan 2021/01/12 「「スタンスミス」が100%サステナブルに。すべての「スタンスミス」にリサイクル素材を使用」
https://www.elle.com/jp/fashion/a35185726/stan-smith-forever/(2021/1/18)

Fashion Press 掲載日不明「アディダス オリジナルスのスニーカー「スタンスミス」地球やフラワーモチーフのカラフル刺繍など」
https://www.fashion-press.net/news/68681(2021/1/18)

adidas  サステナビリティホームページ
https://shop.adidas.jp/sustainability/(2021/1/19)

adidas FUTURECRAFTLOOP特設ページ
https://shop.adidas.jp/futurecraft/(2021/1/26)

adidas FUTURECRAFT.STRUNG特設ページ
https://shop.adidas.jp/futurecraft/strung/(2021/1/26)


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トップ画像:PexelsのHamza Nouasriaによる写真

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