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『目と葉なのさ』木談 第17回【小説のみ】

いつも通り登校するためにバスに乗っただけなのに、居眠りしたらいつの間にか見知らぬバスに乗っていた。降りるとそこは声も音も匂いも知らない見知らぬ土地。気づくと制服もカバンも身体も変わっていて、私は誰かになってしまった・・・。
昭和26年にタイムトラベルをした女子高生。彼女はどうしてここにいるの?

小説とマンガを組み合わせた物語。たぶん次回か次々回にマンガ出ます!!

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 目的地は神社だった。階段が100段ほどありそう。由良は階段を登る。朝の散歩に人がいそうなのに誰もいない。
「こりゃ上に着いたらチョコタイムだな。由良と私二人分ある。制服で汗かくの好きじゃないんだけどさぁ、由良ぁ」
 神殿のある頂上に着いた。人がいない。ネコもカラスもスズメも蝶もトンボもいなかった。そういえばハトもいなかった。
 私はいつもありがとうございますと参拝する。そしてベンチに座ってチョコをいただく。
「うわ、美味しい!」
チョコのおいしさは変わらない。っていうか由良の分の味も加わって2倍美味しいかも。
「学校サボってチョコ食って由良は案外悪い子だなぁ」
 ペロリ1枚平らげる。もう一枚もイケそうだけど取っておこう。ああ、なんか飲みたい。でもこの時代に自販機なんてあるわけない。水飲み場…あ!サービスの水がある!大きなやかんに『水です。ご自由にお飲みください』と書かれている。ありたい!
「はぁあぁぁ…うまっ。こんなキレイな所なら湧き水も湧いてそうだわ。探してみようかな。由良は全然学校に行こうと思ってなさそうだし」
 神殿の後ろにちょっとした森がある。入って…よくなさそうだけど、なぜか私はそこへ行かねばならない気がする。
「ごちそうさまでした」
湯呑を置いて手を合わせて私はキョロキョロ辺りを見回す。やっぱり誰もいない。
「神社の人もいないのはおかしいよね。掃除ぐらいしててもよさそうなもんだけど」
 とか言いながら私は森へ入っていった。しばらくすると御神木があった。私はおはようございますと挨拶して先へ進もうとした。が、なぜだか私はもう先へ行く必要が無いと分かった。
「由良、なんか用事があるの?」
 私は御神木に声をかける。まるで御神木が由良かのように。
「ん?え?なんで?」
 おかしな考えが浮かんだ。私は生徒手帳をここに置いていかねばならない。
「由良、なんで?」
 私は由良へ声をかけるように御神木へ声をかける。でも答えてくれるわけがない。でも私は今、カバンから由良の生徒手帳を出して、御神木の元に置いていかねばならない。
「あんた、困るでしょ。いいの?怒られるよ。生徒手帳の再発行って簡単なの?」
 ていうか先に困るのは私だな。でも生徒手帳ってそんなに使わないか。映画とか館的なとこに行かなきゃ大丈夫か。橋本の誘いは断るし。
「・・・・・置いてくよ?」
「ホントに置いてっちゃうよ?」
「後悔しても知らないよ」
 返事は無い。だから私は生徒手帳を御神木の元へ置いた。
「由良、後で絶対文句言わないでね」
 そして私は来た道を戻り、もう一度参拝して、階段を降りた。
「とっくに遅刻だろうけど、学校行くか。クラスは2組だもんね。気分は遅刻した転校生だよ。最悪のデビューじゃん。日記に恨み事を書いてやるんだから」
 高校へは歩いて行けるんだけど、私はなんとなくバスに乗った。一気に眠くなる。ヤバイ、たぶん3つぐらい先のバス停なのに・・・・・・・・・・あ、小銭持ってたっけ。運賃大丈夫かな。チョコレート一枚にしとけばよかったかなぁ。てかこの時代の運賃っていくら・・・・・・。
 目覚めたら学校前のバス停だった。それは由良の学校ではなく私の学校だった。私は元の時代に、私の身体に戻ってきた。だって目にコンタクトレンズが感じるんだもん。
 私はスマホを取り出した。日付は今日のまま、時間もいつも通りの登校時間。私の時間は20分ほどしか経っていなかった。
「あ!」
 スマホをリュックに入れるとき気がついた。さっき残したチョコレートが入っていた。
~続~ご覧いただきありがとうございました^^

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