#2000字ドラマ 小説「花になる」
あの子は花になった。深夜、病院のエントランスホールで鳥野が口にしたその言葉を、美月はずっと忘れられないだろうなと思った。そんな難解な言葉を語るには、あまりにもなめらかで自然な口ぶりだったから。
美月と早苗はもともと仲が良かったわけではなかったが、中学生になって部活での人間関係に疲れて学校を休みがちになった美月が、平日の昼間、犬の散歩のためにいつもの川沿いの道を歩いていると河川敷に腰を下ろして川を眺める早苗を見つけた。そっと通り過ぎようと思ったが、飼い犬が声をあげてしまい、振