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Q&A: 第2回 障害のある人のアート活動の権利保護とマーケットとのかかわり

知財学習プログラムオンライン学習会が2021年3月に4回にわたって行われました(詳細はこちら)。

第1回のQ&Aに続きまして、本記事では、3月3日に行われた第2回オンライン学習会当日にいただいた10のご質問と回答をまとめました。講師の柴崎さんと宮本さんのご厚意により、当日にお話ししきれなかったことを、あとから「補足」として追記いただいた箇所もあります。あらためて読み返してみても、充実の学習会になりましたこと、感謝いたします!! 

第2回 障害のある人のアート活動の権利保護とマーケットとのかかわり
柴崎由美子(NPO法人エイブル・アート・ジャパン 代表 / エイブルアート・カンパニー東北事務局)
宮本典子(office N 代表 / 一般社団法人日本現代美術振興協会 事務局長)

Q1:障害者芸術文化活動促進法が制定された背景について、もう少し知りたいです。また、それによりどのような方にどのような変化が起きているのか知りたいです。

柴崎:私の理解の範囲で学生さんに分かるように噛み砕いて言います。
まず国際法として障害者の権利条約(2008年)がありました。しかし、国内でちゃんと障害者の差別を解消するための法律を整備しないと、国際的な条約に批准ができなかった。日本は特に障害者に関わる差別解消とか権利に関わるところでの国内法の整備ができていなかったので、2013年に障害者差別解消法をつくりました。そして、2014年に初めて国連の障害者権利条約に批准しています。

この法律があることで何がかわるのか。例えば教育、労働、文化とかいわゆる多様な省庁があると思うのですけれども、そこごとに“ちゃんと法律を整備しなさい”ということが義務付けられます。その中で障害のある人たちの文化芸術に関わる法律も整備されました。それがこの“障害者の文化芸術促進法”と呼ばれるものになります。その法律内容の詳細は政府のサイトからダウンロードできます。基本的な法律の概念が説明されているかと思います。

ただここで皆さんにいっておきたいのは、文化芸術と言うものは決して作品を発表するとか表現するとか創造するためだけのものではなくて、参加をする、鑑賞するということもとても重要視されているということです。逆にいうとそれが日本の中ではまだまだ進んでいないっていうことが非常に問題だなと思っています。今それでエイブル・アート・ジャパンでは、アクセスアートセンター設立に向けた提案をしています。法律はできたけれど中身としてまだ弱いところ、社会にはまだなくって必要なところの仕事を始めています。

質問の中で法律ができて何がどう変わったのかというのがありました。例えば文化庁は、美術館に対して昨年大きな調査を実施しました。そうすると法律のことを認知している美術館というのは、国立では多いのですが、私立では実はまだまだ認知されていないというデータが出てきました。いわゆる物理的なバリアフリーは進んでいるのだけれど、ソフトの部分、例えば、障害のある人が作品を発表したり、鑑賞したり、教育普及とかラーニングといわれる、いわゆる美術を通じて人が豊かになるためのプログラムを提供する人たちが、まだまだそうしたプログラムを障害のある人に関しては提案できていない問題が明らかになってきました。

そこで、今度はそれを埋めるために国が予算を準備したり、政策をどんどん進めましょうとなってきています。障害のある人に直接ではないのだけれど、それを支援するN P Oや団体にお金が大きく動く、今ないものをみんなで作り出していく、というところができるということが、ここ最近の大きな動きだと思いますし、まさしく今日の勉強会も文化庁によるテコ入れの中の事業の1つだと思います。

Q2:医療法人でアート事業を拡大したいと考えた時、その資金が課題となります。医療法人ですと助成金申請が難しいです。例えば、販売事業を展開する際の資金はどこから出すのでしょうか?(病院内でアート事業をしており、カレンダーやグッズ制作の要望等ありますが、資金確保が出来ません)

柴崎:コロナの中で医療法人の方が助成金をとっていたというのは本当に大変な事例の時には出てきますが、一般的には医療法人は財産がある場所として考えられているので、おそらく取りにくいと思います。
そういう状況があるなかで、たんぽぽの家の例を挙げると、たんぽぽの家は一般財団法人、社会福祉法人、任意団体の奈良たんぽぽの会の3つの組織体を持っているんですね。その時々の状況にあわせ、どの事業でどのように必要な助成金を申請するか、そのためにはどの法人格を使うか(笑)、ということを実施してきた先行事例です。このエイブル・アート・ジャパンも東京のヘッドオフィスとして生まれている側面もあり、例えば企業と仕事をする際にはジャパンが主に前面に立つという風に、組織体を使い分けています。

今、一般社団法人というのが増えてきています。N P Oとは違って認証手続きが楽で、会員総会での合意形成により事業決定をする複雑さを回避できるるという側面があります。今一般社団型で社会福祉サービスやっているところも増えていますし、あえてスピーディーに助成金を取るために一般社団(の法人格を)取る人も増えてきています。

ただ逆にいうと、本当に公益活動を行う団体なのか確認するため、今は一般社団でも営利型か非営利型か、ものすごく組織審査が厳しくなっています。逆に任意団体を持っていて、任意団体でも画材の費用などの資金が獲得できるものもあるので、クラブ活動で団体化するというのも1つの手なのかなと今思いました。

岡部(司会進行):後はクラウドファウンディングとかいくつかありますね。金額にもよるんですけれども。

柴崎:そうですね。助成金でなく直接応援したい人から、直接お金を回収するという意味ではクラウドファウンディングも、法人格に依らず中身で勝負なので、いい事例かなと思います。

柴崎さんからの補足:
ご質問に対して、さらに補足すると、「医療法人でアート事業を拡大したい」という想い、その先に目指していることが何になるのかなということが気になりました。その先に目指していること、すなわち本人のリハビリなのか、治療や治癒なのか、関係するコミュニティの学びや変化などでしょうか? この先に何を目指すのかということが、資金を引き出す際の交渉のポイント、または資金提供の先を探すヒントなのかなと思いました。

アメリカで、アートインヘルスケアの活動をいくつか見聞しました。例えば、こども病院などでプレイセラピストをおくことは、日本でも増えてきているかと思いますが、ある医療施設ではキュレーターが必要不可欠な存在として雇用されていました。キュレーターがやっていた仕事のひとつに、患者とともに行うアート活動があったのですが、それは患者のヘルスケア(心身ともに)に成果をもたらすため、当然、その材料費や展示のための経費は、病院の資金として運用されているようでした。また印象的だったのですが、医師や看護師のライフヒストリーと写真を組み合わせた展示、寄付者の名前を陶壁に仕立てたアートワークなども見ました。アートが、患者だけではなくさまざまな人のモチベーションアップやプロモーションに生かされているところが巧みだなと思いました。

視点を変えれば、患者のみなさんのアートによって生まれたカレンダーやグッズは、例えば患者のみなさんのリハビリのなかから生まれてきたもので、もしそれが、医療現場の成果や医療従事者のみなさんへの感謝を示すものであれば、医療法人を支えるコミュニティに商品を通じてそのストーリーを伝え、そこに売上または寄付をよせていただくこともひとつではないでしょうか。意味があるものには、それが好きとか嫌いとかにかかわらず、お金を集める力があると思います。セッションのときにもお話がでましたが、シンプルに活動の価値を伝え、気に入った人から寄付をもらうクラウドファンディングも向いているかもしれません。

最近、仙台市に本拠を移した、ホスピタルアーティスト高橋雅子さん(Art for HOPE)が行っている「Happy Doll Project」の展示会を拝見しました。災害地や、医療現場で、子どもたちと人形をつくる事業なのですが、これはアートを通じて豊かな時間を過ごすためのものです。この意義を徹底的に企業に伝えて協賛金を集め続けていました。

一方で、意味がある・価値がある商品にまで昇華させるのならば、それもひとつかと思います。有名なものに、世田谷のハーモニーさんの「幻聴妄想かるた」がありますが、これは医療従事者たちの精神障害者理解のための教材としてのニーズがあるとききました。助成金を探すのではなく、どこに向けてどんな意味で売るものかをあらかじめ設計し、シンプルにターゲットに商品を売り資金を回収する事例、こうしたものもあるかと思いました。

Q3:「美大を卒業したような新人作家が初個展でつける価格帯」とはおいくらぐらいでしょうか?

宮本:そうですね。作品の大きさや作られている素材にもよるので一概には言えないのですが、capaciousでは8つ切りくらいの紙に描かれている障害のある方の作品が多く、それらが大体3万円とか3万5千円からスタートしていました。紙の作品ですと、その金額くらいかなというところです。

作品を通して販売していくとなった時に、「どうやって販売していけばいいんですか?」という質問をcapaciousもよく受けます。やはりギャラリーを少しでも覗いてみたり、アートフェアにいってみたりして、若い作家さんがどれくらいの作品でどんな風に販売しているのか実際の現場を視察するような経験をしていくことも、とても面白いですし、情報としても有益なのでそういった所に足を運ぶこともお勧めしております。

Q4:「原画を売る」ということに、迷いや戸惑いはありますか?原画を売る際に意識していること、大事にしていること、失敗例などありましたら教えてください。

宮本:私はそんなに迷いや戸惑いってないんですね。
きっと初めに戸惑いを持たれるのは、障害のある方やそのご家族、あるいは通われている福祉施設の支援者かもしれません。なので、販売を担う立場としては「絶対に売ります」、「ぜひ売りましょう」というような口説き方は全くしません。売りたいか、売りたくないかという意思を尊重するというのは、大切にしたい所です。

ただ、私自身が作品を販売する立場で、魅力だなと感じるのは、本人の手元から離れていった先に広がる世界です。離れていった先、購入してくださった先で大切にされますし、その作品を作者の全く知らない人たちがまた見てくださる機会もどんどん増えていく。作品が本当に一人で世界を歩き出していくところが、魅力かなと。そこを寂しいと思う人もいるかもしれませんが。

宮本さんからの補足:
つまり、全然全く自分とは面識のない人が、自分の作ったものを見て日々何か考え、感動してくださったりする。そういうポジティブなところをお話ししたりすることはあります。

柴崎:たんぽぽの家アートセンターHANAにいた時の話ですが、今宮本さんが言ったように、本人にとって大事なものは売らないと決めていました。例えば、初めて描いたシリーズの作品を、お父さんが売りたくないと主張されたことがありました。描いた本人は、お父さんのことが大好きだから本人もそれに同意する、ということがありました。それは本人の尊重だということで、そういうこともあった。

エイブルアート・カンパニーでも原画の売り買いのオファーが来るのですが、本当に売りたくないという人たちもいて、「だからライセンスだけにしているんです。複製を許諾してその範囲でやっているんです」という、ハッキリした方達もいらっしゃいます。結局、生み出した作品の著作権者である障害のある人がどうしたいかが大事です。また、意思確認が難しい人も、例えばそれを手放すことによって生活リズムが変わったり、パニックになったり、描くことをやめてしまったり、という影響が見える時は、それはその人にとって、作品が自分と不可分であり、自分の大事なものとしてあるということを示していると思うのです。言葉のない人や意思の確認が難しい障害のある人に対しても、できる限り確認して折りあった中で販売をするということができるといいと思います。

Q5:後見について質問します。作家本人と保護者と施設とで権利関係の調整にご苦労されることはありますか。差し支えなければ、調整がつかず契約が成立しなかった事例などがあればお聞きしたいです。

柴崎:そうですね。重度の障害の人たちが補佐人や後見人をつけるけれども、例えば裁判所に行って手続きをするとか、あと、あらゆる財産に関する判断をするというのは実はものすごくハードルが高いと思っています。作品や表現に変わることを本人の側に立って判断していくのは誰かというふうになったときに、私たちエイブルアート・カンパニーは法定上の後見人じゃない人たちも判断する仲間として契約行為に参加していただいています。

具体的に言うと、例えば福祉施設で芸術活動をしている場合。福祉施設と障害のある人の間で利用契約があったり、そこで生み出された作品が誰のものか、誰が著作権者であるかとか、それに対して売ったり、譲った時にどういう対価が発生するか、しないかと言うのは利用契約の時に皆さん結んでいると思います。したがって、福祉施設で作品を生み出している人たちや法人の管理者の方たちに、契約行為のパートナーに入っていただくこともあります。あと、ご家族もさらにそこに参加することもあります。

エイブルアート・カンパニーでは、作家が内定した後に2ヶ月間かけて契約書の説明やわからないことの調整をして、ご本人が納得した上で契約する、というふうにしています。多分ここを丁寧にしているのはおそらく宮本さんたちの仕事でも一緒なのかな。この作業が、カンパニーの中でも2年に一度やってくる一番重要な仕事になります。

宮本:補足で言うと、私は直接作家さんだったり、作家の親御さんとやりとりをするケースもあるんですけれども、どちらかというと福祉施設と契約を交わすことの方が多いですね。それはある意味とても助かっていて、今利用契約がある場合が多いと柴崎さんがおっしゃったと思うのですけれども、capaciousでは、作品販売の契約の際に、作者の代理人として「権利を移譲された法人」つまり、通われている福祉施設と契約することが多いです。作家さんと施設との契約は、その利用契約でカバーされているので安心感があります。

注意しないといけないのは、展覧会等を重ねると親御さんとだんだん親しくさせて頂くことも出てきて今はSNSがあるので直接ダイレクトメッセージがきたりすることがあります。ご挨拶程度だったら問題ないと思うのですけれども、いろんな情報や相談が施設を経由せずに直接来ることも時々にあります。。そういう時には、情報の交通整理をして必ず施設を通すように情報共有をする。そういうことには注意をしています。人間と人間のお付き合いなので、そこを音信不通にするつもりは全くないのですけど、やはり何かあった時、トラブル回避のために気をつけています。

柴崎:今のお話で言うと、宮城のアーティストの中で非常に原画の人気がある人が数名いるのですけれども、公民館で土日に描いている絵と、月から金に福祉施設で描いている絵があって、その2つでは権利まわりや確認が変わってくるという事例があります。それも現場販売の時にはすごく丁寧に、どこから生まれてきている、どういう背景がある作品なのか、ということを慎重に確認しています。公民館でアート活動の支援をしている先生と、月から金に福祉施設で創作活動の支援をしている施設職員の両方に対して、価格や権利周りの照会、調整をするということも実際あります。

柴崎さんからの補足
このように同一人物が、異なるふたつの団体で制作している場合の調整するケースもあるのですが、それに加えて、例えば、ある障害のある人が、利用する施設をA施設からB施設にかわったときに、その著作物や著作権の扱いをどうするかを整理した事案がありました。

A施設はあまりアートにも著作物にも関心がなく、一方でB施設はアートにも著作物の取り扱いにも積極的な側面があり、情報の量や知識に差がありましたので、エイブルアート・カンパニーが仮案をつくって、本人とご両親、A施設とB施設の職員と合意をとったことがありました。(現在も一件、同一の事案が、エイブルアート・カンパニーの所属作家のなかで生じています。)

また、ある障害のあるアーティストが、所属していた施設を辞めるため、施設に移譲していた著作権を取り戻したいという事案もありました。施設と話あうポイントなどを整理し、アーティストと施設が、互いの合意に至るまでのサポートをした案件もありました。

なおエイブルアート・カンパニーの内定作家で、いざ契約の段階で、納得せず契約しなかった事例は、今のところありません。

Q6:個展、グループ展等の展示といった以外での作品のCMの場や方法はどういったことがありますか? 具体的にどういったCMをしているのか教えてください。

宮本:そんなに教えるほど全く… 十分にできていないというのが現状で。
逆にいうと本当に個展、グループ展、アートフェアがメインのお披露目場で、それにあったDMを出したり、メーリングリストを送ったり、SNSをしたりとか、そういう多分多くの方が思いつくようなことを中心にやっているのかなと思います。

岡部(司会進行):そういった個展、グループ展に出す以外で、「買いたい」という問い合わせはありましたか? インターネット上での展開には苦戦しているというお話もあったのですが、その辺りで可能性みたいなものがある部分ってどこかありますか?

宮本:私たちが年に何回か開催している展覧会以外でも、やはり個別でメールの問い合わせがあります。その場合は、「〇〇さんの作品をどこかで見たんですけれども、販売可能なものはどういうものがありますか?」という問い合わせが多いです。

作品を管理しているので、提供可能な作品をリストにしてお送りします。あとは、作品の画像をプロのカメラマンに定期的にまとめて撮影していただいているのがあるので、できるだけ詳細がわかるような鮮明な画像をメール上でやりとりして、販売につながるということは、よくあるというほどたくさんあるわけではないですが、展覧会以外にもそういうことがスポットで出てきています。

オンラインのハードルは確かに下がってきているのですけれど、ある程度知っている作家や著名な作家はオンラインでポンと買うことが増えてきているという話は、ギャラリーの人とかのお話しのなかでは出てきます。しかし、どうしても、まだ無名の作家だったりすると、どこかで一度本物を見たことがないと、なかなかポンとネットで買うっていうところの1つのハードルを超えるのは難しいかなと感じているのが現状です。

岡部:自分自身も何度かcapaciousの展覧会に足を運ばせていただいたことがありますが、宮本さんたちが売り手として表にたち、作品の思いや作者の思いなど魅力を伝えるのがうまいと思っていました。そうした人を通して伝えることをずっと継続してやっていらっしゃる宮本さんたちの存在自体が1つの広報につながっているのかなというふうに思いました。

宮本:ありがとうございます。客観視できていないですけれど、でもそこはすごく大切なことなのかもしれません。どこかでこういう場所があるので展示しませんか?と言われても、展示してその場に人がいなくなってしまうと、なかなか作品について紹介できない。ただ展示して終わりになってしまうということが多い。田中というスタッフがすごく熱心に関わってくれているんですけれども、田中がよく店頭で魅力をわかりやすく説明してくれているのでやっぱり伝わりやすいところはあるのかなと思います。

柴崎さんからの補足
エイブルアート・カンパニー設立の2年間は代官山でプロモーションイベントを実施しました。

shop_workという少しひねりのあるイベントをしかけ、関心を集めました。
shopは原画を活用したデザインをのせて4色のシルクで刷り、4000円くらいで、受注販売する方式。workは数百円で作品を使って遊べるイベント。アイロンプリントに出力されたアーティストの絵を自由に選んで切って、好きなリサイクルTシャツに圧着させて安価で持ち帰ってくださいというものでした。どちらにも、作家を知って、愛して、使って、お金をください、ファンになってくださいねというメッセージを込めました。

また、ここを契機にパルコや百貨店から声がかかるようになり、アーティストの絵を商品化したもの、また企業から発売され始めた商品などを販売しました。

しかし、物販は市場を大きく広げない限りは利益がでないとわかり、ある時期から「著作権使用」一点突破にしています。著作権使用の際には、採用した企業さんがリリースを出したり、会社のウェブやFB で訴求してくれますので、これをみた他の企業さんが数珠つなぎで仕事をくださっているような感じです。

エイブルアート・カンパニーの広報活動はウェブとFBのみで、ほとんど何も営業活動はやっていません。

Q7:販売後の原画に関して、著作権の規定はどのようにされていますか? 二次使用の場合に関してなど。

宮本:作品の所有権はその購入者に移るけれども、作品の著作権でしたり、画像の二次利用の権利は作家に残るというのは著作権上あります。、なので、カタログやwebsite等で購入頂いている作品画像を利用することがありますよ、ということなどは、国内に関しては、ご了承いただいて、書面にサインを頂いています。

 Q8:アメリカ、イギリス、中国で、現代アートに対するマーケットの特徴みたいなものはありますか?

宮本:国別の傾向ですが、アメリカは多様性が許容される面白さがあります。中国は自国の作家を買い支える傾向が強いです。イギリスについては、まだ肌感覚としてはわからなくてすみません!

宮本さんからの補足
イギリスの現代美術のマーケットシェアが高い理由を調べてみましたが、サーチ・ギャラリーやターナー賞に支えられて陽の目を浴びた、Young British Artistsと呼ばれる作家たちの美術館業界と市場での活躍によるところがあるようです。

もっとも、アメリカ(ニューヨーク)、中国(香港)、イギリス(ロンドン)ともに、サザビーズやクリスティーズ等の国際的なオークションや、アーモリーショウやバーゼル、フリーズ等のアートフェアの開催地があり、その取引高が大きく影響していると見受けます。
柴崎さんからの補足
国全体の雰囲気はわからないのですが、宮本さんがリサーチの対象としているアメリカのギャラリー2か所で感じたことについて少し追記させてください。

USサンフランシスコのクリエイティブグロースは、近くに著名大学がありその関係者が多く住むようなエリアでした。私が研修でいたときには、確か2ケ月で200万ほどの商品を売っていました。

でも、商品は実は原画ばかりではなくて、木工製品、家具(椅子やタンスにアーティストのペイントが施されている)などの商品が多く売れていた印象があります。また、作品は2~5万ほどであまり高額ではなく、買いやすいものをどんどん売っている感じでした。宮本さんのようなギャラリストがいました。

お金のある人が気軽にファッションとして障害者アートを買う雰囲気です。
余談ですが、ジュディススコットはここの所属でしたが、彼女の作品はアートマーケット用に囲い込まれており、このギャラリーでは販売していませんでした。私の知る限り、日本でもギャラリスト が入り海外のマーケットに出している人は、売り方にいろいろな制限や約束事があるようです。このマネジメントは、やまなみ工房さんが詳しいと思います。

それから同じサンフランシスコでも、クリエイティブエクスプロードは、下町にあり、また利用する障害者もヒスパニック系の人たちが多かったです。ここは、スタジオが週末、ギャラリー化しており、アーティストの絵がアトリエのその場にたくさん積まれていて、来場者が宝さがしをするかのように好きな作品を買っていく気軽さでした。日本人はこんなに絵をかわないよなーと思った風景でした。

また、アメリカでホームステイを数カ所したのですが、こうした絵を買うタイプの人たちの家は、大きいか壁面が広くて見栄えがしました。日本人は絵画よりも、ハンドクラフトとか飾り物をよく買うと思うのですが、暮らしの様子や嗜好はやはり風土は大きく影響すると思います。

でも、日本でも最近の住宅やマンションの住宅事情がかわり、カンパニーにも最近、原画や大型インテリアパネルなどの問い合わせがきはじめています。

Q9:前に比べればネットで購入するハードルは下がっていると思いますが、実際にオンラインで紹介した作品にいきなり購入でなく原画が見たいというような問い合わせはどれくらいあるのでしょうか?
また、実際に手元に来て返品したいという要望についてもあるのかどうか、オンラインショップの注意点など、お聞かせ下さい。

岡部(司会進行):最後に、このご質問にもあるように、オンラインの販売や紹介の仕方についてお聞きしたいです。

コロナ禍の時代において、ネットやオンラインは無視できない取り組みだというふうに思っています。原画や2時利用も含めてお二人が思っているオンラインの可能性があれば教えていただきたい。

柴崎:エイブルアート・カンパニーのサイトには今1万点以上の作品画像があるのですけれども、広く多くライトに伝えるというか、デジタルデータをとにかく広げて、その利活用をみなさんにしていただくというところが目的なので、やっぱり今後もオンライン上での動きや活動は活発化していくのではないかと思います。あと、オファーはオンラインになってから増えてきている感じがちょっとしています。

ただ、一方で原画はエイブルアートもアーツ千代田というところにギャラリーを設けて販売していたのですけれども、アーツ千代田がやるアートフェアの時に作品を一緒に販売すると、やっぱり原画を見て買っていく。あと原画を見ていた人が、後から同一作家の他の作品の問い合わせをくださることがある。こういうテイストのこういう作家だとわかった上で問い合わせがくることがあるので、やっぱりリアルな展示会や販売会もとても大事。原画を扱う時にはやっぱりそれが大事ってすごく思っています。個人的にもリアルな場で原画を見て、やっぱり自分の目で感じた感覚とかをお金に変えますし。それが原画を買う人たちの感覚なので、そこはすごく大事かなと思っています。

柴崎さんからの補足
なお、原画販売に関して、個人的に気になっているのは、アトリエブラヴォさんです。原画販売の実績がすごいので、オンラインショップで想定する注意点などがあれば、いつかきいてみたいですね。

宮本:無名な作家の原画をいきなりオンラインで販売することはちょっと難しさを感じています。リアルに作品が見れる展示会やアートフェアがあってそれを補完するような形でのオンラインの取り組みの可能性はあるのかなと思います。一度リアルに見た作品で気になっていたものを、オンラインを通じてスムーズに購入できる体制を整えておくことができれば販売機会を逃さずにフォローできるのではないかと思います。


以下の質問は、当日時間の都合で取り上げられなかったのですが、後日、柴崎さんにお答えいただきました。


Q10:作品や作家さんを紹介する際にこだわっていることや工夫していることはありますか。

柴崎:最近、エイブルアート・カンパニーのウェブを更新しました。https://www.ableartcom.jp/

お客さまからのニーズや問い合わせが多かった、「検索機能」を入れました。このデジタルデータの事業では、「この作家を使用したい」というよりは、「四季の作品を探している」「干支の絵を探している」などの用途から入ってくる場合が多いからです。したがって、今回は機械的にこのような用途別のタグつけをしました。でも使用しているうちに、「この作家のファンになりました」と、逆に作家の詳細を知りたがる傾向もあります。

作家のプロフィールを作成するとき、まずは本人や家族支援者にご自身の制作の様子や変遷を尋ねてテキストに書き起こしていただいています。でも、すべての作家を丁寧に訪問し取材できているわけでないので、丁寧に工夫していることは残念ながらありません。でも、作家の描く様子、制作への想いなどは、気軽に動画チャンネルに投稿していってもいい時代かなと思います。

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