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『知財でポン!』の開発過程が記載された論文がヒューマンインタフェース学会誌に載りました!

少し前の話になりますが、ご報告を。

塩瀬隆之さん(京都大学総合博物館准教授)がまとめた、2018年度に制作したカードゲーム『知財でポン!』の開発過程が記載された「専門家と非専門家の対話を促すゲームデザインワークショップ」というタイトルの論文が、ヒューマンインタフェース学会誌2020年2月号 Vol.22 No.1 「誰もがデザインに参加できる時代の幕開け-オープンデザイン研究会(SIGOD)の立ち上げとねらい-」特集論文として掲載されました。

塩瀬さんの論文執筆のための資料を提供するなかで、私たちは、これまで自分らが行ってきたゲーム開発の意義をあらためて詳しく振り返る貴重な機会になりました。

特に塩瀬さんから、ゲームシステムと実際の知財係争事例とを対応づける開発途上の議論がもっとも学習効果が高く、ゲーム制作そのものの学習効果を参加者全員が実感していたと評されたとき、あらためてそうだったそうだったと納得しました。

開発途上に試したゲームでは、相手方が意匠権を申請していなかったため、自分たちのチームが勝って、一瞬大喜びしたのですが、すぐにそのあと現場に虚無感が漂ったことがありました。果たしてこれは、自分たちが望むような社会の在り方になっているのか。すなわち、ゲームで勝ってもそこはかとなく虚しさが漂い、本当の意味で喜べない経験を私たちは積んだのです。

その後、私たちは、どういう社会に自分たちが生きたいのか、そのためにはどういう知財の活用が望ましいか、いろいろと議論を重ね、最終的には『知財でポン!』のかたちに結実しました。

今でこそ、私たちは知財に関するレクチャーを行ったり、知財について昔からよく知っているかのような口の利き方をしているかもしれませんが、ゲーム開発当時、私たち(少なくとも、この記事を書いている、私こと、後安美紀)は本当に何も知らなかった! 

初心に帰るというか、謙虚な気持ちに取り戻せた気がします。塩瀬さん、毎度のことながら、ありがとうございます!

さて、そもそも、ヒューマンインタフェースとは何でしょうか?

学会設立趣意書には「ハイテク機器を人にあわせて開発するのがヒューマンインタフェース」であると、書かれています。

身近な自動機器や情報機器との交わりはますます広がり,道具や目的達成の手段としてよりも,生活環境の一部としてゆりかごから墓場まで人々に親しまれていくものになっていくことでしょう。人間環境の一部に組み込まれる機械には,使う人に便利であるだけでなく,使わない人にも喜ばれるものであり,使わない時にも邪魔にならないこと,更にゆとりや文化のかおりが求められます.ハイテク機器を人にあわせて開発するのがヒューマンインタフェースです.21世紀は人の世紀,その要となる技術がヒューマンインタフェースです.

塩瀬さんのほかにも、本特集号には、たんぽぽの家でもたびたび話題に出てくる、慶應SFCの田中浩也さんやオトングラスの島影圭佑さんらの論文「オープンデザインのこれまでとこれから」や、ファブラボ品川の濱中直樹さんと林園子さんの論文「オープンデザインが止揚する『ネクストメイカー』のコミットメントがもたらす社会」も載っているようです。 

↓↓ 特集号に掲載された論文情報は、以下にあります。 

論文自体は会員でないと読めない仕組みになっていますが、おそらく、デジタルファブリケーションを用いたソーシャルファブリケーション(社会づくり)やソーシャルインクルージョン(社会包摂)をめぐる論考が読めるのではないかと推測しています。

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なんと学会誌の表紙、右下には、Good Job!センターで昨年行われた暮らしの道具を作るメイカソンの様子を写した写真が大きく掲載されていました!

誰もがデザインに参加できる時代の幕開け。もしかしたらその幕開けの現場に立ち会っているのかもしれないと思って、わくわくしております。

ファブと知財は密接にかかわっています。

誰もが気軽にものづくりに参加できるようになった今、知らず知らずのうちに相手の知財の権利侵害をしていることがあるかもしれません。そんななか、知財について正しく知ることで、無駄に恐れたりせず、思う存分、アート制作やものづくりを楽しむことができたらなあと思っています。

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