見出し画像

知財創造教育を道徳の時間に! 講師:塩瀬隆之さん(第1回)

2020年2月21日(金) 東京・TIME SHARING秋葉原
知財学習プログラム報告セミナー「障害者アートと知的財産権」

2020年2月21日(金)、東京・TIME SHARING秋葉原にて、知財学習プログラム報告セミナー「障害者アートと知的財産権」を行いました。あのときはかろうじてなんとかまだぎりぎり集まることができた状況でした。ご参加いただいたみなさま、ご協力いただいた講師の方々に御礼申し上げます。

この記事では、講師のおひとり、塩瀬隆之さんのお話を振り返ります。塩瀬さんは、インクルーシブデザインならびに科学技術コミュニケーションのデザインワークショップの名手。最近では『問いのデザイン』という本を上梓されました。

2月のセミナーのときも、塩瀬さんは来場者に、「知財創造教育を学校で子どもたちに教えるとするなら、どの科目で教えるのがいいでしょうか?」と問いかけます。図工? 美術? 技術? 塩瀬さんの答えは、「道徳」でした。果たして、それは何を意味するのでしょうか。次のように全3回に分けて、塩瀬さんのお話を掲載いたします。

第1回
塩瀬さんとたんぽぽの家のつながり
知財創造教育とは?

第2回
実はみんな創造性を隠しているんじゃないか?
デジタル技術により創造性を広げる「未来図工室」
小学生に知財創造教育は必要か?
学習指導要領にも書かれているSociety 5.0人材

第3回
コピペの罪悪感がない世代
知的財産というときの「知的」を言い換えてみる
「まもって ひろげて」に込められた意味

画像1

塩瀬隆之さんプロフィール 京都大学総合博物館准教授。博士(工学)。インクルーシブデザインならびに科学技術コミュニケーションのデザインワークショップに従事。京都大学デザイン学ユニット/宇宙総合学研究ユニット構成員。2017年科学技術分野の文部科学大臣賞(理解増進)ほか受賞多数。2012年から2014年にかけて経済産業省において技術戦略担当課長補佐にも従事。

第1回

塩瀬さんとたんぽぽの家のつながり

2020年2月21日のセミナーは、塩瀬さんらと一緒につくった、できたてほやほやの「表現をめぐる知的財産権について考える本」のお披露目を兼ねた会でもありました。(以下のサイトからダウンロードできます。真ん中より少し下あたりにこの本のことが出てきます。)

たんぽぽの家の知財学習推進プロジェクトは、塩瀬さんからたくさん助言をいただきながら、ああでもないこうでもないと議論を重ね、進めてきました。上のサイトに出てくる、知財学習カードゲーム「知財でポン!」も、開発途中たくさんの必要な回り道をしながら、なんとかこの世に生まれてくることができました。

このように知財学習推進プロジェクトをご一緒できたのは、それよりも前から塩瀬さんとたんぽぽとの家とのつながりがあったからです。2月のセミナーの話をする前に、そのつながりについて少しだけご紹介しますね。

コミュニケーションの研究をされている塩瀬さんとたんぽぽの家の出会いは、視覚に障害のある人との対話による美術鑑賞に関心をもってきていただいたのがきっかけでした。その後、インクルーシブデザインワークショップやGood Job!プロジェクトでもご一緒してきました。

インクルーシブデザインとは、子ども、高齢者、障害のある人など、マイノリティと考えられてきたユーザーをデザインプロセスに積極的に巻き込み、課題の気づきからアイデアを形にして、普遍的なデザインを導くものです。塩瀬さんは、『インクルーシブデザイン:: 社会の課題を解決する参加型デザイン』 (2014) という本の編著者でもあります。

画像2

Good Job!プロジェクトとは、障害のある人とともに社会のはたらき方のデザインにかかわるプロジェクトです。アート・デザイン・ビジネス・福祉の分野をこえて、新たな出会いと仕事が生まれる場づくりに取り組んでいます。

Good Job!プロジェクトには、この知財学習推進プロジェクトも含まれていますが、他にもたとえば、障害のある人との協働から生まれている先進的な「しごと」を称えるGood Job! Award があります(2015-2017)。

塩瀬さんには、Good Job! Award の審査員をやっていただきました。どんな「しごと」が選ばれたのか。受賞団体のその後について取材し、noteに記事をまとめています。よろしければ、こちらもお読みください!

また他にも、Good Job! プロジェクトのひとつに、「IoTとFabと福祉」というプロジェクトがあります。

IoTやFabといった現代的な技術を福祉の現場に取り入れて賃金向上やさまざまなことに役立てようと、日本各地で一緒に取り組んでくれる仲間を募り、勉強会や座談会を開いて、悩み事を共有しながら情報交換をしてきました。

しかし私たちは、IoTやFabの技術者でもなければ、研究者でもありません。IoTってなに? Fabってなに?というところから勉強を始めました。特にIoTという言葉はよく聞きますが、ITとどう違うのか? などなど、わからないことがいっぱいでした。

そこで塩瀬さんに講師になっていただき、IoTミニ勉強会を開いたこともありました。

このように私たちは塩瀬さんから、たくさんヒントをもらって、デジタルファブリケーションでつくったものの知財の問題や、子どもや高齢者や障害のある人も巻き込んだインクルーシブな知財教育も視野に入れながら、今、私たちが提案できる知財学習のデザインに取り組んでいます。

知財創造教育とは?

塩瀬さんに本セミナー講師を打診したとき、こちらからお願いしたことは、「知財創造教育のすすめ」というテーマでトークをしていただけないかということでした。なんのために知財があるのかを考えるうえで、重要なヒントがたくさん得られるのではないかと考えてのことです。

知財創造教育とは、内閣府等が推進する施策のひとつで、「新しい創造をする(「いいな」を思い描き実現する)こと」「創造されたものを尊重する(他人との違いを認め尊重する)こと」を楽しみながら理解させ育むことにより、社会を豊かにしていこうとする教育のことです。

発達の段階に応じた系統的な知財教育の推進、小中学校及び高等専門学校における知財創造教育の全国的な普及が目指され、文部科学省の学習指導要領と関連づける作業も行われています。塩瀬さんは、小中高等学校の授業において、知財創造教育をどのように推進していったらいいかを考える委員会メンバーを努めておられました。

塩瀬さんいわく、知財創造教育は、創造の楽しさをおしえることがまず大事で、著作権や特許権など知的財産権に関する法律の勉強を子どもたちに強いるものではないと言います。

これより先は、塩瀬さんが実際にお話ししたことを抜粋してお伝えしますね。お楽しみに!! 

第2回に続く )


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?