見出し画像

知財創造教育を道徳の時間に! 講師:塩瀬隆之さん(第2回)

2020年2月21日(金) 東京・TIME SHARING秋葉原
知財学習プログラム報告セミナー「障害者アートと知的財産権」

第1回の記事はこちらにアーカイブされています ↓

これから先の文章は、塩瀬さんが「知財創造教育のすすめ」というタイトルでセミナー時に発言されたことを抜粋したものです。

第2回

実はみんな創造性を隠しているんじゃないか?

今日お話しさせていただくのは、知財創造教育のすすめ。特に知財創造教育を何の教科で教えますか?ということです。皆さんは何の教科で教えればいいと思いますか? 

私自身は大学でロボットの研究をしていましたので、ロボットと人間のコミュニケーションというのが大学の卒論や修論というところから研究をスタートしました。ロボットとかも作るし、研究開発もするんだけど同時にそういうものを作れる子供達が増えたらいいなと思っています。

子供達自身に3Dプリンターなどを使って、「自分たちが思ったものを作りたい!」と思った時にその子たちが集まれるファブラボという場所があります。大学の先生を一度辞めて経済産業省で官僚をしていた時は、そういう自由にものづくりできる場所が世の中に増えるように、気軽に作れる場所が増えるような仕掛け作りを探ったりもしていました。

僕自身が普段ワークショップを作る時に一番大事にしていることは、「すべての子どもは創造的である」ということです。創造性というのは本来教えなくてもいいと自分の中ではすごく信じていて。

特に創造性をみんな隠しているんではないか、表に出せないのではないか、と思っているので、その障壁を取り除くのが僕自身が普段作っているワークショップになります。

デジタル技術により創造性を広げる「未来図工室」

DSC_1414 - コピー

こちらは「未来図工室」というワークショップになります。IoTのガジェットでSONYさんがリリースしたMESHという動きや人を検知したり光らせたり音を出したりする仕掛けを、iPadで簡単にプログラミングできるようにしたものです。(以下のサイトのプログラム詳細をクリックすると、プログラムNO.1に「未来図工室」があります!)

これがもし子ども達の未来の図工の道具箱に入っていたら、どんな図工の授業ができるだろう? というのがコンセプトのワークショップです。これだけ社会にはデジタル機器が増えてきたのに、学校の図工室ではいまだにハサミとのりとセロテープしか使えないというのが勿体無いな、と思ったので、最先端の技術を全部子どもの図工室に入れてしまおうというコンセプトです。

そうすると子どもたちは、お弁当のフタにセンサーをつけて、パカッと蓋を開けると「いただきます」って勝手に言ったり、「召し上がれ」ってフタがいうようなお弁当箱を作る!

子どもの頭の中の妄想で終わってしまっていたところが、こういう技術を使うと簡単にすぐプログラミングができます。

例えばほうきに動きセンサーをつけて素早く動かすと、「ササ、、ササ、、ササササ、、」という音をほうきが勝手に自分で出すんです。そのササっていう音をちょっとずつ早くしていくと、手の動きも一緒に早くなっていくので「ササ、、、ササ、、ササササササササ、、、」 音に合わせて手を動かしていく、というのができたら面白いねって子どもがその場で言ったのをすぐそのまま実現するっていうのを今の時代はできるようになってきました。

デジタルの技術が進むことによって子ども達の創造性の幅が広がってますよって、いうのを色々作りたい。

小学生に知財創造教育は必要か?

ちょうどそれに合わせるかのように、「未来を創る授業ガイド」という本の制作の委員となりました。色んなところで子ども達の創造性を発揮させる授業はすでにたくさんあるので、それをみんなで協力して集めて共有するといいですよねというので、いろんな学校の実践を束ねた本を作ることができました。

「未来を創る授業ガイド」 下記をクリックすると本のPDFがあります

で、この本を作る時に委員同士で議論になったことが一つあります。それは何かというと、「小学生に知財創造教育は必要か」どうかということ。もともとこの冊子を作ったのは、知財に関するような教育を小学生からやりましょうっていうところではじまったんですが...小学生の知財創造教育は必要だろう、という意見と、一方で学校の先生もいらっしゃって、「いや、いらないんじゃないか」とまったく反対の意見になった。

それは何故かというと、小学生あるいは幼稚園児の子達が最初にお絵かきをする時は、どこからお絵かきを始めるかというと、どこかテレビで見たか、漫画で見たか、好きなキャラクターから必ずスタートしますよね。そうすると、まあるい顔に中にあんこがいっぱい詰まっている人たちを書き始めた時に、「ちょっと待ちなさい、君!それは誰かが権利を持っているものなので、そんなの描いちゃいけません!」ってもし言われたとすると、子ども達はそれだけで萎えてしまいますよね。

で、青いネコなのかたぬきなのかよくわからないものを書き出して、お腹から道具が出てきたりすると、「ちょっと待ちなさい!」っていう風になってしまったりすると、これもう、絵を描くのが絶対に嫌になりますよね。だから知財創造教育はもしかすると、教えれば教えるほど、子供達が創造しなくなるんではという反対意見があったので、「知財創造教育は、小学生にはいらないんじゃないか。」という意見になる。 

いやいやいやいや。そもそも知財創造教育は、特許をとってみなさんに使わせないぞっていう教育では本来ないはずで、そもそもの知財創造教育の定義や説明が間違っているんじゃないかとなったわけです。

さきほど紹介した授業ガイドは、色んな学校の色んな科目で行われている実践を紹介している。じゃあ、なにゆえ知財創造教育は必要だと特許庁は言い出し、内閣府は言い出し、文部科学省は言い出しているのか。

みなさんどうですか? 知財創造教育はなぜ必要だと思われますか。

学習指導要領にも書かれているSociety 5.0人材

最近では、学習指導要領にも「Society 5.0人材が求められていると書いてあります。」ちなみにみなさんSociety5.0の「テンゼロ、小数点の意味」、ご存知でしょうか?

画像3

もともとこのテンゼロはソフトウェア開発の分野で、バージョンの更新で使われる用語ですね。ちょっとずつマイナーチェンジする時にテンイチ、テンニと数値をあげていくんですね。インターネットが世の中で流行りだしたとき、会社や学校の情報発信する時に使っていたものは、後にウェブ1.0と呼ばれます。

その後、ブログみたいに質問したりコメントがかけるようになったのがウェブ2.0です。つまり、相互にやりとりができることを、ウェブ2.0と言います。そこから一時期、猫も杓子も2.0っていう数字が使われていました。市民会議2.0とか、なんとか2.0とか。

その中で、ドイツが打ち出した新しい工場同士がネットワークや、機器がIoTでつながった世界をインダストリー4.0として打ち出した。そのさらに先が5.0です。

でもどんな人材が必要か、ということについては、これからみんなでちゃんと考えないといけない。

何をするのかよくわからないまま、でもSociety5.0がすごそうな気がするから知財創造人材を増やそうというのでは困ります。 

画像1

塩瀬隆之さんプロフィール 京都大学総合博物館准教授。博士(工学)。インクルーシブデザインならびに科学技術コミュニケーションのデザインワークショップに従事。京都大学デザイン学ユニット/宇宙総合学研究ユニット構成員。2017年科学技術分野の文部科学大臣賞(理解増進)ほか受賞多数。2012年から2014年にかけて経済産業省において技術戦略担当課長補佐にも従事。

第3回に続く)



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?