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ACTIVITY | 岐阜 - IoTとFabと福祉 -

「IoTとFabと福祉」をテーマに、日本各地ではどのような実践が行われているのでしょうか。2019年7月26日~27日に開催した座談会で話題にあがった内容をもとに各地の活動を紹介します。

岐阜県・岐阜市にある「社会福祉法人いぶき福祉会」は、通所施設と入所施設を運営しており、全体で約160人の利用者がいます。招き猫の形をしたマドレーヌ、出会った土地や人との縁で届けられた素材でつくるジャム、周りの野山から採ってきた山野草で染める布など、さまざまな活動をしています。

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お菓子の原型としての3Dプリンタ活用

昨年は「ミナモ」という岐阜県のキャラクターのクッキー型を3Dプリンタで製作しました。型で生産したお菓子は量産して岐阜駅内で運営しているアンテナショップで販売しています。アンテナショップは、2010年4月にJR岐阜駅アクティブḠに開設「ねこの約束」というお店です。

その他にも県の手土産として注文が入ったりしています。ミナモは国体のキャラクターで当時は盛り上がったのですが、実はいまは企業がほとんど撤退して、お菓子の商品でミナモの商品というとほぼ私たちしか作っていないのが現状だったりします。

3Dプリンターによるクッキー型は、治具(じぐ:加工や組み立てのときに使う部品や工具のことで作業しやすくする器具)を手軽に自分たちで気軽に作れて自由度が高く感じています。仕事を簡単に定型化でき、複製も気軽にでき、立体のものを量産できるつくりやすさもあります。

実際に製作していったときには、3Dプリンタで出力した型の強度、溝の深さや幅、プラスチックの安全性と責任範囲について詳細をつめています。クッキーの生地が型にくっついてしまったり、少し薄いと割れやすかったりするので、生地を一度冷やしてから判を押すことや、クッキーの厚みを修正するなど、オペレーションと仕様を変更したりしました。

これら(とくに3Dプリンタの型の部分)は自分たちでは難しいので、「情報科学芸術大学院大学 [IAMAS:イアマス] 」に協力していただきながら進めて実現することができました。

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今年度は立体のマドレーヌの型をつくりたいなと思っています。

いま使っている型は、常滑の伝統工芸士さんがつくっている猫の型があって、それはもともと陶器用につくられているのものですが、強引に食品用のシリコンを流し込んで製作したものです。

常滑のまちおこしをキッカケに始めた型づくりですが、当初はどこもやってくれるところがありませんでした。デザイナーが知り合いで偶然にも原型師さんにつながり、試行錯誤でできたものが今の看板商品になっています。

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常滑も陶器が衰退してきていることもあり、原型師さんがいなくなると私たちはマドレーヌをつくれなくなるので、何か良い手がないかなということで3Dプリンタの活用を考えています。お菓子を立体の型から剥離するのは難しいのですが、私たちには剥離したり焼き上げたりという技術があるので、原型の部分を3Dプリンタでできたらなと思っています。

3Dモデリングによるデータ作成や製造は外注でできたらいいなと考えています。型のデータ作成は障害者・高齢者3Dプリンタファクトリーにお願いして、製造を自分たちでやってもいいのですが、それだけで製造ラインがつぶれてしまいます。それよりも、自分たちは販売に注力して、同じ岐阜の地域のなかで製造チームをつくって、ミナモの商品をつくってシステムになるといいなと考えています。

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支援を見える化できるか?

360度カメラを使って、支援の見える化をできるか試みています。具体的には、音楽療法のシーンを撮影して、そのときの人の動きや周りの状況を振返りながら支援のありようを互いに共有しあっています。

(以下は撮影した動画を見ながら)
中央に映っている人は、言葉を発することが難しいけれども、途中で「うー」と話したりするので、それがどういう意味があるのかということを、「うー」と言ったときの周りの状況を360度カメラで確認して「こういうところを見ていた」など、それぞれが感じていることや振返って考えたことを共有しました。

こちらの手を動かしている人は、手の動きで気持ちを表現するので、手を動かしたときの周りの状況はどんな感じだったのかを確認して、どういうキッカケで動かしているかなどを見て支援に活かせたらなと思います。

ただ、音楽療法を60分間のセッションでやっているので、1時間の動画を見るのは大変なので、ビデオ全部を見直すんじゃなくて、〇〇さんの手の動き、〇〇さんの声、と決めておいてそれを拾いにいくかたちで、センサーを使ったり、マイクでその人の声をひろったときに本のしおりみたいに記録できるようにしたいです。ないのかなと考えています。

自分たちでMESHを使ってやってみたら、介助者の音も何人もひろってGoogleのスプレッドシートが大変なことになりました(笑)。「株式会社GOCCO.(以下、GOCCOさん)」にも協力いただきながら、それをできれば身近なものでやりたいので、MESHを使って、それをYoutube上で保存して共有することができればと思います。

共有するのは同じ施設内にいる人たちだけではなく、同じように重複障害の人たちと過ごしている他の福祉施設とこの過程をシェアして、何か一緒に進めることができないかなと考えています。

支援の楽しさを共有できるか?

施設に見学に来ていただくこともあるのですが、施設の面白みや魅力、支援の楽しさをもっと共有できないかなと思います。あるいはこれから福祉で活動することを考えている学生さんたちに事前に施設を体感してもらえるような体験をつくってみたいです。

そこでまずは、スマホを使った簡易の装着型VRを使って、紹介映像とジャムの製造現場を撮影して、地域住民に見てもらうということから試しました。そもそもVRを体験したことがない人も多いので「おーー」と最初はなりますが、1台しかないので見てもらっている間に周りが何もできないということもあったりでそのあとが続かないといった課題もあります。

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楽しさを共有する別の方法を探しているときに、GOCCO.さんを通して、「ミニフューチャーシティー」のことを知りました。これは小学校3年生~中学校3年生を対象として公募で集めてやるイベントで、子どもたち自身が、デジタルとアナログを上手に組み合わせながら、未来の仕事をつくり、「どんな街にしたいか、どんなお店があるとよいか」など街を運営することが体験できます

プロセスとしては、高学年の子どもが集まって、町内会や寄合のような子ども会議が事前にあって「どういう町にしていこうか」を考えてもらい、「こういうお店が必要」という意見を出してもらって、それを当日は実際にお店を開いてやるという流れです。全員が最初の集まりに参加しなくても、高学年の子どもたちが後輩たちに伝搬していくほうが自然な流れなので、2段階的なプロセスのほうがいいかなと思います。

未来を創る力を育む Mini Future City in Tokyo

このミニフューチャーシティの "福祉版" みたいなものを、企画を公表して、みんなで仕組みづくりから始めてみたいと思います。対象は子どもにするのか、福祉を志す前段階の人たちにするのか、大人にするのか、障害のある人も参加のしかたもまだ悩み中です。

たとえば子どもを対象にしたとき、商売のなかにどういう福祉の価値がはいると子どもたちにとってプラスなのかを考えて、多様なはたらきをできるだけ認められるような形で、子どもたちが障害のある人たちと社会構成を考えていけるような仕組みを考えてみたいです。

それがある程度形づいてきたら、企画立案段階から公表して意見をもらうようなかたちでネットワークをひろげてディスカッションしながらつくっていけたらと思います。ミニフューチャーシティが福祉と一般の人のタッチポイントになってふくらんでいくようなイメージです。山口県でもしたいという声もあったので、ゆくゆくは全国展開もできたらと思います。

今年はミニフューチャーシティ福祉版を地域のなかでワークショップを1回でもいいのでしたいと思います。昨年の活動を通して感じたことですが、他の施設と協力しながら進めたいと思ったときに、学びあうことはみんなとできるけど、実際に具体的な仕組みをつくろうとすると内部に閉じてしますので、外の人といかにやっていくかが課題に感じています。今年はできれば施設のなかだけでなく、地域のなかでみんなと一緒にやることができたらなと考えています。

【参考URL】
■社会福祉法人いぶき福祉会
 http://www.ibuki-komado.com/ibuki/

■アンテナショップ「ねこの約束」
 http://nekonoyakusoku.jp/

■情報科学芸術大学院大学 [IAMAS]
 https://www.iamas.ac.jp/

■株式会社GOCCO.
 https://gocco.co.jp/

■GOCCO. on Youtube
 http://bit.ly/2XrWZ28

■IoTとFabと福祉 - 岐阜 -
 https://iot-fab-fukushi.goodjobcenter.com/area/gifu




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