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ACTIVITY | 岡山 - IoTとFabと福祉 -

「IoTとFabと福祉」をテーマに、日本各地ではどのような実践が行われているのでしょうか。2019年7月26日~27日に開催した座談会で話題にあがった内容をもとに各地の活動を紹介します。

たくみクラフト」はNPO法人吉備たくみ会を母体として2015年に岡山県倉敷市に設立された福祉事業所です。デニムや帆布生地の縫製、木工、刺繍、オリジナル商品の企画、レーザー加工などを行い、そのほかにも7〜17歳の子どもを対象にしたプログラミング道場「CoderDojo Kurashiki」なども実施しています。

代表の内田和雄さんは、これまでにアメリカNY州で放送局に勤務しながらアート活動や音楽活動に取り組み、帰国してからは東京で音楽活動の仕事をして、その後に地元の岡山県へ帰郷。岡山でネット販売業や特注家具製作業務を経て、広島県福山市のB型事業所で勤務したのが福祉と関わるキッカケとなりました。

就労継続支援B型事業所:年齢や体力などの面で雇用契約を結んで働くことが困難な人が、就労訓練を行うことができる福祉事業所

広島県福山市のB型事業所「遠行工房」

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遠行工房(おんぎょうこうぼう)では玩具や雑貨を中心に木工品をつくっています。毎年の暮れに皆で考えて意匠された干支飾りをつくっていて、地域を中心にチラシを配布して、100件を越える注文を受けて生産し、配達まで行っています。昨年末の売上個数は1,400個でした。

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そのほかにも広島カープやノンタンなどのキャラクターを用いた商品など、意匠使用権を契約して製品を製作・販売もしました。

これらのキャラクター製品は、障害者支援をしている印刷会社の方から「UVプリンターを導入したから使ってみないか」と提案をいただいたことから始まりました。

UVプリンターは今だと200万円~数百万円のものが出ていますが、当時は1億円のプリンターで、畳1畳サイズの看板用プリントができるもので、いろんなものにプリントしてもらいました。

UVプリンター:物体に写真やイラストを、木材、樹脂、革、布など様々なものにプリントできる。紫外線で固まる特殊なインクを使用するため、印刷と同時に定着して、乾かしなどの作業が不要。既製品にもプリントでき、比較的簡単にオリジナル製品をつくることが可能。

UVプリンターのインクはすぐに固まってしまうので、布に印刷するとパリパリと割れてしまって定着しませんでした。そのため、玩具など木製品のように固い材質のものに用途を限っています。

たくみクラフトではUVプリンターのほかにも、レーザー加工の活用も積極的におこなっています。下の写真はメンバーが描いたイラストをもとにIllustratorでデータ化したものを、メンバーが木の板に焼き付けて切り出し、磨いて仕上げるというものです。

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岡山県倉敷市の障害福祉事業所「たくみクラフト」

地元の倉敷で事業所を2015年に立ち上げたとき、女性のメンバーさんたちが「縫製をしたい」ということで工業用ミシンをいれて縫製作業を始めました。

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木工作業もやっているので、木工用の機械や、旋盤、レーザー加工機、それから3Dプリンターもあります。レーザー加工機は中国メーカーのもので結構苦労しましたが使えるようになりました。

製作した製品の一部がデニムのケースやけん玉ホルダー、また石鹸も作っているのでその石鹸用のスタンプを制作したり、表彰盾もつくりました。

イラストが得意な人もいるので、イラスト集を作ったり、天文台のミュージアムショップ用にイラストを活用したものを採用してもらったりしています。

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機材によって仕事の幅もひろがるので、いろいろと可能性を探っています。今回の座談会で他の事業所さんから紹介していただいたガーメントプリンタもいいなと思い、発注したところです。ちょうどキャンペーン期間中でかなり割引されて助かりました。

今後はメンバーさんが機材の利用をサポートして製品をつくるというワークショップを始めていく予定です。

端材の生地にマスキングテープを使ってデコレーションして仕上げるというワークショップをショッピングモールのイベントで試験的に実施して、大変好評を得ることが出来ました。メンバーさんたちが楽しげに接客から製品の仕上げに関わることが出来て、今後へ向けて手応えを得ることが出来ました。

倉敷アリオ

美観地区という観光地が近い場所にあるので、英語圏やアジアの方など観光に来た人たちと結びつけてやれることがないかなと考えています。

今回の座談会でみなさんの活動を聴いていて、各エリアの売りというか「ここは任してくれ」という得意な分野を明確にしたらコラボしやすいんじゃないかなと感じました。自分たちだとデニム、木工、皮の素材や加工といったところです。

たとえば、木工玩具のような玩具をみなさんとつくりたいなと思っています。玩具は玩具でもIoTでセンサーを使ったものです。私たちは子どものためのプログラミング道場も運営しているので、いろいろとガジェットも使ってまして、いま子どもたちに伝えようとしているのはmicro:bit [マイクロビット] です。小さい基盤ですが様々なセンサーがついていて、振ると信号を感知するとか、音声認識できたりもするので、それを組み込んだぬいぐるみやクッション、キーホルダーなどが考えられます。

「玩具とIoT」はイメージしやすい一方で、たとえばポーチなどの日用品雑貨や服などのアパレルとIoTだとどういったことが考えられるのだろうかという意見もありました。

たとえば、センサーを活用した採寸といった身体の計測は意欲的にされています。トレーニングウェアの場合、衣服の伸び率でストレッチができているか、適した運動しているかなどが判断できるような研究もされています。そのようにセンサーを埋め込んだシャツやベビーウエア、ソックスなどで身体の状況を把握する衣類は「スマートファブリック」と呼ばれています。

ポーチだと開けて「ニャー」というインタラクションは、それをしようと思うと30分くらいでできると思います(笑)モジュール使って、モジュールをどうつけるかとか、そういう試作開発するのは面白そうだと感じます。

いろんなパターンのテキスタイルをポーチにする体験もできるし、そのポーチを開けたときのインタラクションってどんなの?といった形でワークショップをやることも考えられます。それをマイクロビットを使いながら、猫柄だからニャーとか、おにぎりだからコロコロとか、テキスタイルから自分でストーリーを紡いでいくワークショップもいいなと思います。

【参考URL】
■就労継続支援B型事業所 遠行工房
 http://ongyo.org

■コーダー道場倉敷
 https://cd-kurashiki.connpass.com

■NPO法人吉備たくみ会/たくみクラフト
 http://takumikai.org/

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